2021.10.20

CARS

ポイントは早めの冬支度 ブリヂストンのスタッドレス・タイヤ、「ブリザック」のニューモデル、「VRX3」をスケートリンクで試す

北海道から積雪のニュースが寄せられるようになった10月中旬。ラニーニャ発生の予想もあって、今シーズンの冬は雪道に対する準備が必要かもしれない。雪道の準備といえばスタッドレス・タイヤだが、北海道と北東北で20年連続装着率ナンバー・ワンを誇るブリザックが、断トツの氷上性能を手に入れるため、さらなる進化を遂げたニューモデル、VRX3を発売した。横浜のスケートリンクで行われた試乗会からモータージャーナリストの斎藤聡がリポートする。

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ABSとの相性に着目した新型スタッドレス

シンプルですっきりしたトレッド・デザインに変わったブリヂストンの新型スタッドレス・タイヤ「ブリザックVRX3」。開発に際してはABSとの相性に着目し、微小な滑り領域のグリップを高めた設計になっているという。設計担当者によれば、技術を詰め込むだけ詰め込んで無駄なものを省いていったらシンプルなデザインになってしまったそうだ。

写真はトヨタ・プリウスに履かせている195/65R15 91Q。サイド・ウォールにはブリヂストンとブリザックのロゴ以外に、氷を模したようなデザインが描かれている。軽自動車向けの135/80R12 68Q~スーパースポーツにも適合する285/35R20 104Qの111サイズで、価格は9460円~11万7150円となっている。

195/65R15 91Qのトレッド。写真ではわかりにくいが、ブロックの一部に突起を設けることで水の流れを整え、設置面に流れ込まないようにしている。溝から溝に貫通していないサイプも同じ効果を狙ったもの。また、サイプの角度をブロックごとに最適化することで剛性を向上させている。さらに、周方向の溝(リブ)の配置やブロックの形状を揃え、接地面圧を均一化。面圧の違いによるタイヤの滑りを減らし、ライフ性能、いわゆるタイヤの摩耗を抑制している。

確かに直線基調で、サイプ(極細溝)がなければサマー・タイヤのトレッド・デザインにも見える。ところが細部にフォーカスを当ててみるとウインター・タイヤならではの技術が満載だった。まずブロックに突起をつけることでコアンダ効果(流体の引き込み現象)を抑える働きを与え、水幕が接地面に入り込まないようにしている。また、1つのブロックの中に貫通させないサイプと貫通させるサイプを配置することで除水した水の流れを整えた。これらにより接地性能の向上を徹底的に見直しているのだ。

コンパウンドにも新技術が取り入れられた。VRX3に採用した発泡ゴムは太くて長い水路(気泡)の断面形状を楕円にして吸水量をアップ。毛細管現象が発現して吸水性能がさらに高くなったという。また、この新開発の発泡ゴムにはオイルより分子量の大きな新素材を配合して、経年変化によるグリップ性能低下を抑えている。



その性能を試すべく新横浜アイススケートセンターの特設会場を走ってみたが、文字どおりタイヤが氷の路面にヒタッ! と密着しているような強力なグリップをみせてくれた。水が浮きツルツルに滑りやすくなった路面なのに、ハンドル操作どおりにクルマがスイスイ走ってくれるのだ。ブレーキに至っては減速感が明らかに違う。15km/hほどのスピードからフルブレーキをかけると3~4mほどの差があった。ブリヂストンから明確な数値は明かされていないが(試乗時)、少なくみても20%くらい制動距離が短くなっている印象だ。

雪道での試乗はできなかったが、縦溝主体のトレッド・デザインは雪道でも横方向の踏ん張りが効きやすいので、相当の性能が期待できそうだ。

文=齋藤聡 写真=ブリヂストン

(ENGINE2021年11月号)

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