2023.07.31

CARS

マセラティ・グレカーレに試乗! 伝統と最先端技術が見事に融合している!!

レヴァンテに続いてマセラティが投入したSUV、グレカーレの2つのグレードに、森口将之と大谷達也の2人のモータージャーナリストとエンジン編集部員のウエダが試乗。マセラティならではの世界とはどういったものなのか、語り合った。

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現代のニーズに応えたマセラティ

森口 グレカーレはレヴァンテに続くマセラティSUVの第2弾です。ところで、これだけ最近SUVがウケている背景には、SUVが「格好よさ」と「乗りやすさ」を両立させたことにあったと捉えています。

車高調整が可能なエア・サスペンションはLSDなどとのオプションだ。

上田 というと?

森口 元々クルマは背が低ければ低いほど格好いいと思われていて、ミニバンみたいなクルマは格好悪いとされてきた。でも、背が低いと正直、乗り降りがしづらい。それが、たぶんポルシェ・カイエンやトヨタ・ハリアーとかが最初だったと思いますが、背が高く乗り降りはしやすいのに、スタイリングのいいクルマが登場してきた。これを見て「ああ、もう無理しなくていいんだ」とみんなが思ったことで、SUV人気に火が点いたというのが僕の理解です。

大谷 加えてカイエンやBMW X5みたいに「背は高くとも乗り心地とハンドリングのいいクルマが登場した」ことも、SUV人気が広まる要因の1つだったように思います。

森口 そうですね。で、マセラティがSUVを出した背景なんですが、創業当時からレーシング・カーやラグジュアリー・クーペを作っていたマセラティは、1960年代にいきなりクアトロポルテという4ドア・サルーンを世に送り出しました。

大谷 いわば突然の路線変更。

森口 そうなんです。だから現代のニーズに即してマセラティがSUVを出したというのも、僕には理解しやすい話なんです。

どちらも見事にイタリア

上田 ではグレカーレ、乗ってみたらどうでしたか? 今回は上位グレードのトロフェオと、エントリー・グレードのGTの2台でした。



森口 まずV6のトロフェオのほうは、昔からマセラティを知っている人にとって納得しやすいんじゃないかと思いました。僕自身、昔3200GTに乗っていたんですが、マセラティって凝ったメカニズムのエンジンとか、加速感とかサウンドだとかに、独特のテイストというか“血”みたいなものが感じられるんです。それと似たようなものがトロフェオからは伝わってきました。いっぽうでマイルド・ハイブリッドを載せたGTは、いかにも現代的で、いまを生きる自動車メーカーとして必要なんだろうという感じがします。

大谷 グレカーレのトロフェオに日本で乗ったのは今日が初めてだったんですが、エグゾースト・サウンドや加速感にはものすごい迫力があるのに、乗り心地とかハンドリングとかはとても洗練されていて、実に現代的で上質なハイパフォーマンスSUVだと思いました。



森口 トロフェオでは21インチのタイヤを履いているのに乗り心地はいいし、イタリア車らしいパワフルなエンジンを積んでいるし、インテリアの仕立ても良くて、オトナ4人が無理なく乗れる。その意味でいえば、イタリア車の魅力“全部のせ”ともいえますよね。

上田 僕はトロフェオもいいんですがGTにも強く惹かれました。ブロンゾ・オパーコっていう、あのなんとも言えない外装色がいい。存在感はあるんだけど落ち着いた不思議なたたずまいとでもいうのかな。インテリアの上質な素材の組み合わせみたいな部分にも、マセラティらしさを強く感じましたね。

内装色は写真の“ネロ/ロッソ”というレザーのほか6種から選択可。

森口 少し前のマセラティって「ちょいワル」なイメージになりつつあったけど、グレカーレのフロント・マスクはすっきりしていて上品ですね。

上田 新しいグラントゥーリズモともちょっと共通項があるというか。

大谷 マセラティらしい品の良さが滲み出ているように思います。エクステリアにもインテリアにも共通していることですが、私もマセラティに触れるたびに心を奪われるのが、色合いのセンスです。もちろん造形も見事なんですが、シンプルな色味のように思えて、実はものすごく微妙で凝ったカラーを選んでいるところは、さすがイタリアだなあと感心させられます。

上田 たとえばレクサスだと、デザイナーがもっとやりたいと思っていても、色々な事情で抑え気味にしているようなところがあって、正直、ちょっと素っ気ないなあと思わなくもない。でも、マセラティのデザインには、ちゃんと僕らがイタリアに期待するものが盛り込まれている。それでいてフェラーリやランボルギーニみたいな「わかりやすいイタリアン・スポーツ」とは少し違う。ちょっと奥ゆかしいというか……。

森口 そうですね。フェラーリやランボルギーニは完全に「スポーツの世界」だけれど、マセラティはそれだけじゃなくて「ラグジュアリーな世界」もある。それを、素っ気なくもなく、くどくもない範囲で、うまく採り入れていると思います。

大谷 インテリジェンスが感じられるのに、絶妙な色気もある。

上田 僕は今のベントレーって、イギリス的なものへの憧れをとても上手に演出していると思うんですが、マセラティにも似たようなところがあるんじゃないかと。たとえば伝統的なホテルのような、外観も内装もイタリアンな趣きなんだけど、そっと見えないところにシンプルなデザインの最新最良のAV機器も隠している、みたいな感じでしょうか。マセラティはそういうイタリア的な上質さへの憧れを、クルマで表現するブランドであって欲しい。大谷さんのいう知性的という意味では、本当はランチアがそういう世界観を受け継ぐ存在だったのかもしれないけど、今ではこれらのグレカーレくらいの色気を出さないと伝わらないのかも(笑)。

森口 きっと、本当に高級なホテルに泊まるとか、質の高いインテリアやファッションに触れたことのある人だったら、そういう世界観に共感できるでしょうね。そういう意味では、マセラティのクルマ作りは昔から変わっていない。

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