2022.07.18

LIFESTYLE

空前絶後の大ブーム! 現代アートの巨匠、ゲルハルト・リヒターの人気を読み解く

ゲルハルト・リヒターの代表作《ビルケナウ》

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東京国立近代美術館で始まった大規模個展のほか、ゲルハルト・リヒターに関連した展覧会が3館で開催されている。難解とされる現代アートの巨匠の作品が、これほどまで人々を惹きつける理由とは?

「見ること」とはなにか?

美術界はいま、空前絶後のゲルハルト・リヒター・ブームだ。現在、ポーラ美術館、国立西洋美術館、東京国立近代美術館の3館でタイトルやサブタイトルに彼の名が入った展覧会が開催されている。つまり、リヒターは名前で人を呼べる作家=人気者というわけだが、彼の作品はどのように人を惹きつけているのだろうか?

リヒターはドイツ東部の都市、ドレスデンで1932年に生まれた。ベルリンの壁が作られる直前、1961年に西ドイツのデュッセルドルフに移住、それから60年以上、自らの芸術を追求し続けている現代美術家だ。

彼が最初に注目を浴びたのは、新聞や雑誌など写真を模写した「フォト・ペインティング」シリーズ。輪郭をぼかして描かれたこれらの作品群は、遠くから見ると写真にしか見えず、しかし近づいて見るとキャンバスに刷毛目が残り、人間が描いたものであることがわかるというもの。一見するとキャッチーな作品だが、「これを描いた作者の意図」を見つけられないことに鑑賞者はすぐに気づく。わたしたちは小さな頃から「作者はなにを言いたいのでしょう?」と、問いかけられ続けているためか、無意識に作者の意図を探す習性が身についてしまっており、ゆえにわからないことがもどかしい。もどかしさが募ると、そのうち「私はいったい何を見ようとしているのだろう?」と、「見ること」そのものに疑問が湧いてきてしまうのだ。



ミステリアスさがクセになる

「フォト・ペインティング」シリーズ以外のシリーズ作品も、リヒターの意図が見つけられず、次第に「見ることとはなにか?」「自分には本当にものが見えているのか?」と思考の森に入っていってしまう。どの作品でもリヒターに振り回されっぱなし。そして、これらのミステリアスさがクセとなり、たくさんの作品を見たくなってくる、これがリヒターの人気の秘密なのだろう。

前述の東京国立近代美術館のリヒター展は、彼の代表作となる《ビルケナウ》ほか彼の作品が122点も並ぶ展覧会。「見ること」とはいったいなにか? という哲学的な疑問を心のなかに沸き立たせてくれるゲルハルト・リヒター。さまざまな作品をこの機会にぜひ目に入れておこう。



『ゲルハルト・リヒター展』は10月2日まで東京国立近代美術館で開催中

文=浦島茂世(美術ライター)

(ENGINE2022年8月号)

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