2023.03.29

LIFESTYLE

演奏する姿は美しい絵のよう! 思わずため息が漏れる フランスから現れたチェンバロの貴公子、ジュスタン・テイラーに注目!

ブルージュ国際古楽コンクールを制し、世界的な活躍をみせるチェンバロ奏者のジュスタン・テイラー。

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ブルージュ国際古楽コンクールを制し、世界的な活躍をみせるチェンバロ奏者のジュスタン・テイラー。楽器と遊ぶような自由な演奏で聴衆を魅了する、若き才能にインタビューした。

23歳の若さで優勝

チェンバロ(フランス語ではクラヴサン)界に新たな才能が出現した。フランス出身のジュスタン・テイラーである。2015年に23歳の若さでブルージュ国際古楽コンクール・チェンバロ部門において優勝した逸材だ。昨年の初来日公演ではバッハの「ゴルトベルク変奏曲」で聴き手の心をとらえたが、今年1月に再来日し、クープラン、フォルクレ、デュフリ、ラモーなどのフランス作品で底力を発揮した。

昨年のバッハも自由闊達な奏法が耳に残っているが、フランス作品は斬新で生命力にあふれ、ウイットに富んでいた。印象的なのは2段チェンバロの鍵盤の使い分け。楽器の特製を活かし、作品の内声を浮き彫りにしていく。装飾音の加え方も流れる水のように自然で、17 ~18世紀の宮廷に迷い込んだような錯覚を覚える。



どんな難曲も楽々とクリア

テイラーは子どものころからピアノを習い、やがてパリでチェンバロとピアノの両方の楽器の研鑽を積む。

「実は、音楽院の最終年にコンクールを受けたのです。それまでピアニストかチェンバリストになるのか迷っていましたが、コンクールが背中を押してくれたためチェンバリストとして活動することになりました」

2020年には偉大なるチェンバリスト、スコット・ロスゆかりの南仏の古城、アサス城でロスが使用していた楽器を使い「ラモーの一族」を録音。高い評価を得ている。

「アサス城はとても美しい場所にあり、お城自体もすばらしい雰囲気。楽器もロスの魂を感じます。私はアンサンブルも大好きで、バロック・ヴァイオリンやチェロ、声楽家との共演も行っています」

187センチの長身。長い手足を備えたスリムな体躯で装飾豊かなチェンバロと対峙すると、絵のような美しい様相を醸し出す。さらにどんな難曲も楽々と、あたかも鼻歌をうたうかのように嬉々とした表情で紡ぎ、超絶技巧をかろやかにクリアしていく。



「最初にチェンバロを触ったときはピアノとまったく異なる感触に驚きましたが、次第にその奥深さにハマった。私は来日して梅干し、納豆、甘酒を初めて食し、最初は不思議な感覚にとらわれましたが、いまは大好きになりました。音楽と食は似ていますね(笑)」

最近、フランスの古城で長年眠っていた1754年製のジャン= クロード・グジョンのチェンバロを手に入れた。これから修復し、演奏するのが楽しみだという。刺激的な演奏にまた拍車がかかりそう。

文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)

(ENGINE2023年4月号)

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