2023.08.25

LIFESTYLE

ブルーノートが認めたロックバンド、ヴィンテージ・トラブル 胸が熱くなる8年ぶりの新作を聴く

2011年にインディー・デビュー

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ブルーノートからメジャー・デビューした初のロックバンドとして注目されたヴィンテージ・トラブル。新たなレーベルと契約した彼らの新作は、メッセージ性を有したエモーショナルな傑作である。

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大手インディペンデント・レーベルと新たに契約

2010年にハリウッドで結成された世界屈指のライブ・バンド、ヴィンテージ・トラブル。これまでローリング・ストーンズ、ザ・フー、AC/DCといったレジェンド級バンドのオープニングアクトに次々に抜擢され、日本でもサマーソニックやグリーンルームフェスに度々出演して観る者たちを熱狂の渦に巻き込んできた。2015年にはブルーノートの社長ドン・ウォズに気に入られ、名門ジャズレーベルからメジャー・デビューした初のロックバンドとなって注目を集めもした。



そこから8年。より自由な動き方を求めてロンドンの大手インディペンデント・レーベルと新たに契約した彼らが、待望の新作『ヘヴィー・ヒムナル』をリリース。制作当初はコロナ禍でスタジオに集まれずにいたため、メンバー4人とプロデューサーのクリス・シーフリードが各自の自宅からリモートで作っていったそうだ。が、聴けばそうとは思えない一体感。1曲目からゴスペル的な高揚感に熱くなり、ライブ時のエネルギーを思い出すことになる。ヴォーカルのタイ・テイラーが言う。

「パンデミックで人と会えずにいるとき、ある人たちはいつもより剥き出しの自分でいたと思うんだ。家で映画を観て泣いたり、家族や友達との会話で感情が露になったり。自分もそういう側面があり、それが音楽に反映されてエモーショナルな作品になったというところはあるかもしれないね。それとしばらくライブができなかった分、やれることの全てを根気よくやれたというのも大きい。ソングライティングに幅を持たせることができたし、サウンドもそうだ」



“重き讃美歌”というアルバム・タイトル

勢いのいいロックンロール曲、ブルーノ・マーズにも通じるポップR&B曲、胸に沁みるソウルバラード曲まで、確かに過去の作品よりも楽曲に幅がある。また、注目すべきは歌詞だ。人種差別問題や社会の分断化、軍事侵攻の愚かさなど、世界の現状に焦点を当てた「リピーティング・ヒストリー」という曲もあり、これまでよりも強く厳しいメッセージ性を有しているのだ。“重き讃美歌”というアルバム・タイトルからして、ずっしりくる。

「初めのアルバムを出した頃は、“オレたちはグッド・タイム・バンドだ、みんなに楽しくて最高の喜びの時間を与えるんだ”みたいな気持ちで音楽をやっていた。でも時代が変化して、今は“楽しく生きようぜ”というメッセージばかり発し続けるわけにはいかなくなった。社会は激動し、それに対してしっかり声をあげている人たちがいる。今作はそうやって懸命に生きている人たちにとっての“人生のサウンドトラック”となるような作品になればいいなと思ったんだ」

情熱と、勢いと、強力なメッセージ。胸が熱くなり、そして勇気が湧いてくる、そんな作品だ。

文=内本順一 (音楽ライター)

(ENGINE2023年9・10月号)

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