2023.07.17

CARS

1日2組限定! 森のなかにある隠れ家的ブルワリー「98BEERs」で愉しむ大人の週末 ディフェンダー90で行くドライブ旅行 いい大人には、いいクルマといい旅が必要だ!【後篇】

一日2組限定 山梨の美味しいビールとワインを愉しむ隠れ家ホテル。

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週末、癒しを求めてディフェンダーで森へ向かう。大人の旅には、いいクルマといい宿が必要だ。目的地は山梨県にある隠れ家のようなブルワリー。素敵なワインディング・ロードの後に待っているのは、よく冷えたクラフトビール、そして美味しい料理とワイン。クルマの取材であちこちドライブしていると、びっくりするような出会いがあって嬉しくなる。なかでも「これは内緒にしておこう」と思うような隠れ家的な宿は特別だ。今回は、そんな内緒にしておきたいとっておきの場所を紹介するリポートの後篇をお届けする。◆前篇から読む場合はこちらから!

東京からだと高速道路で1時間半もあれば着いてしまうような近場、山梨県甲州市塩山。福生里と書いて「ふくおり」と読む山あいの小さな集落に、旅の目的地、クラフトビールの醸造所、「98BEERs」はある。クルマで行ったら飲めないけれど、大丈夫。というのもここは「泊まれるブルワリー」として「Stay366」というホテルを併設しているからだ。

数十年間使われないまま、東京の保育園が夏の保養所として所有していた建物をリノベーションした98BEERsとStay366。ビールを片手にデッキでくつろぐのは最高の気分だ。

365日の日常の、1日先にある非日常が体験できるとしてこう名付けられたStay366とはいったいどんなところなのか。前篇では、ランドローバー・ディフェンダー90で、東京から自然豊かな大菩薩峠近くのワインディングを走るルートを紹介したが、後篇は塩山についたところからはじめよう。

時間がゆっくり流れている

いよいよ目的地も間近だ。塩山市街を抜けて、福生里の集落が近づくにつれて、どんどん道の傾斜が増してゆく。実はこの時点ですでに特別な体験は始まっている。南に面した斜面に続く狭い道。所々にある民家はみな年代物だ。不思議なことに、ここだけは時間がゆっくり流れているような気がしてくる。道はさらに細くなり、やがて鬱蒼とした樹々に囲まれると、森に飲み込まれるように消えていた。98BEERsは、福生里のいちばん奥まったところにあった。その先にはもう集落も道もない。



カーナビの登録は98BEERsではなく、ワイナリーの98WINEsと指示されていたのを忘れて、ブルワリーに直接来てしまった。出迎えてくれたオーナーの平山繁之さんがディフェンダーを見て驚いて言う。

「よく上がってこれましたね。道、細かったでしょう。以前、ディフェンダーで来た人は、下のワイナリーにクルマを止めて、うちのクルマで上がってもらったんですよ」

平山さんを知ったのは3年前だ。素晴らしい場所に素敵なワイナリーをつくった人がいると聞いて、ルノー・カングーで来たのが最初だった。詳しいことは、そのときの記事がエンジンWebに掲載されているのでそちらをご覧いただくとして、メルシャンや地元のワイナリーの醸造責任者を務めた後、退職を機に理想のワインづくりを求めて98WINEsを始めた平山さんが、こんどはなぜブルワリーをつくったのか。

ワイナリーの98WINEs。すべてはここから始まった。

98WINEsからの眺め。目の前には富士山が見える。

「この場所で、自分がつくったビールを飲みながら夕方の時間がすごせたら、どんなにいいだろうと思ったんです。フランスでも実はワインをつくりながらビールもつくっている醸造家って、意外と多いんですよ」

平山さんにとって大事なのは、「この場所ですごす時間」だ。実は平山さんがここでワイナリーを始めた経緯も特別だ。別の場所で進んでいた計画をやめて、偶然訪れた福生里に惚れ込んで98WINEsをつくったというのだから驚く。

フランスには、テロワールというワインをつくる土地の特徴や性質を指す言葉があるが、それは土壌に限ったことではないのかもしれない。平山さんと福生里の関係を知ると、その土地の風景も、文化も、流れている時間も、すべて含んでのものではないかと思えてくる。



ワイナリーを訪れるお客さんのなかにも、福生里が醸し出す居心地の良さを感じ取り、「泊まってゆっくりワインが飲みたい」という人がいた。そうして集落全体見渡せるいちばん奥にできたのがこの泊まれるブルワリーというわけだ。

そんな98BEERs とStay366 の、保育園の保養所をリノベーションしたという二階建ての建物は、なかもとても素晴らしい。一階の半分がクラフトビールの醸造所で、残りは宿泊施設だ。二階には洋風の部屋が3部屋あり、すべてが異なる雰囲気になっている。

