2024.09.23

CARS

自然吸気4リッター・フラット6の吸い込まれるような吹け上がり感は圧巻! 991型911GT3RSにニュルのグランプリ・コースで試乗【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】

991型ポルシェ911 GT3 RSにニュルブルクリンクで乗った!

全ての画像を見る
レーシング・カーそのもの

私に当てがわれたのはガーズレッドのボディに、オプションで光沢のあるゴールドに塗装されたセンターロックのGT3RSホイールを持つ、見るからに派手な1台だった。

advertisement


ホイールはRSのロゴが入ったセンターロック式の鍛造アルミ製が標準でリアは21インチとなる。


なによりも目立つのは、超軽量のカーボン製の巨大なリアウイングだ。後でわかったことだが、あまりに羽根の位置が高いために、却ってGT3より後ろが良く見える利点がある。

一方、フロントで目立つのは、ハイマウント・ベンチレーション・スリットを備えたワイド・フェンダーで、この部分もカーボン製。同じくフロント・リッドやフロント・スポイラー、リア・リッドがカーボン製となるほか、ルーフはマグネシウム製、リアとリア・サイドのウインドウは軽量ガラス製となる。軽量ガラスはポリカーボネートとほぼ同じ重量でありながら、傷や割れに強く、高速走行時の膨らみも大幅に抑えられているという。

こうしたレーシング・カーさながらの軽量化の結果、4WDボディのGT3よりさらにワイドなターボ・ボディを採用し、リアにはひと回り大きく太い21インチ・タイヤを履いているにもかかわらず、重量は同じ1430kgに抑えられている。いや、さながらどころか、もはやレーシング・カーそのものの領域に入っていると考えた方が分りやすい。前後の大型化されたスポイラーとウイングが生み出すダウンフォースの合計は、なんとGT3カップと同じ144kg(200km/h)。これは同条件で69kgを発生するGT3のそれを2倍以上も上回る数字なのだ。

フロント・リッド上に備えられた主にブレーキのベンチレーションを向上させるためのふたつのNACAダクトなど、まるでレーシング・カーそのもの。さらに見えない部分でも、シャシーにはすべてのアーム上のジョイントにレーシング・カーと同じユニボール・ベアリングと呼ばれるボール・ジョイントが使われているという。

トランスミッションは7段PDKのみで、これも何より速さを追求するRSならば当然のことだ。可変ダンパーのPASMは、ウェットのサーキットと公道用のノーマル・モードと、ドライのサーキット用のスポーツ・モードの2段階。タイト・コーナーでの俊敏性と高速セクションでの安定性を高める後輪操舵システムをはじめ、電子制御エンジン・マウントや電子制御リア・ディファレンシャル・ロックを備えたポルシェ・トルクベクタリング・プラスなど、ありとあらゆる最新装備が、サーキットでのパフォーマンスを高めるためにチューニングされ、装備されているのである。

ステアリング・ホイールもブラック・アルカンターラ製のリムが標準で12時位置にイエローのマーキングを持つが、この試乗車ではオプションのスムーズ・フィニッシュ・レザーに換装されていた。


しかし、圧巻なのはやはりエンジンだろう。すでに新型GT3にも搭載されているカップ・カーやGT3Rなどレーシング・カー由来の4リッターフラット6を踏襲するが、同じ8250rpmからGT3を20ps上回る520psを発生する。これはターボ・ボディの恩恵により、リア・フェンダーに開いたエア・インテークからの吸気が増えているためで、高速走行時にはエア・ラム効果が生じて、ますます燃焼室への流入量が増えるという効果をもたらしているという。

ドライバーの意思どおりに動く

ついに、私の試乗の順番がやってきた。軽量ドアを開けてカーボン製のフルバケット・シートに着くと、スパルタンな雰囲気は漂っているものの、意外に快適性を残しているインテリアに驚いた。ドア・オープナーがヒモになっているといった演出はあるが、内張りが剥がされて金属のフロアがむき出しになっていることはなく、アルカンターラが貼られたシートも、それなりにクッションが効いていて座り心地も悪くない。

サーキットでの機能性を第一にデザインされたインテリア。シートはカーボン製のフルバケットでセンター部分がアルカンターラになる。


シート位置を合わせ、エンジンを掛けると、遮音材が省かれていることが明らかにわかる存在感のあるエンジン音が背後から響いてきた。むろん、それなりの大音量ではあるが、かつての997型RSのようにカラカラとフライホイールの騒音がずっと響きわたっているようなことはない。センター・コンソールにはスポーツ・エグゾーストのスイッチがついていたが、これはオンが通常時で、オフは街中で少しでも爆音を減らすためのものと考えた方がいい。

先導車のGT2RSに乗るインストラクターから「準備はいいか」と無線が入り、オーケーと答えると、すぐにピット・ロードを走り始めた。

コースに出ると一気に速度を上げていく。最初の1周は下見だとは言っても、サーキットなのだから速度域は一般道とはまるで違う。ところが驚いたことに、このクルマは恐ろしく運転しやすくて、どんどん速度を上げて行っても、これならまだまだ行けるという安心感さえ与えてくれるのである。まず、ステアリングの感触が素晴らしい。操舵に対して寸分違わずにクルマが動き出す。といって、ピーキーだというのではなく、まさにドライバーの意思どおりに動く感覚がある。それはエンジンも同じで、ドンッとうしろから押し出すような凄まじい加速が襲ってくるのだが、ピーキーな感じは皆無だ。5000rpmあたりから上の吸い込まれるような吹け上がり感は圧巻だ。

私は最初からスポーツ・モードを選び、すべての電子制御をオンにしていた。そして結果として、8周の間、一度もシフト・パドルには触れなかった。自分でシフトしなくても、クルマが絶妙のタイミングで最適なギアを選んでくれるから、まったく触る必要がなかったのだ。

メーターパネル中央の回転計は9000rpmからがレッド。


2周目にはもう直線で200km/hを遥かに超える速度で走っていた。それどころか上りの高速コーナーでも200km/hを超えていた。それでもダウンフォースが効いているのか、路面に吸いつくような感覚で、こちらがピーキーな操作さえしなければ、まるで安定して走れてしまう。

さらに全体の速度を上げていくと、中速コーナーでリアがわずかに滑り出すようになった。しかし、タイヤと路面の状態が手にとるように伝わってくるので不安感はなく、むしろ滑らせながら向きを変えるのを楽しめるだけの余裕がある。

ピットインを挟んだ後の3周は、とにかく自分の持てる能力をすべて出して、とことん走りを楽しむことができた。そしてよく分った。最新のGT3RSが凄いのは、単にニュルでのラップタイムが速いことだけではない。サーキットを少しでも速く走りたいと望む人が運転するなら、その人の技量に合わせて最上のパフォーマンスを提供し、最大の走る楽しみを味わわせてくれる点こそが素晴らしいのだ。つまり、走りの懐がすこぶる広い。ああ、911の進化は止まらない、と思った。

文=村上 政(ENGINE編集長)



■ポルシェ911 GT3 RS 
駆動方式 リア縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4557×1880×1297mm
ホイールベース 2453mm
車両重量 1430kg
エンジン形式 直噴水平対向6気筒DOHC
排気量 3996cc
ボア×ストローク 102.0×81.5mm
最高出力 520ps/8250rpm
最大トルク 47.9kgm/6000rpm
トランスミッション 7段PDK
サスペンション形式(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション形式(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク(試乗車はカーボン)
タイヤ(前) 265/35ZR20
タイヤ(後) 325/30ZR21
車両価格(税込) 2892万円

(ENGINE2018年7月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement