2023.07.28

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フィリップスのオークションで、驚くべき高値で落札された「ラストエンペラー」のパテック フィリップ!

パテック フィリップ Ref.96 QL(1937年製造)

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ENGINE WEBではもうお馴染みの時計を得意とするオークションハウス、フィリップス。これまでにも数多くの事例を紹介しながら時計オークションの醍醐味やエンターテイメントとしての魅力をお伝えしてきたが、今回は2023年の時計オークションの最高額を記録したという"特別な物語"を持ったパテック フィリップを紹介したい。

2023年の時計の最高落札価格8億6980万円

2023年5月23日、香港で行われたフィリップスのオークションに一本の古びたパテック フィリップが登場した。プラチナのケースには無数の傷があり、文字盤には無惨に削り取られた痕が残る古びたムーンフェイズ付きのカレンダーモデルだ。



ロットナンバー3、「パテック フィリップ Ref.96 QL」とカタログに表記されたその時計は、この日のオークションの主役として大々的に事前にアナウンスされ、2万5000香港ドル(4億4510万円)という高額の予想落札価格がつけられていたが、結果としてそれを遥かに上回る4万8850香港ドル、日本円にして8億6980万円という破格の金額で落札された。なぜこれほどの高値がついたのかといえば、このパテック フィリップの所有者が清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀、そう"ラストエンペラー"だったからだ。


Aisin-Gioro Puyi (1906-1967) Photo by Ullstein Bild via Getty Images


たった2歳で清朝の皇帝に即位し、わずか4年で退位した溥儀。その波乱の生涯をベルナルド・ベルトリッチ監督が映画化した『ラストエンペラー』は、先日亡くなられたばかりの坂本龍一氏が音楽を担当したことと合わせて強く記憶に残っている。

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今回フィリップス社は、溥儀がソ連で軟禁されていた時に身につけていたパテック フィリップRef.96 QLを含む所持品11点を出品し、「インペリアル パテック フィリップ セール」として特別なオークションを開催した。



なかでももっとも注目されていたのは”インペリアル パテック”と呼ばれていたカラトラバ 96 カンティエーム ルナであることは言うまでもないが、問題はそれが本当にラストエンペラーのものであったかどうかだった。

フィリップス社は、これが溥儀の愛用品であったことを裏付けるために、時計の専門家や歴史家、ジャーナリスト、さらには科学者まで動員したプロジェクトチームを立ち上げ、様々な分野の研究を行い、3年の年月をかけて調査したという。

それによると、出品されたタイムピースは1937年製で、フランスの小売業者が販売したものだった。ケースはプラチナのオリジナル。ムーブメントは当時のパテック フィリップが複雑時計に多く採用したヴィクトラン・ピゲ。ストラップとバックルもオリジナルのままだが、ホワイトとサーモンピンクのエナメルアラビア文字のルーレットダイヤルの文字盤だけは、下半分が削られた状態だった。この不自然に削り取られた痕こそが、これが、溥儀が愛用したパテック フィリップであることを確たるものにする。



フィリップス社の調査チームが見つけ出した当時の資料には、溥儀が軟禁生活の退屈しのぎに、プラチナケースのパテック フィリップは文字盤もプラチナかどうかを調べるために使用人に削らせたやりとりが、はっきりと書かれていたという。

さらに、ムーンフェイズ付きのトリプルカレンダーを備えたRef.96は、これまでに8本しか確認されておらず、しかもプラチナ製は3本だけという希少なモデルであること。また、ムーンフェイズが通常とは逆の12時位置にあり、個体としても非常に珍しいことなど、歴史的にもストーリー的にも大変貴重なタイムピースであることが裏付けられた。

この貴重なインペリアル パテックは、修復やオーバーホールなどは行われず、動くかどうかも確認されていない。当時を封印したままのようなこのタイムピースの止まったまま流れた時間もまた、その価値を高めるものとして尊重されているからだ。

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ふたつのデイトナ

8億6980万円という破格の金額で落札された溥儀が所有したパテック フィリップのストーリーだが、これとよく似たケースがクラシックカーの世界にもあるのをご存知だろうか。

2017年9月、フェラーリの本拠地マラネロで開催された同社70周年の祝賀行事の一環として行われたオークションに、日本の岐阜県のとある納屋で発見されたフェラーリ365GTB/4(通称デイトナ)が出品された。1969年にたった4台だけが製造されたアルミボディの貴重なデイトナで、発見されたほぼそのままの埃を被った状態でオークションにかけられると180万ユーロ(当時のレートで2億3300万円)の値をつけた。クルマの世界では「納屋物」と呼ばれるケースだが、不動車でもオリジナル性が高いと高値がつく。



実は、これは時計のデイトナでも同じことが言える。かつてフィリップスのオークションに出品されて高値をつけたロレックスのデイトナは、日本で長くタンスの奥に眠っていた家族の遺品だったという。高額で落札された理由はフェイスの変色も少なく、状態が素晴らしかったからだ。日本から出品される時計は、非常にコンディションが良いことからとても人気があり、オークション価格も高めになることが多いという。

オークションにかけられるのはなにもインペリアル パテックのような特別なものばかりではない。様々な年代の様々なブランドの時計がたくさん出品されている。なかには思い出の時計に思わぬ高値がつくこともある。長く眠っている時計があったらぜひ一度、フィリップスのオークションに出品してみてはいかがだろう。

文=塩澤則浩(ENGINEWEB)


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問い合わせ=PHILLIPS(フィリップス)東京
Tel.03-6273-4818
Email:tokyo@phillips.com

(ENGINEWEBオリジナル)

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