2022.06.17

CARS

メルセデスのF1からエンジンを移植したAMGのスーパースポーツがついに市販化

メルセデスAMGがF1のテクノロジーを用いたミドシップのスーパー・スポーツカー「ONE」(ワン)を発表した。

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5年の時を経て、いよいよ市販化

2017年のフランクフルト・モーターショーでお披露目されたコンセプト・カー、「メルセデスAMGプロジェクト・ワン」の市販バージョンとなるワンは、すでに完売しているものの275台が販売され、2022年末からデリバリーが開始される予定。価格は3億5000万円以上と言われている。



レーシング・カー然としたスタイリング

フロント・フェンダー上に可変式のエア・アウトレットが追加されるなど細部は異なるものの、外観はコンセプト・カーの時とほぼ変わらない。フェラーリやランボルギーニのスポーツカーのように「魅せる」要素は少なく、空力や冷却性能を高めることを主眼に置いたレーシング・カー然としたデザインに仕上がっている。F1を彷彿させるものではないものの、トヨタなどが参戦するWEC(世界耐久選手権)のマシンに近い意匠だ。

ボディ・サイズは全長4756mm×全幅2010mm×全高1261mm、ホイールベースは2720mm。モノコックとボディにカーボン素材を用いるなどF1由来の技術を多数採用することで、車両重量は1695kgに収めている。



ふたり乗りのF1

快適装備や装飾を極力排したインテリアはふたり乗りのF1といった趣き。シートはF1のようにフロアに固定され、シートバックの角度のみが2段階で調整できるものの、ドライビング・ポジションはステアリングとペダルの移動で行う。ステアリング・コラムの調整は電動式で、ペダル・ボックスは機械式の11段階調整機能を備える。ステアリング・ホイールもF1マシンのように上下がフラットな形状で、リムの上部にはシフト・タイミングを示すインジケーターが配され、スポーク部分にはさまざまなスイッチ類が組み込まれている。センターにはエアバッグが組み込まれているのが市販車らしい。



パワートレインはF1そのもの

F1を最も感じさせるのはハイブリッドのパワートレイン。1.6リッターV6というF1と同じ排気量とレイアウトを持つエンジンには、充電と駆動を行うモーターが直結され、また、シングル・ターボには充電と過給圧のアシストを行うモーターが備わるなど、その構成はF1そのものと言っていい。F1同様、パワートレインはシングルクラッチ式7段自動MTのギア・ボックスともども応力担体として機能する。

ただし、F1直系のパワートレインの中で1つだけ大きく異なるところがある。それはフロントに前輪駆動用の2つのモーターが搭載されることだ。2つのフロント・モーターはリダクション・ギアを介して左右の前輪にそれぞれ接続され、駆動とトルク・ベクタリング、エネルギー回生を行う。日常的な走行コンディションでは制動エネルギーの最大80%を回収する。



システム出力は1000ps超

1599ccV6のエンジンは出力が574ps/9000rpmで、比出力は359ps/リッター、最高回転数は1万1000rpm。エンジンと左右前輪用の3つのモーターはいずれも163psを発生し、システム出力は1063psに達する。また、ターボに備わるモーターの出力122psで、ターボは最大3.5barの過給が可能だ。加速性能は、0-100km/hが2.9秒、0-200km/hが7.0秒、0-300km/hが15.6秒。最高速度は352km/hに到達する。

バッテリーもF1の技術を活用し、小型かつ軽量で、高いエネルギー密度を持つ。容量は18.1kmの電力走行を可能にする8.4kWhで、外部充電にも対応するプラグイン・ハイブリッド(PHEV)となる。冷却装置もF1譲りで、高性能クーラントを電動ポンプで循環させ、最適なエネルギー効率を発揮する温度を保つ。システム電圧を800Vにしたことで、ケーブル径を細くし、軽量化や省スペース化も図っている。



AMG最後の内燃機関スーパースポーツか?

サスペンションは、前後ともプッシュロッド式マルチリンク。ホイール・ベアリングにはフリクションの小さいセラミック・ボールベアリングが使用されている。カーボンセラミック・ディスクと固定キャリパーのブレーキはフロントが398mm径+6ポット、リアは380mm+4ポットだ。

ドライブトレインにF1のテクノロジーをほぼそのまま持ち込んだAMGの55周年を祝うスーパー・スポーツカー。完全電動化へのスケジュールを考えると、内燃機関を用いたAMGのスーパースポーツはこれが最初で最後なのかもしれない。



文=関 耕一郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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