写真は、21平方メートルのプライベートテラスがあり3名が宿泊できる「翠」と名付けられた部屋。北欧テイストの明るいフローリングが暖かい雰囲気をつくりだしている。

写真は「翠」の部屋からテラスを望む。

写真は「翠」のバスルーム。アメニティもよく吟味されている。

広々としたそれぞれの部屋にはよく吟味された家具が置かれ、室内にはテレビも電話もない。調光式の照明で部屋の明るさが自由に調整できるようになっているが、窓からの景色の見え方まで計算し尽くされた陰影の工夫には、思わずため息が出た。なんと落ち着く空間だろう。クラフトビールを飲みながら刻々と変わる暮れゆく福生里を楽しむ時間は、まさに黄金の時、ゴールデン・タイムだと思った。

そんなStay366の最大の魅力は、実は18時から始まるディナーにある。一階の落ち着いた静かなダイニングルームで出されるのは、全10品の和食の蕎麦会席だ。

写真は食事が提供されるダイニングルーム。

ずわい蟹とメロンの前菜のカクテル。

写真はメニューの「甘夏、鰹」のサラダ仕立ての一皿。ブロッコリー、カリフラワー、うるい、こごみ、わらび、鰹、甘夏をワサビドレッシングであえている。

デザート以外の9品にはソムリエが料理に合わせたワインがペアリングされる。もちろんすべてが98WINEsのワインだ。テーブルに置かれたメニューには、それぞれ使われる素材しか書かれていない。たとえば「甘夏、鰹」とだけ書かれた料理は、ウルイやコゴミ、ワラビといった山菜と鰹と甘夏をワサビのドレッシングで和えたサラダ仕立ての一皿だった。なんと想像力をかき立てられる工夫だろう。しかもこれに合わせた2021年のビンテージの白は、輸入ワインが不得手としがちな青魚の鰹を見事に引き立てる、繊細な酸味を持ったすっきりとした飲み口の見事なワインだった。

十割蕎麦のそば寿司。歯応えを楽しむ。

メーニューに「鰻」と書かれた逸品がこれ。そば生地はガレットというよりクレープの食感に近い。静岡の鰻にマスカルポーネチーズと奈良漬け、トリュフが添えられている。

厨房をひとりで取り仕切る和食の名店で修業をつんだ料理人が打つ十割蕎麦がまた驚きだった。十割蕎麦は、一寸を30に切り分けると名人級といわれるが、オーナーの平山さんによると彼はそれを超えるというが、一切自慢せずに黙々と料理をつくる。それがまた清々しくて良かった。

平山さんがワインに合わせる料理として和食の蕎麦を選んだときに決めたのが、最低でも3つの驚きを提供することだった。驚きが3つあるとそれは感動に変わるというのが平山さんが考えるモノづくりの哲学だ。98WINEs、98BEERs、そしてStay366という3つの驚きが揃う福生里は、「大人のいい旅」ができるまさに感動的な場所だった。

文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

「Stay366」 山梨県甲州市塩山福生里462-1 Tel.0553-32-6603 E-mail:stay36698@gmail.com 料金/1泊2食付4万5000円~(税・サービス料込) 客室数/3室 チェックイン/15:00~18:00 チェックアウト/11:00 ホームページ/http://stay366.jp ※食事とお酒を楽しむ宿のため、20歳未満の予約は受け付けていないので注意。希望すればワイナリーのツアーもある。宿泊は1日2組まで。5名以上の予約で一棟貸切のプランもある。
■Stay366
山梨県甲州市塩山福生里462-1 Tel.0553-32-6603 E-mail:stay36698@gmail.com 料金/1泊2食付4万5000円~(税・サービス料込) 客室数/3室 チェックイン/15:00~18:00 チェックアウト/11:00 ホームページ/http://stay366.jp ※食事とお酒を楽しむ宿のため、20歳未満の予約は受け付けていないので注意。希望すればワイナリーのツアーもある。宿泊は1日2組まで。5名以上の予約で一棟貸切のプランもある。下左の写真が、オーナーでワイン醸造家の平山繁之さんだ。

■ランドローバー・ディフェンダー90 X-DYNAMIC HSE
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 4510×1955×1970mm
ホイールベース 2585mm
車両重量 2100kg
エンジン形式 水冷直列4気筒DOHCターボ
排気量 1995cc
最高出力 300ps/5500rpm
最大トルク 400Nm/2000rpm
トランスミッション 8段AT
最小回転半径 5.3m
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/エア
サスペンション(後) マルチリンク/エア
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 255/60R20
車両本体価格(税込) 918万円

(ENGINE2023年8月号)

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