2024.09.11

CARS

音よりも速い! これが「ポルシェ918スパイダー」のすべてだ! 日本初上陸時の富士スピードウェイ全開アタック、同乗試乗リポート! 音の2倍の勢いで加速スーパースポーツ【アーカイブ】

ポルシェのハイブリッド・スーパー・スポーツ、918スパイダーの同乗試乗リポート

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ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2015年1月号に掲載されたポルシェのハイブリッド・スーパー・スポーツ、918スパイダーの同乗試乗リポートを取り上げる。ついに上陸した918スパイダー! その実力はどんなものなのか? SUPER GTドライバーの藤井誠暢選手が富士スピードウェイの本コースを全開アタック!

全世界で918台

秋の陽が傾き、富士スピードウェイに長い影を作るようになった頃、レーシング・ドライバーの藤井誠暢選手によるポルシェ918スパイダーの全開アタックがスタートした。



全世界で918台が限定生産される918スパイダーは、ポルシェが最新のテクノロジーを惜しげもなく注ぎ込んで作り上げた究極のスーパー・スポーツカーで、カーボン・モノコックに搭載したレーシング・エンジン由来の4.6リッター V8は、2基の電気モーターと組み合わされて最高887psという途方もないシステム出力を絞り出す。

そのパフォーマンスは文字どおり圧倒的で、ニュルブルクリンクでロード・カー最速となる6分57秒を記録したことは記憶に新しい。ここでもかなりの好記録をマークするだろう。スーパーGTで何度も優勝してきたプロのレーシング・ドライバーは、918スパイダーで一体どんなラップタイムを叩きだすのか?


918スパイダーはピット・ロードからコースに向けて全速力で加速していった。そのサウンドは自動車のものというよりもジェット機が離陸するときのような金属音に近い。1度ホーム・ストレートを走り抜けてから918スパイダーはピット・ロードに滑り込んできた。

1分47秒609!

ラップ・タイムは1分47秒609! ロード・カーで1分50秒を切るのは至難の業とされる。事実、藤井選手がこれまでに911GT2RSで記録した最速ラップは1分51秒。ところが918スパイダーはこれを4秒近くも短縮したのだ。もはやロード・カーの水準をはるかに超えているといっても過言ではないだろう。

「オオタニさん、凄い! この速さはハンパないですよ!」

藤井選手は、頬を紅潮させながらそう言うと、私を助手席に促した。

ステアリング・コラムの左にあるイグニッション・スイッチと、インテリアの高いクオリティがポルシェであることを主張する。

続く2周の同乗走行で、私は藤井選手の言葉にまったく誇張がないことを思い知らされた。しかも、ただ速いだけではない。まるでコースの上を浮遊しているかのような未来的な走行フィーリングを、918スパイダーは満喫させてくれたのである。

コクピットから降り立ち、ヘルメットを脱いだ藤井選手は「だから言ったでしょ!」という表情を浮かべながら私の顔をのぞき込んできた。

「いま、ストレート・エンドで300km/hくらいでしたよね?」と藤井選手。「でも、その前に僕がひとりで乗ったときには320km/h近くまで伸びましたよ」。まさかと思いながら車載カメラの映像を確認すると、たしかにデジタル式スピードメーターは316の文字を表示していた。

藤井さんが第1コーナーを抜けたところの車内カメラ映像だ。

GPSを用いた計測結果は301km/hだったが、それにしても驚異的な数値であることには変わりない。ちなみに、今年レギュレーションが改正されて大幅に性能が向上したスーパーGTのGT500マシンが同じ富士のストレートで300km/hを越えたことがニュースになったが、それも参戦する3メーカーのうちの1メーカーだけ。それと肩を並べる速さを、ロード・カーの918スパイダーはいとも簡単にマークしてしまったのである。


「なんだかこのまま空を飛んで行っちゃいそうな速さですよね」と藤井選手。「しかも、エンジン音から感じられる加速感よりも、実際の加速感のほうがはるかに速い。まるで音の2倍の勢いで加速していくような感じ。ちょっと怖いくらいです」

実際、ピット・ロードで藤井選手が918スパイダーにフルスロットルを与えたとき、カーボン・コンポジット製シートに貼られた硬いクッションのなかに私の身体は2cmほどめり込んで、ちょっと痛いほどだった。けれども、タコメーターの針が5000rpmを越えて加速の勢いがいちだんと増してから起きた現象は、さらに驚くべきものだった。

ボンネット下のラゲッジ容量は100リッターで2分割式ルーフも収納可能。無塗装のカーボンが目に眩しい。ボンネットを支えるステーもカーボン製だ。

とにかくシフトアップしようが速度がどんなに上がろうが、身体はずっと一定の力でシートに押しつけられっぱなしだったのである。きっと、シフトアップなどで加速Gに変動が起きそうなときには、電気モーターが素早くそれを察知して駆動力を補ってくれるのだろう。シームレスな加速感は“未来的な走行フィーリング”を生む要因のひとつだと思った。


もちろん、918スパイダーの速さは“電気頼み”だけではない。4.6リッターV8エンジンが絞り出す608psの大パワーも見逃せない。

「エンジン・レスポンスの良さは鳥肌ものですね。先日、数年前のF1マシンに乗る機会があったんですが、そのエンジンと比べてもまったく見劣りしません。レーシング・カーと比べても、レスポンスは相当鋭いと思います」


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