2024.09.11

CARS

音よりも速い! これが「ポルシェ918スパイダー」のすべてだ! 日本初上陸時の富士スピードウェイ全開アタック、同乗試乗リポート! 音の2倍の勢いで加速スーパースポーツ【アーカイブ】

ポルシェのハイブリッド・スーパー・スポーツ、918スパイダーの同乗試乗リポート

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重心高はホイール・ナット

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レーシング・カー譲りの動力性能以上に目を見張らされたのが、918スパイダーのシャシー性能である。

「とにかく重心が低い。着座位置も相当低いんですが、エンジンやバッテリーといった重量物が、自分よりさらに低いところに積まれているようです。こんなに重心が低いと感じたクルマはこれまでありません」

それもそのはず、918スパイダーの重心高はホイール・ナットの高さとほとんど同じだという。藤井選手が語った「重量物はすべて自分より低いところに積まれている」という印象は正しかったのである。

では、重心が低いことはクルマにどんな特徴を与えているのか?

「加速や減速のときに起きる荷重移動が明らかに小さい。そのほかにもロール方向とか、対角線方向の荷重移動なども驚くほど小さい。ボディの動きがほとんどないんです」

全長×全幅×全高=4643×1940×1167mm。ホイールベース=2730mm。ミドに縦置きされる4.6リッターV8は最高出力608ps/8700rpmを発生する。前輪を駆動するフロント・モーターとのシステム総合出力は887ps/6500rpm、システム総合トルクは130.5kgmとなり、0-100km/h加速はなんと2.6秒!


藤井選手が語ったとおり、918スパイダーは富士スピードウェイを激しく走行しても、ピッチングやローリングがほとんど起きない。もっとも、ただボディの動きを抑え込みたいだけならスプリングやダンパーを徹底的に締め上げるという手もあるが、それでは路面のうねりにタイヤが追従しきれなくなり、結果的にロード・ホールディングの低下を招きかねない。

「ところが、“足”はすっごくよく動いているんですよ」と藤井選手。

「モノコックはカーボン製でものすごくガッチリしているから、タイヤだけが路面のうねりにあわせて上下できる。特に、リバウンド・ストローク側でもマイルドにタイヤが接地してくれるのは驚きでした。おかげでロード・ホールディングはとてつもなくいいし、4本のタイヤがいまどのくらいグリップしているかも手に取るようにわかります」

抜群の乗り心地

918スパイダー、乗り心地が抜群にいいことは助手席でもわかった。

「乗り心地はマイルドで、びっくりするくらいいいですよ。それは低速域でもはっきり感じられました」

私が「コースの上を浮遊しているかのような未来的な走行フィーリング」と称した理由も、まさにこの点にある。サスペンションの設定は思いのほか軟らかそうなのに、ボディはピタッとフラットな姿勢を保って崩れない。その動きは、路面の変化をあらかじめ察知して能動的に足回りをストロークさせるアクティブ・サスペンションを思わせるものだが、918スパイダーの足回りは電子制御式ダンパーのPASMは備えるものの、スプリングは一般的な金属コイル式。このシンプルな足回りで、どうやってこれだけのフラット感と快適性が両立できたのか、まったく首をひねるしかなかった。

強力なダウンフォースを発生させるリア・ウィング


そしてまたハンドリングも絶妙だと藤井選手は言う。


「クルマとして評価した場合、フロントの入りがすごくよくて、とにかくニュートラルに感じられます。それはAコーナーのような高速コーナーでも、逆バンクがついてアンダーステアが出やすいプリウス・コーナーでも変わりません。きっとメカニカル・グリップとダウンフォースのバランスがバツグンにいいんでしょうね。僕がレーシング・カーをセット・アップするとき、こういうバランスだったらいちばんタイムがでるなと思えるような、見事なニュートラルステアでした」

918スパイダーのブレーキングが素晴らしいことは、ポルシェだから当然予想ができたことだけれど、完成度は並外れて高かった。

「300km/hオーバーの領域からでも、本当に沈み込むように止まります。普通だったら、もっとリアが浮き上がってナーバスな動きをするものですが、918スパイダーではまったくそれがありません。恐らくダウンフォースが相当効いているんでしょうね。タイヤのトレッド面が微妙に動いている感触はありましたが、まるで怖くありませんでした」

いうまでもなく圧倒的なトラクション性能も備えている。

「ヘアピンでも早めにアクセルを開けていきましたが、トラクションがものすごくて、信じられないような勢いで加速していく。おかげで続く300Rではアクセルを戻したくなるくらいの速度に達していました」

たしかにオンボード映像を見ると、Bコーナー直前でスピードメーターは260km/h近くを示していた。おかげで、300ps程度のスポーティカーであれば直線も同然の300Rが、918スパイダーではタイヤの横グリップを使い切ってしまうくらい“立派な”コーナーとなっていたのである。

こうして1周を走りきった際のラップタイムが冒頭の1分47秒609だったのである。

「今日はアタック前に撮影などで走行していたからタイヤは完全にニューとはいえませんし、内圧もまだあわせ込めていない状態。しかも、ルーフを取り外したままだったから空力的にも不利だったはずだし、Eパワー、ハイブリッド、スポーツ・ハイブリッド、レース・ハイブリッド、ホット・ラップという5つが用意されている走行モードのうち、今回はいちばん速いとされるホット・ラップで走りましたが、この辺もまだいろいろと試してみる余地はあったと思います。もしもすべてが完璧な状態だったら、1分46秒台前半は確実にいくでしょうし、45秒台に入ったとしても不思議ではありません。あのポルシェ911GT2RSでさえ1分51秒台だったので、僕が富士で走らせたロード・カーとしては文句なく最速ですね。でもね、スリックタイヤを履かせたら、タイムはもっと伸びるはずですよ。918スパイダーはそれくらいポテンシャルのあるスポーツカーです」



918スパイダーは総じてどんなクルマなのか? 藤井選手に聞いた。

「これまで僕が乗ったどんなロード・カーとも、そしてロード・カー・ベースのGTレーサーとも、918スパイダーは異なっていました。いま、ポルシェはLMP1カーの919ハイブリッドでルマンを戦っていますが、その技術が入っているんじゃないでしょうか。だから、918スパイダーは919ハイブリッドのテクノロジーを受け継いだ近未来のスーパー・スポーツカーといったほうが正しいような気がします」

ポルシェが生み出した“ドイツ車のきわみ”、それが918スパイダーであることは間違いなさそうだ。

文=大谷達也 語り=藤井誠暢 

(ENGINE2015年1月号)

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