2023.01.08

CARS

「A2ってどうですか?」3リッターで100キロ走る激レア車 先進的すぎて日本未導入に終わったアウディA2を買ったオーナーに聞きました

きっかけはセブン

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免許を取ってすぐR32型の日産スカイラインを買ったという久保田さん。それ以降も初代トヨタ・アリスト、R32型スカイラインGT-R、を乗り継ぐなど、当初は至極健全な自動車生活を送ってきたという。

「サーキットを走るようになったのはGT-Rからですね。その後R129型のメルセデス・ベンツSLに乗り替えるんですが、友達とYZサーキットへ見学に行ったらセブンがいたんですよ。雑誌で存在は知っていたけど、所詮クラシックカーだろ? と思っていたらすごく速かった。これだ! と思ってSLを手放してACマインズに飛び込んでケータハム・セブンのボグゾール・レーシングを買ったんです。でもさすがに1台で通勤は無理なので、ワゴンRとの2台体制にしました」

セブンの魅力に開眼した久保田さんは、ロータス・モータースポーツ・エリーゼ、ケータハム・セブンJPEなど過激なモデルを乗り継ぎながら、ローバー・ミニでも仲間とレースに出場するようになる。

「そんな時に見たのが知人のロータス51。そこでヒストリック・フォーミュラの世界があることを知り、乗ってみたくなったんです」

運よくイギリスで程度のいい51を見つけた久保田さんは、51を載せたトレーラーを牽引するためにアシをトヨタ・ランドクルーザーに変更。さらに公道イベント用としてロータス・セブンS1も増車した。

当時としては珍しいアルミと鋼板のモノコック・シャシーを採用した1965年用のF2/F3マシン、ロータス35。

それからしばらく3台体制を楽しんでいたのだが、8年ほど前にヒストリック・フォーミュラの先輩から65年のF2/F3マシン、ロータス35Bを譲り受ける話が持ち上がる。

「これがアガリだと一念発起して、持っていたクルマを全部整理して買いました。それまで乗っていたフォーミュラ・フォードの51と比べると、ロータス・ツインカムを積んだ35Bはタイヤも太く、加減速も横Gも激しくて体力的にキツイ。改めてF1はすごい、現役レーサーはすごいと思いましたよ」

35Bを手にして以来、アシグルマは近所用と割り切って軽トラに乗り続けてきたという久保田さん。ではなぜ、突如A2を手に入れようと思い立ったのだろうか?

「妻のクルマもあるとはいえ、やはり軽トラ1台では辛い。そこでサーキットまで乗っていけるクルマを新たに買おうと思ったんです。候補にあがったのは、2代目のロータス・エリートとロータス・エクセル。あとはW124型のEクラス・カブリオレでした。実際エリートは広島まで見に行ったんですよ。程度もいいしカッコいいけど、実用にはヤバそうだなと諦めました(笑)」

イケメンすぎないのがいい

そんな時にたまたまネットでヒットしたのが、このA2だった。

「新車の頃からずっと欲しいと思っていて、マメに検索していたのですが、突如隣の岐阜県で売り物が出てきたんです。見に行ったら距離も走っていなくて凄く綺麗でした」

普通の中古車店に置かれていたA2は、01年型の1.4リッターガソリン仕様。走行わずか1万4000kmのワンオーナー車で、ずっとガレージ内でカバーをかけて保管されていたということもあり、外装はもちろん、シートやトリムも使用感のまったくない、新車のようなコンディションだったという。

シンプルなデザインのインパネはフル・オリジナルで新車のようなコンディション。オーディオも本国仕様のままだが初代TTのものが流用できるそうだ。

購入から約1年半。まだオドメーターの距離は2万kmに到達していないが、実際に乗ってみた印象はどうなのだろうか?

「ディーゼル仕様より重いとはいえ、やはり軽さを感じますね。1.4リッターのエンジンは75psしかないけど、MTということもあって、想像以上にキビキビ走る。燃費も街乗りで14km/リッター、高速だと20km/リッター弱くらいですね。あとアルミのボディは剛性がしっかりしていて乗り心地もいいし、シフトフィールもいい。とにかく静かで疲れない。35Bでレースした帰り道なんか、すごい高級車だって驚くくらいですよ(笑)」

また、心配していたトラブルも、一度燃料ポンプの調子が悪かったのと、轍を越えた瞬間にホーンが鳴り止まらなくなった以外は特になく、エアコンは真夏でも問題なし。メンテナンスも輸入車に強い知り合いの工場が引き受けてくれたので安心して乗っているそうだ。「パーツに関しても知り合ったA2オーナーから、ポロのパーツが結構流用できると教えてもらいました。調べると本国にもあるみたいだしたぶん大丈夫。たぶんですけど(笑)」

室内は大人4人乗車でも十分なほど広く、乗り心地もいい。

それでも“ちょっと古いクルマ”ならではの悩みはあるという。

「メーターパネル下の部分とか、樹脂の一部が加水分解でベタベタし始めているのが心配ですね。あとは後方視界が最悪なことかな。リヤウインドウ真ん中のスポイラーが邪魔だし、ドアミラーも小さい。後付けのデジタルミラーをつけようかと思うくらいです」

でも久保田さんの話を聞いていると、その程度の不満は“アバタもエクボ”に過ぎないようだ。

「やはりデザインがすべて。大きさもいいし、周りにも溶け込むけど没個性じゃない。シンプルでイケメンすぎず目立たないのもいい。買って本当に満足してます!」

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文=藤原よしお 写真=望月浩彦 取材協力=AC MINDS & Co.,

(ENGINE2022年7月号)

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