ミュージシャンのBoseさんとフィアット・ウーノ・ターボie
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ウーノの高性能モデルBoseさんの背後にあるフィアット・ウーノ・ターボieは、ウーノのハイ・パフォーマンス版として1985年にデビューした。「これは1988年式です。アバルトのバッヂは、当時のチェッカーモータースなんかが貼ったいわゆるバッヂ・チューンってやつですね」5年前に東京の輸入車専門店、コレツィオーネで見かけたものの、タイミングが悪く購入が出来なかったBoseさんだったが、2年前に同店に同じクルマが戻ってきたところで手に入れた。「ジウジアーロのデザインが素晴らしいと思うんです。ジウジアーロによる大衆車デザインの完成形じゃないかと。しっかりとデザインが行き届いたクルマに乗ることができて嬉しいです」
これまで小さくて四角いクルマばかり乗ってきたというBoseさん。最初に買ったのは中古の三菱ミニカ(5代目)だった。「とにかく安い軽自動車を買って壊れたら捨てようみたいな感じでした。でも、いま考えてみるとウーノみたいなカタチですね(笑)」三菱ミニカは1年半で壊れ、10年落ちのホンダ・シティ・カブリオレ、VWゴルフ・カブリオレ・クラシックラインと乗り継いでいく。「初代VWゴルフがベースのクラシックラインはワインレッドのボディがすごく綺麗なカブリオレでした。初代ゴルフのデザインはジウジアーロですからね。大好きでした。10年ほど乗り、アルファ・ロメオ147に乗り換えました」ジウジアーロ・デザインが大好きなBoseさんは、いすゞ117クーペを増車する。「2009年、40歳になったときに、そろそろ旧車に乗っておかないと乗れなくなるんじゃないかと思って、丸目4灯の117を買ったんです。クルマから降りて何度も振り返るほど、美しいデザインに本当に感動しました。深いグリーンのボディ・カラーも素敵だった。クルマに触るだけで気持ちいい。ずっと触っていたいと思った初めてのクルマでした。故障が少ないのも良かったですね」
一方、アルファ・ロメオ147は壊れまくった。「あんまり壊れるんで、コレッツィオーネの人に相談したら初代フィアット・パンダはどうですか? と」アルファ・ロメオ147はジウジアーロ・デザインのフィアット・パンダに代わり、Boseさんはジウジアーロ2台持ちとなった。「パンダが僕に運転の面白さを教えてくれました。クルマってこんなに遅いんだって(笑)。左ハンドルのマニュアルだったんですけど、速くなくても運転は楽しいんだと教えてくれました。一方、いま乗っているウーノは“危ない!”と思うほど速い。共通するのは不安なこと(笑)。でも、その危うい感じが可愛いと思ってしまうんです」その後、ルノー・カングー、2代目フィアット・パンダ、VWゴルフIICLiなどを乗り継ぎ、現在はトヨタ・プロボックスを改造したユーロボックス、今回撮影したフィアット・ウーノ、そして奥さん用に現行型フィアット500グッチ仕様の3台持ちだ。「VWゴルフは初代カブリオレも含めて、16年も乗ったから素晴らしいクルマだと思っています。パンダやウーノに比べたらボディの剛性感がはるかに高いし、高速道路の安定性は比べ物にならないし、壊れないし。同じぐらいの年代なのに発想が違うんだなと思います。でも、楽しさで考えるとパンダやウーノなんです」ユーロボックスの誕生いまでも80年代半ばから90年代はじめにかけての小さいイタ・フラ車をずっとチェックしているという。「壊れて途中で動かなくなるのは前提ですね。いまは、ユーロボックスがあるから安心ですし」ユーロボックスという名のクルマは、トヨタ・プロボックスやハイエースの改造をしているフレックスという店に雑誌の取材で出かけたのがきっかけで生まれたという。「僕も一緒に参加させてもらって、プロボックスのカスタム・カーを作ろうというプロジェクトが始まったんです。じゃあ顔はVWゴルフIIみたいにして、車高上げて、ルーフ・キャリア付けて……と。車名はユーロボックスにしようと。僕も自分用に1台作りました」
現在は鎌倉に住んでいるBoseさん。東京での仕事にも自分のクルマで行くという。「往復で100kmあるんですよ。しかも峠道があり、高速道路があり、都内に入ると渋滞がありと。だからクルマがよくわかります。旧車はとくにそれぞれのシーンで性格がハッキリ出て面白い。東京に住んで街中をチョロチョロするだけだったときより、クルマと過ごす時間が楽しい。ウーノで仕事に向かう道中も、半分遊んでいるようなもんですから」運転中に曲のことを考え、ライブのアイディアや歌詞が浮かんだりすることは多いそうだ。「クルマは自分にとって超プライベートな制作空間ですね。自分の考えに集中できる。ちょっと古いクルマの手触りとか、メーターまわりのデザインなど自分の好きなものに囲まれると、自分らしい発想が生まれる。現代のクルマはインテリアがスマホっぽいじゃないですか。自分の着ている服とか、持っているものとかに、しっくりくるクルマがいい。だから、ウーノはいまの自分にぴったりなんです」
▶「わが人生のクルマのクルマ」の記事をもっと見る文=荒井寿彦(本誌) 写真=筒井義昭(ENGINE2022年7月号)
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