2022.08.21

CARS

日産リーフと同価格帯なら勝算あり 日本初上陸の中国製EV、BYDに乗った

日本の乗用車市場にオール・バッテリーEV(BEV)のラインナップで参入する中国のBYD。その第1弾モデルとなるのがコンパクトSUVのアットスリー(ATTO3)である。今回はこのアットスリーの日本向けと同じ右ハンドルのオーストラリア仕様を、限られたシチュエーションでではあるが、実際に試乗することができた。

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大激戦区にあえて投入

BEVということは一旦脇に置くとして、コンパクトSUV市場は今、間違いなく大激戦区で、それだけに市場規模は大きく、ここで存在感を発揮できれば認知度においても、そしてビジネスにとっても影響は大きい。趣味性で選ばれるようなクルマではなく、市場のド真ん中を狙ったモデルを真っ先に投入するということからもBYDの本気がうかがえると言っていい。



トヨタ・カローラ・クロスとほぼ同サイズ

独自の「eプラットフォーム3.0」を用いて生み出されたアットスリーのボディ・サイズは全長4455mm×全幅1875mm×全高1615mmとなる。フロント・アクスルに1基の電気モーターを積む前輪駆動車で、最高出力は204ps、最大トルクは310Nm。セル1枚1枚の薄さから「ブレードバッテリー」名付けられた電池の容量は58.56kWhで、軽量設計により車重が1750kgに留まることもあり、航続距離は485kmに達する。

初対面となったアットスリーの外観は、デザインこそ奇をてらったところの無いオーソドックスなものだが、よく見ると結構複雑な面の構成を持つボディ・パネルなど、成型やパネルの合わせ品質は高く、安っぽさはこれっぽっちもない。とりたてて個性的ではないが、嫌われるようなこともないはずだ。



攻めたデザインのインテリア

それに較べればインテリアはけっこう攻めている。ダッシュボードからドア・トリムまでは丸みを帯びた線と面で繋げられていて、ちょっと生物的な感じも。そこに指針式メーター代わりのディスプレイやダッシュボード中央の大型タッチスクリーンなどが先進感を、そしてスリット状になった空調の吹出し口やクロームを大きくあしらったドア・ハンドルなどがメカっぽさをそれぞれ演出していて、トータルでほかにはない雰囲気を醸し出している。

2つのディスプレイは高精細で非常に見やすく、また見るからに上質だし、各部の操作感もしっかりしているのだ。この時点で正直、中国車もやはり侮れないなという気持ちにさせられた。



運転感覚はとても自然

今回の試乗は市街地コースを15分ほどという限定された状況だったということを予めお伝えしておく。実際に走らせてみるとこのアットスリー、とてもドライバビリティの良いクルマで驚いた。何しろ発進は滑らかで力強く、その後のアクセル・ペダルの操作に対する反応もナチュラル。とても自然に運転できる。

アクセル・オフでの回生ブレーキの強さは2段階に調整できるが、いずれにせよ街乗りの範囲では右足を緩めると同時に首が前に持っていかれるようなことはなく、その点でも違和感は無い。フット・ブレーキの感触も良くコントローラブル。高速度域、速めのコーナリング、急制動などは試せていないが、操舵感や乗り心地といった部分も含めて、第一印象は上々のものだった。



オーストラリアでは400万円台中盤から

今回の試乗で言えるのはこれぐらいまでだが、それでも品質は想像以上に高く、ハイテク感のようなものもしっかりあり、そしてストレス・フリーで走れそうだということは感じられた。価格は、実際に発売となる2023年1月より少し前までには決めるということで現時点では不明だが、とりあえずオーストラリアではざっと400万円台中盤~後半という値付けとされているから、同じかそれ以下くらいを期待しておきたい。

個人的には、SUVとハッチバックというボディ形態は違えども、日本車の日産リーフe+が422万5100円で乗れるだけに、それ以下じゃないと難しいかなと思う。V2H対応ということでCEV補助金が85万円と考えて、実質的には300万円台中盤かそれ以下あたりで乗れるならばアリではないだろうか?

もちろん、それだけで売れるというほど簡単な話ではないだろうが、アットスリーが見た目も走りも侮れないクオリティを実現していることは間違いない。充電設備を用意しやすい一軒家住まいで、そこまでクルマにこだわりがあるわけでもなく、1台すでに普通車があるような家のもう1台をという時に候補に挙げられる存在となる材料はすでにあらかた揃っている。



文=島下泰久 写真=郡 大二郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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