2023.07.14

LIFESTYLE

発達障がい者のために開発されたノートの使い心地は? 目に優しくてシンプル!

書く際の不便を解消

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子供だけでなく、大人にも発達障がい者は多い。「書くこと」にすら感じる重荷を軽くすべく、目に優しいシンプルなノートが新しいページを開く。

ノートにも感じるストレス


10.4%。文部科学省が昨年末に発表した発達障がいと思われる小学生の割合だ。具体的には多動や注意欠陥、自閉症スペクトラムといった症状をさす。10人に1人という高い数字は中学、高校では下がるものの、成長とともに改善はしても完治するわけではない。そもそも原因はおろか、病としての線引きすら未だ曖昧なことから明確な治療法はなく、少なからぬ人が大人になっても生きづらさを抱えている。そのひとつがノートだ。



白い紙に横罫線。ごく普通の仕様だが、発達障がいの当事者にとっては多大なストレスをもたらすことがある。白の地色で光の反射が眩しく感じられ、印刷の罫線が見分けにくいことで文字が歪む。使うごとに感じる不満は、違和感を超えた日々の苦痛となる。そういった悩みを聞き、大栗紙工が開発したのが“mahora”。高い技術力を生かし、さり気なくも斬新なアイデアが散りばめられている。

ミニマムでユニバーサル

色は表紙も中の紙もレモン、ラベンダー、ミントと称される淡いパステルカラーで統一された。これは発達障がい者に13色を見せ、最も抵抗がないと選ばれたカラーリングを採用。さらに罫線にも改良を施した。網掛け帯と地色、太さの異なる二本の線というふたつの組み合わせを考案し、視認性をアップさせている。



2020年に商品化されると徐々に注目を集め、翌年のグッドデザイン賞、日本文具大賞のデザイン部門優秀賞を受賞する。栄えある賞以外にも、うれしい誤算があった。発達障がい者だけでなく、白内障の患者からは目に優しい、脳の疾患で利き腕が使えない人からは罫線がリハビリの一助になっているという感想が寄せられた。さらにハンディキャップがなくても、書きやすさに惹かれて購入する人が増えている。

“mahora”は古語の「真秀ら」にちなんで名づけられた。奈良の「まほろば」の由来とも言われるが、もともとは「住みやすくすばらしい場所」を指す。いわばユートピアだが、障がい者も健常者も同じように便利さを享受できることはそうした理想のひとつだろう。「罫線の当たり前」を見直した試みは、弱者への同情ではなく、共に生きる仲間への想像力の大切さを示唆してくれる。


文=酒向充英(KATANA) 写真=杉山節夫

(ENGINE2023年7月号)

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