2021.09.02

CARS

全長が伸縮する画期的な機構を搭載 アウディが考える未来のラグジュアリー・カーとは

米カリフォルニアで開催されるモントレー・カーウィークで、アウディが「スカイスフィア」と名付けたコンセプト・カーを発表した。進歩を続ける高級感の再定義を掲げ、斬新なアイデアを採り入れた電動ロードスターだ。

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ドイツの高級車「ホルヒ」からヒントを得る

着想は、現在のアウディの源流のひとつであるドイツの高級車メーカー「ホルヒ」が1930年代に生み出した高級ロードスターの「853」から得たという。ただし、スタイリングへの影響はボディ・サイズと、長いボンネットにコンパクトなキャビンを組み合わせたプロポーション程度にとどまる。

全長×全幅×全幅は、5190×2000×1230mm。ホルヒ853の5230×1850×1770mmと比べると全高がかなり低い。スカイスフィアはさらにエア・スプリングで車高を10mmダウンできる。





全長とホイールベースが250mm伸縮

また、伸縮する革新的なシャシーを用いることで、全長とホイールベースを250mm変更できる。アウディA8L並に長い「GTモード」と、アウディRS5並みの「スポーツモード」を、1台で使い分けられるのだ。これを可能にしたのが、4輪操舵をはじめとする操縦系のバイワイヤ化と、リアに集中配置した電動ドライブトレインである。各部の機械的なリンクを排したため、車体の前後寸法を変更できる構造が成立したといえる。

さらにレベル4の自動運転技術を採用。GTモードではステアリング・ホイールもペダルも格納し、クルマ任せでの移動を実現するという。モード変更の際には、ボディ前後に散りばめられた無数のLED照明の点灯パターンが変わり、それぞれのキャラクターを強調する。





後輪駆動のアウディ

パワートレインは、最高出力632ps(465kW)、最大トルク750Nmを発生する電気モーター。これをリア・アクスル上に設置し、後輪を駆動する。このレイアウトにより約1800kgの車両重量のうち約60%がリアへ配分されるため、トラクション性能が高く、0-100km/h加速は4秒ジャストを謳う。バッテリーはキャビン背後に搭載され、重心高や運動性能の最適化に寄与。容量は80kWh以上で、WLTP基準での航続距離は500kmを超えると見込まれている。

サスペンション形式は前後とも、アルミ部材を用いたダブルウィッシュボーン式で、タイヤは285/30サイズの23インチ。アダプティブ・エアサスペンションは、ナビゲーション・システムのデータに基づく予測も活用し、路面不整をキャビンに伝えないよう4輪独立での制御を行う。後輪操舵も備え、ボタンひとつでギア比やセッティングを変更できる。







コクピットがファースト・クラスに早変わり

アウディが「スフィア」と呼ぶ居住空間も、このコンセプト・カーにおける重要な要素と位置付けられる。後ろヒンジ・ドアから乗り込むキャビンはホイールベースの変化に伴い広さが変わる。1415×180mmの巨大なタッチ式ディスプレイで占められるダッシュボードがセンターコンソールとともに前後することで、コクピットはファースト・クラスの客席にもなりうるのだ。

さらに、フロントには専用ゴルフ・バッグ2セット、リアにはやはり専用の大型バッグふたつをそれぞれ収める荷室が設けられ、センターコンソールにはシャンパンのボトルとふたり分のグラスが収納できる。インテリアはアールデコ様式にヒントを得たデザインを多用。マイクロファイバーのシート生地や環境認証を受けたユーカリのウッド・パネルなどは、サステイナビリティに配慮した素材や製造工程から生み出された。

アウディは今後、このスカイスフィアを含め、スフィアというアイデアに基づくコンセプト・カーを3モデル発表する計画を持つ。残りの2モデルは「グランドスフィア」と「アーバンスフィア」という名称からSUVとサルーンではないかと予想される。いずれも革新的なラグジュアリー・カーの姿を示すものとされ、可変ホイールベースのようなギミックはともかく、内外装のデザイン要素やマテリアル、デジタル系や自動運転関連、電動パワートレインの技術は、近い将来の市販車に反映されそうだ。









文=関 耕一郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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