「GRの世界」と題して、GR86、GRヤリス、GRスープラ、そしてランドクルーザーGR SPORTの4台にイッキ乗りして、トヨタのスポーツ・ブランド、GRとは何なのかを考えるシリーズ企画。第1回目はフルモデルチェンジを機に正式にGRの名が与えられたGR86にスポットを当てたが、今回は、オートサロンではフルチューン・モデルも発表されたGRヤリスを取り上げる。佐藤久実、島下泰久、山本シンヤの3名のモータージャーナリストとエンジン編集部の村上が試乗した。
楽しくて笑いながら走った村上 さて、86では大いに盛り上がりましたが、今回はGRヤリスです。こちらはラリーと関わりが深いクルマだし、もともとトヨタ車がベースになっていて、そのGR版だという点で86とは違っている。で、今日は、そのオーナーがふたりもいるわけですが、どうですか?
佐藤 初代86が出て、そのあとGRスープラが出たわけですが、そのどちらもスバルなりBMWなりとの協業で、トヨタが自力ですべてをつくったものではなかったわけですね。それが、ヤリスでやっと純血種のスポーツカーをつくることができた。それが大きかったと思いますね。山本 86もスープラも、やろうと思えば自力でつくることもできたんでしょうが、さっきのビジネスとしても成り立たせなければならないという話になると、協業でなければできなかった。なぜヤリスでそれができたのかと言えば、トヨタではセリカGT-4が1999年に生産終了になってからはスポーツ4WDの技術が途絶えていた。で、章男さんが運転の訓練をするのにインプレッサを使っているというトヨタにしてみれば屈辱的な状態になっていたわけです。そのスポーツ4WDの技術を次の世代に繋げていくためには自分たちでやらないとダメだということで、純血での開発が許されたのだと思います。ただ、もちろんヤリスというクルマを使うことは必要だった。佐藤 WRCとの関係もある。山本 ラリーは当然、大改造はするけれど市販車がベースになくてはならない。そこで章男さんが、市販車を使ってモータースポーツをするのではなく、モータースポーツで戦えるクルマで市販車をつくるという逆の発想を考えた結果出てきたのがGRヤリスです。開発陣は、最初はFFの1.5リッターターボでお茶を濁そうとしたらしいんですね。見た目も5ドアでオーバーフェンダー着ければいいでしょ、くらいの感じだった。それがドカンと怒られてガラガラポンして、ああいうクルマになった。島下 ヤリスをつくる時点でGRヤリスをつくることは分かっていたから、結構車体にもそれが入っている。僕らは取材をしているから、そういうことを知っているけれど、最初はみんな知らなかった。だから、GRヤリスが出た時の反応は、こんな値段の高いチューニング・カーみたいなのつくっちゃってという感じだった。ところが、いろいろ明らかになってくると、どうもこれは本物らしい。ゼロから妥協を排してつくっているらしいぞ、って、買った人たちから話が拡がったりして、ジワーッとこれは凄いということになった。その拡がり方が面白かったですね。
佐藤 GRヤリスは名前で損している。エッ、ヤリスが500万もするのっていうことになる。中身を知ればバーゲン・プライスだとわかるのに。エンジンもレーシング・エンジンと同じ組み方しているとかね。山本 トヨタって大量生産は得意だけれど、少量生産は得意ではないところにも挑戦している。佐藤 そのために専用の工場を建てたわけだから。村上 結果として、普通のヤリスのオーナーが得したのかも知れない。山本 ヤリスのイメージが変わりましたよね。村上 で、実際にオーナーとして使っていてどうなんですか。佐藤 気持ちが若返りましたね。仕事でレースギアとか運んだりするのに楽だから最近はSUVにばかり乗るようになっていたんですが、久々にマニュアルのスポーツカーに乗って、とにかくテンションが上がりました。最初、ダート・コースで試乗したんですが、クルマを運転していて、こんなに楽しくて心の底から笑うなんて久しぶりだと思いました。あまりに楽しくてゲラゲラ笑いながら乗って、それでグサッとひと突きされて、買っちゃいました。島下 このクルマを買ったら、そういうところ走りたくなりますよね。佐藤 GRガレージに行くと必ずお客さんのクルマが入っていて、ロールケージつけたり、クロスミッション組み込んだり、特別サーキットやダートを走るわけでもなくてもいろいろやっているんです。そういうのって結構お金かかるんで決して若い人たちじゃない。だから、GRヤリスはクルマ好きのオジさんたちを若返らせている面もあると思いますね。
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