2023.04.22

LIFESTYLE

重要文化財の裏に隠された驚きの真実とは? あの名作もかつては“問題作”だった! 刺激たっぷりの「重要文化財の秘密」展が面白い

黒田清輝 《湖畔》 重要文化財 1897(明治30)年 東京国立博物館蔵 4月11日~5月14日

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東京国立近代美術館で開催中の「重要文化財の秘密」展。現在、名作と見なされている作品の多くは発表当時、様々な物議を醸した問題作だった。

重要文化財51点を展示!


東京・竹橋の東京国立近代美術館、通称「東近美」は、明治期から現代に至るまでの美術作品を1万3000点以上所蔵している日本初の国立美術館だ。コレクション展示では、膨大なコレクションから常時約200点を展示し、会期ごとに展示替えを行っている。だから、東近美はいつ訪れても初めて見る作品にたくさん出会うことができる楽しい美術館だ。

そして、東近美は重要文化財を18点所蔵する美術館としても知られている。重要文化財とは、建造物や美術工芸品、考古資料などの有形文化財のうち、日本の文化にとって重要だと国が指定したもの。ちなみに、重要文化財のなかで特に優れたものが国宝に指定される。明治時代以降に作られた美術・工芸で国宝に指定されているものはまだなく、68件が重要文化財に指定されている。東近美で開催中の「重要文化財の秘密」は、その68件の重要文化財のうち、51点が展示されるという。なんと豪華な展覧会か!



艶めかしい描写で大論争


明治以降の重要文化財の最大の特徴は「問題作」が多いこと。たとえば、萬鉄五郎《裸体美人》は、萬の美術学校時代の卒業制作で、マティスら当時最先端の画家たちの影響を受けている。しかし、教授陣にはその先進性が理解されず、19人中16番目という低い順位をつけられてしまった。

原田直次郎の《騎龍観音》も物議を醸した。原田は西洋の伝統的な宗教画の描き方で仏教的な主題に取り組んだが、龍に乗ったやたら艶めかしい観音の描写をめぐり、大論争が巻き起こってしまう。

しかし、そんな問題作たちは、時代が進むにつれ、美術の歴史を大きく変えた存在と見なされるようになる。《裸体美人》は2000年に、《騎龍観音》は2007年に、それぞれ重要文化財に指定された。問題作が傑作へと大きく変わったのだ。

この展覧会は、両作品のような「当時の問題作」も多く並ぶ。それらの評価が逆転し、重要文化財にまでなった理由をつぶさに紐解いていくと、作品だけでなく、美術そのもののおもしろさにも迫っていけるからおもしろい。刺激たっぷりの時間を過ごせるこの春必見の展覧会だ。



■東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」 2023年5月14日(日)まで開催中 

文=浦島茂世(美術ライター)

(ENGINE2023年5月号)

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