2023.05.07

CARS

「かつてのビートルやゴルフがそうだったように、このクルマはドイツの、いや欧州の国民車だ!」 これが「フォルクスワーゲンID.4プロ」に試乗したジャーナリストの生の声だ!

ビートル系以来のRRが復活! フォルクスワーゲンID.4プロ

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2023年の注目の輸入車38台を一同に集めたエンジン大試乗会に参加したモータージャーナリスト40人が注目するクルマ! ビートル系以来のRRが復活! フォルクスワーゲンID.4プロに乗った佐野弘宗さん、今尾直樹さん、斎藤慎輔さんの3人は、思わず叫んだ!

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未来だなぁ


ID.4はいわば電気自動車(BEV)時代のゴルフである。かつてのビートルやゴルフがドイツの国民車だったとすれば、ID.4は2020年代のドイツ国民車、あるいはヨーロッパ民族車になるべき存在である。そういうこともあってか、ID.4の走行感覚は良くも悪くもフツー。アクセルを一気に踏み込むと、“ドスンッ!”という内部ギアがぶつかる衝撃も隠さず猛烈に加速するBEVが多いのは、それがエンジン車に対する最も分かりやすい魅力だからだ。しかし、ID.4はちがう。活発なスポーツ・モードにしても無粋な衝撃はまるでなく、加速Gそのものも一部BEVのような激辛なものではない。ひとことでいえば上品なのである。走りはフツーでも、それ以外の体験がいかにも最新なのが楽しい。キーを携帯したまま近づくと自動でドア・ロック解除、乗車してブレーキ・ペダルを踏むと勝手にシステム起動。あとはDレインジに入れれば走り出す。終了後もPレインジにしてブレーキを離せばシャットダウン。あとはクルマを後にすれば自動でドア・ロック。なんてことはないけど、未来だなあ。(佐野弘宗)



国民車のゴースト

私にとって今回の試乗会2台目のID.4は、昨年11月の御殿場試乗会以来だった。SUVのカタチをまとった、EV普及のためのVWの世界戦略車。それがビートル系以来のRR(リア・モーター、リア駆動)だったのだから、歴史はやっぱり繰り返す。キーさえ持っていれば、特にスイッチを押さずとも自動的に電源がオンになる。Dレインジに入れるには、え〜っと。そう。ウィンカーの位置にある太いレバーの先端部分をくるっと回転させる。アクセルを踏み込むと、ヒュイイイイインというEV特有の電子音を発しながら超スムーズに加速する。なんたる静けさ。内燃機関の爆発音は今は昔。20インチのタイヤと路面とのやりとりのみがライブで伝わってくる。電気のSUV。その静粛性ゆえか、「ゴースト」ということばが浮かんでくる。ロールス・ロイスの、ではなくて、国民車のゴースト。霊魂。出発時の電気残量は90%、可能走行距離は383km。小田原漁港まで往復約30km走り、私のあと、3人の評者が乗られることを思い、10時32分、早めに返却した。残り83%。まだ353km走れます。(今尾直樹)



気持ちよくすっきり曲がる

VWは、いわば自身が欧州のBEV路線へのシフトの要因をもたらした中で、まずはICEでもBEVでも対応可能なプラットフォームのMQBを用いて、eゴルフなどのBEVを投入したが、ID.4に乗ってみれば、やはりあれは様子見、中継ぎであったことがうかがえる。まず、乗って驚いたのは、BEV専用のプラットフォームであるMEBがもたらしたのだろう、ボディの圧倒的な剛性感の高さ。これまで、こうした印象をもたらすのは、スーパー・スポーツなどに限られていたように思うが、室内広々で開放的空間を備え、スポーツ性能を目指したものではないID.4が備えていたのだ。そして、リア・モーター駆動によるRR。ビートルの再来を目指したわけではないのは百も承知だが、絶対トルクの大きなモーターによる駆動では、AWDじゃなければ、操舵と駆動を切り離したほうが好ましいわけで、それにしても、気持ちよくすっきり曲がること。動力性能は抑えめながら、圧倒的に静かな室内などと合わせて、早々にBEVのこのクラスのベンチマークを狙ってきているのかと思えてしまうのだった。(斎藤慎輔)



写真=神村聖/茂呂幸正/郡大二郎/小林俊樹

(ENGINE2023年4月号)

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