2023年の注目の輸入車38台を一同に集めたエンジン大試乗会に参加したモータージャーナリスト40人が注目するクルマ! 387ps/500Nmを誇る3リッター直6ターボのアクセルのツキの良さを体験すべし! BMW M340i xドライブに乗った桂伸一さん、山田弘樹さん、武田公実さんの3人は、思わず叫んだ!
M社50周年の記念バッジつきいずれ縦長に変わるだろうが、キドニー・グリルはこのくらいが厳つくなくて丁度いいと思う。前後とホイール中央に装着される青、紫、赤の半円を外側にあしらったエンブレムは往年のBMW モータースポーツが使っていたもの。昨年、M社が創立50周年を迎えた記念のバッジである。2023年3月まで製造されたM モデルに貼られる限定エンブレムなのだ……という解説を本誌会員から伺いながらの同乗試乗。ジャーナリストがそのクルマのどこをどう探るのかドラポジも含めて知りたい、というリクエストを受けた。ならば、このクルマはピッタリだ。筆者の操縦の基本はBMWドライバー・トレーニング仕込みなのだ。基本はFRであってもM340i xドライブ(4WD)はドライでも状況に応じて前輪への駆動配分は頻繁に行なう。高速スラロームで舵を入れた時の俊敏性、ステア操作に遅れの無い左右の姿勢変化と姿勢の納まりの早さはMサスの威力とともに駆動による姿勢安定性もある。387ps/500Nmを誇る3リッター直6ターボのアクセルとのツキの良さ、加速の伸びと澄んだサウンドも魅力だ。(桂伸一)
尊い味わい
FRベースの4WDであるxドライブと、Mパフォーマンス・シャシーを組み合わせたM340iの乗り味は、プチM3セダンを気取れるほどマッチョ。ボディ剛性の違いからか、同レベルのチューニングを施すとクーペ・モデルであるM430iの方が断然しなやかにその足まわりが動く。個人的にはセダンなら、絶対的なコーナリング性能は下がったとしても、より上質さを極めたステアリング・フィールや動的な質感で勝負して欲しいところだが(そう、アルピナのように!)、結果的にはこの剛直さが、スポーティなキャラを演出できている。とはいえM340iも可変ダンパーによってハーシュネスの角を巧みに丸めており、M3と比べれば断然実用性は高い。また直6ターボの切れ味もM3のS58ユニットに一歩及ばないけれど、そのぶん387psのパワーとシルキーな回転感覚を、日常的に愉しむことができる。直進安定性が高く、カーブでは操舵に対して忠実なハンドリング。そこにパワフルで心地良いエンジンの組み合わせ。極めて古典的なドイツ車の味わいだと言えるが、いまとなってはこれがとても尊い。(山田弘樹)
滋味深い直6ワールドダッシュパネルのスターター・ボタンを押した直後、B58型直列6気筒エンジンは重低音の一吠えとともに始動する。前世紀には「火を入れる」とも表現したこのプロセスは、2010年代までは珍しくもなかった演出なのだが、2023年の現在ではとても新鮮である。その印象は、走り始めるとさらに輝きを増す。スペック上のパワーは、M3/M4のS58型ツインターボと比べれば100ps以上も低いものの、その違いは筆者ごときが公道で体感し得るほどのものでもない。また、ちょっとはじけ過ぎとも感じるM3に比べて、こちらはサウンドも1990年代までの「M」を感じさせる滋味深いもの。「Sports」モードでは格段にシッカリ感を増すサスセッティングも、xドライブのAWDシステムも、すべてこの芳醇なエンジンを余すところなく味わうための下味のように感じられてしまう。読者諸兄にも、この滋味深い直6ワールドを共有していただきたい。そして電動化への道を否応なく進むことを余儀なくされている今こそ、純粋な内燃機関への惜別の思いも共有してほしいのである。(武田公実)
写真=小林俊樹/郡大二郎/茂呂幸正/神村聖
(ENGINE2023年4月号)
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