2024.08.28

CARS

ニュル、7分14秒の衝撃! ポルシェ918スパイダーは、どんなスポーツカーだったのか? ニュルブルクリンクのタイムアタックを目撃したジャーナリストの証言リポート

ポルシェ918スパイダー・プロトタイプのニュルアタックを目撃!

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一般道を同乗走行

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続いて我々を待っていたのはニュルブルクリンク周辺の一般道路における同乗試乗である。自動車メーカーがテストに使用するニュルブルクリンク北コースのT13パドックにプロトタイプが2台、いずれも70年代を思わせるマルティニ・カラーのボディを装備している。ちなみにポルシェが製作する918のプロトタイプは合計24台で、その内ここにある2台はテスト用であると同時に「広報/マーケティング用」でもある。広報用のプロタイプがあるなんて、ポルシェらしい余裕だ。

前回ではほぼ丸裸であったプロトタイプだが、今回はFRPとカーボンの外皮に覆われている。開発を指揮するドクター・フランク・ヴァリザーによれば、ヘッドライト周辺とリア・エンドはまだ暫定的で、特にフロント部分はもっとハイテックなヘッド・ライト・ユニットが組込まれ、未来的な顔つきになるという。

2月のナルドではまるで映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンのようだった上方排気システムは、非常に洗練されたデザインが与えられた。918スパイダーのアイコンとなるオーラを独特の排気音とともに周囲に放っている。



インテリアはテスト機材とそれを繋ぐ配線で埋まっているが、基本的には完成型に近い。3本スポークのスポーツ・ステアリング・ホイールの向こうに見える3連メーターは、中央がタコメーター、そして左右にスピードとコンビネーション・デジタル・メーターを配する。

もちろんイグニッション・キーはドライバーの左手にある。また中央の後方まで長く伸びたセンター・コンソールはカレラGTを彷彿させるデザインだ。ダッシュボードに重なる部分はナビ画面など対応するマルチ・スクリーンになっている。いわゆる古典的な意味でのシフト・レバーは存在せず、ダッシュボードに小さなレバーをP、D、N、Rとプリセットするだけ。あとはすべてステアリング背後から伸びたパドルでシフトを行う。


EVでスタート

いよいよニュルブルクリンク周辺の一般道路を使っての同乗試乗が始まる。ドライバーは918のプロジェクト・リーダーであるオイゲン・オーバーカム氏である。

すでに北コースを何周もしているにも拘わらずV8のアイドリングは安定していて発進はスムーズ、力強い加速を……と想像していたら、なんと、完全なEV走行でスタートした。それでも簡単に150km/hに達した。この速度内であればスロットルを踏み込んでもV8エンジンは着火しない。ここで一気にSモードに切り替えると、後方からV8独特のサウンドが響き、猛烈な加速が始まる。そこにはシステム変化の途切れはまったく感じられない。さらに、驚いたのは180km/hで走行中でもエンジンの余力で充電をしていること。それゆえアッという間にSOCはEV走行に十分な量に達し、次の村を再びゼロ・エミッションで通過することができた。



NVHの面では改善の課題が残っているようだが、ドライバーのオーバーカム氏は「すべてスケジュール通り、1年後には試乗会にご招待しますよ!」と言う。

期待と信頼はポテンシャル・ユーザーにも伝わっていて、完成を待たずに68万4800ユーロ(約8000万円)という価格にも拘わらず、すでに300台が受注されている。

文=木村好宏 

(ENGINE2012年12月号)

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