2021.12.13

CARS

上がりのクルマになるかも!? ミドシップに生まれ変わった新型コルベットのクーペ&コンバーチブルに乗った!!

アメリカを代表するFRのスポーツカー。それにこだわってきたシボレー・コルベットが8世代目で大変革!ついにミドシップとなった新型コルベットはオヤジの心に刺さる! 自動車評論家の国沢光宏がリポートする。

思わず前のめりになるミドシップ・コルベット

勝手な思い込みだったら申し訳無いです。55歳プラスマイナス10歳の読者諸兄は基本的にミドシップ好きだと推察する。ロータス・ヨーロッパやフェラーリ・ディノ、BBに始まり、ランボルギーニ・ミウラ、カウンタックあたりまでの高性能車がクルマ趣味の原点になっているんじゃなかろうか。私も『サーキットの狼』に洗脳されてしまい、若い頃は「手の届くミドシップ」という理由でフィアットX1/9やポルシェ914に憧れ、フェラーリ348やホンダNSXなど5台も所有したほど。そんなクルマ好きからすれば、今までのシボレー・コルベットは単に「いいね!」するだけだったけれど、ミドシップになった新型を見て「おおっ!」っと、前のめりになる。



まずシルエットからしてホンモノのスーパーカーだ。搭載されるエンジンは502psを発生する6.2リッターV8で、0~100km/h加速3秒。ランボルギーニ・ウラカンやマクラーレンGTなど2600万円以上するようなモデルに勝るとも劣らず。かつてアメリカンV8を搭載したデ・トマソ・パンテーラは中途半端な性能だったが、新しいコルベットならバリバリの武闘派! 後述するが、コーナーでいともたやすく1Gを超える。サーキットに持ち込んでも相当のパフォーマンスを見せてくれることだろう。それでいてフル装備1180万円! ミドシップ好き世代からすれば「上がり」の1台として候補に挙げたくなる。

トレッキング・シューズでも運転できる!?

長い前置きになった。試乗といきましょう。実は取材日までどんなクルマに乗るのか知らされていなかったため、いつものようにSUVだと思いトレッキング・シューズを履いていた。現地に行くと目の前にコルベット! タイトな形状の靴を買おうかと思った次第。ダメモトでドライビング・シートに座ってみたら、驚くべきことに全く問題無し! 考えてみたらコルベットはアメ車。普段の足として使う人も多い。当然のことながらGMの基準を満たしており、ビジネス・シューズからトレッキング・シューズまで、どんな靴でも運転出来るようになっている。



じゃ普通の乗用車なのね、と思ってプッシュ・ボタンを押したら爆音を響かせエンジンに火が入った! 今や世界規模で騒音規制は厳しくなっており、日産GT-Rなど継続生産車であっても2022年末をもって販売出来なくなる。なぜ新型コルベットは許されるのか? 実は厳しい騒音規制、車高の低いミドシップにのみ適用されない。どうやらフェラーリやランボルギーニなどの“文化”を絶やさないように、という配慮らしい。第二次大戦中、皇居に爆弾を落とさなかった欧米流の考え方なんだろう。新型コルベット、走行性能向上だけでなく、騒音規制回避のためにもミドシップを選んだようだ。

FRじゃ爆音を出せず華やかなクルマにならない、とGMは考えたワケ。アメリカの自動車メーカーにもマッドなクルマ好きが残ってます。

この手のクルマに実用性ウンヌンと言うのは野暮

ということでスゴイ音を出す。現代のクルマだけあり、電子制御で音量を変えられるのだけれど、私がエンジン掛けた時は「爆音モード」になっていたようだ。あまりにステキなので、そのまま走り出す。我が国に於ける街中のコルベットは若干ストレスを感じる。アメリカのように道路事情が良くない上、着座位置の低いスーパーカーは物理的に見切りが良くない。加えて全幅が1940mmとフレンドリィじゃないため狭い道を得意とせず。



でもこの手のクルマに実用性ウンヌンと言うのは野暮ってものだ。コルベットがガレージに入っていれば、普段の足を軽自動車にしたっていい。気合いさえあれば1台でもやっていけるかも。嬉しいことに実用性を除く「気難しさ」全く無し! アメ車だからエアコンはカンペキに効くし、渋滞にハマったらエンジン音を静かなモードにして「さすがホンモノ!」とウナりたくなるパワフルなBOSEを鳴らしていれば快適至極。このあたりの“実用性”は欧州製スーパーカーを圧倒する。コンバーチブルならオープンエア・モータリングまで気軽に楽しめてしまう(標準ボディもトップを手動脱着が出来る)。

やっぱり自然吸気V8エンジンは楽しい

アクセル踏むとどうか? これだけパワフルだと公道試乗じゃいかんともしがたい! そこで写真撮影だけ済ませ、クローズド・コースに持ち込みパフォーマンスを試してみた。するとどうよ! やっぱり速いです! V8エンジン特有のビートを響かせながら、1速は瞬時に吹けきって2速へ。2速もあっという間で3速といったイメージ。ツインクラッチ式自動MTだからシフトアップのタイムラグ無し! 点火時期をリタードする時の「ぼわっ!」っという音を響かせ加速する。パフォーマンスはお腹一杯になるレベルだ。



曲がりくねったコースだと、コーナー立ち上がって次のコーナーまでの間、ハイ・パフォーマンス車に共通するワープしたような感覚。NAエンジンだからタイムラグもなく、6153ccという排気量にモノを言わせグイグイ加速する。やはり自然吸気エンジン、楽しいです! コーナリング・スピードだって高い。文字通り「ハンドル切っただけ曲がる」イメージだ。メーターパネルにGメーターが付いているのだけれど、簡単に1Gを超えてしまう。ミューの高い路面で真剣に攻めたら1.5Gくらい出そう。なんたってリア・タイヤは305/30ZR20ですから。



今回、標準ルーフとコンバーチブルを乗り比べてみた。結論から書くと、走る楽しさはほとんど変わらない。コンバーチブルも屋根を閉めておけばボディがキッチリ締まるためブルブル感無し。そもそも標準ルーフも脱着式のタルガトップのため、基本となるボディ剛性が高いんだと思う。タルガトップを取れば、コンバーチブルのオープン状態とほぼ同じ感覚となる。上がりのクルマ有力候補にコルベットを考えているおまえならどうか、と聞かれたら、老後の小遣いを残すため標準ルーフにしておく。付け加えておくと、コルベットはアメ車の中じゃダントツにリセール・バリュー良いです。

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正



■シボレー・コルベット・クーペ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4630×1940×1220mm
ホイールベース 2725mm
車両重量 1670kg
エンジン形式 V型8気筒OHV
総排気量 6153cc
最高出力 502ps/6450rpm
最大トルク 637Nm/5150rpm
変速機 8段自動MT
サスペンション 前&後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/35ZR19 / 305/30ZR20
車両本体価格 1180万円~

■シボレー・コルベット・コンバーチブル
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4630×1940×1220mm
ホイールベース 2725mm
車両重量 1700kg
エンジン形式 V型8気筒OHV
総排気量 6153cc
最高出力 502ps/6450rpm
最大トルク 637Nm/5150rpm
変速機 8段自動MT
サスペンション 前&後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/35ZR19 / 305/30ZR20
車両本体価格 1550万円

(ENGINE2022年1月号)

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