2023.08.19

CARS

【後篇】1889km走ってわかったBMWアルピナD3Sの素晴らしさ! 快速ツアラーで行く、東北の絶景と美食を巡る旅!!

BMWアルピナD3Sで岩手は八幡平を目指した自然を観て、浴びて、食べ尽くす、快速ツアラーで行く、絶景と美食を巡る旅。前篇に続いていよいよ最高のワインディングを走る後篇をお送りする。◆前篇から読む場合はこちらから!

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あまりに気持ち良くて……

翌朝、居心地の良い宿に後ろ髪を引かれつつ、さらに北を目指した。この日こそが旅の一番の目的なのだから。盛岡から約50km、東北道・松尾八幡平ICを降りて、お待ちかねのアスピーテラインを登り始めた。アスピーテとは、底面積が広く、傾斜が10度以下の緩やかな火山を指すそうで、麓の少しの区間を除けば、比較的穏やかな上りが続いていた。かつては有料道路だったためか、整備が行き届いていて走りやすい。平均速度が高めのワインディングだ。入り口の標高は460m。山頂地点の1535mまで約19kmの道のりは、積極的に運転を楽しむことにした。

外装色はBMW Individualカラーのドラバイト・グレーで、筋肉質で引き締まった印象だ。

D3Sは、とにかく力強い。どこからアクセレレーターを踏み込んでも、低回転域からトルクの太いエンジンは思い描いただけの加速をしてくれる。もちろん右足を大きく動かせば、強烈に背中を押してくれる。それでも、何か演出があるわけでもない。あくまで平然としていて、顔色を変えることはないのだ。さらにすごいのは、ディーゼル・モデルにもかかわらず、高回転まで回すのが気持ち良いこと。車内に聞こえてくるエンジン音はきめ細やかに粒が揃っていて、雑味など一切感じられなかった。エンジンの振動とも縁遠いもので、これには感心してしまった。

加速が良ければ、減速も良い。ブレーキは抜群の制動力とコントロール性を誇っていた。オプションの強化ブレーキが備わった試乗車は、踏み始めのタッチに少しばかり慣れが必要だったけれど、これはきっと私の操作の繊細さが足りなかったのだと思う。それに、速度域が高くなっても、切れば切った分だけスイスイと曲がるハンドリングの良さも絶品だ。おそらく、これには4輪のトルクを可変配分する4WDシステムも貢献していたに違いないけれど、運転していて感じられたのは、ただただ気持ち良いFRスポーツカーの感覚そのものだったからお見事だ。



思わず山頂を越えてしまった。一番の目的である「ドラゴンアイ」をひと目見るためにレストハウスの駐車場へ。山頂付近の「鏡沼」が雪解けの途中、5月下旬から6月上旬にしか見られないというその光景は、龍の目に見えることから名が付いたという。なんと満車で入庫待ちをしたのは予想外だったけれど、それもそのはず。この絶景は、ご覧の通り200点だ。これは、本当に来て良かった!! 目の直径はおおよそ50m。幻想的でちょっと神秘的な、自然が生み出す美しさにしばし見惚れていた。

 「ドラゴンアイ」は、八幡平アスピーテライン山頂のレストハウス駐車場から15分ほど徒歩で登ったところにある「鏡沼」で見られる現象のこと。毎年5月下旬から6月上旬の限られた期間、鏡沼の雪が解けていく様子が「龍の目」に見えることからその名がついた。取材日は6月6日。目に例えると、瞳孔の部分の雪解けがもう少しだけ進んでいれば完璧だったけれど、絶好の天気も考えれば、素晴らしいものを見ることができたと思う。天気が良くて、本当に良かった。

来た道を戻り、麓からそのまま東へ30分。北緯40度のまち「岩手町」で、ここでも地元の食材と土地の歴史を堪能。充実の1日だった。

地球スケールの時を感じる

最終日。この旅の最後の目的地は岩泉町にある「龍泉洞」だ。日本三大鍾乳洞の1つである。盛岡から一本道の国道455号を2時間弱、気持ちの良いコーナーの続くワインディングを進む。アルピナの走りにうっとりしていたら物足りないくらいだ。

最終日の目的地、岩泉町は「龍泉洞」に到着。背後に見える山の下に洞穴が広がっている龍泉洞は日本三大鍾乳洞の1つだ。岩手県下閉伊郡岩泉町岩泉字神成1番地1  Tel. 0194-22-2566

一番の見どころはやはり、3つの地底湖、そのうちの1つは水深が98mもあるそうだ。いったいどれだけの年月がこの光景を造ったのだろう。ライトで照らされた湖内を覗き込んでいると、とてつもなく長いであろう時間の蓄積に吸い込まれそうな気持ちになった。

世界有数の透明度を誇るという地底湖は8つ発見されているが、公開中のものは3つ。洞口付近では現在も毎秒1.5トンの水が湧き出しており、長い時間をかけて地中に滲み込んだ水が地底湖で湧出している。

実際に、洞内に見渡す限り広がる鍾乳石も、たった1cm成長するのにかかる時間はなんと50年なのだとか。いやはや、今わかっているだけで4000m以上というこの鍾乳洞ができるのには、何百年、何千年のスケールでは済まないかもしれない。壮大な時間に思いを馳せることができるのも、非日常の旅の醍醐味である。



さあ、多少駆け足だった旅も終わり、残るは東京に帰るだけだ。東北道・盛岡南ICまでワインディングをひた走る。高速に乗るのが勿体ないくらい、コーナリングも気持ち良いクルマだった。途中、道中の「薮川そば」に立ち寄ってお腹を満たした。薮川というのは盛岡市内の地名で、本州で最も寒いと言われる地域なのだ。ここで自家栽培されたそばを使った手打ち麺は、コシがありすっきりとした舌触り。旅を締めくくるのにぴったりだった。

店名の由来にもなっているこの盛岡市の薮川地区は、標高約700メートルで厳寒時にはマイナス30℃まで気温が下がり、本州で一番寒いと言われている。そこで無農薬栽培されているそばを使用した「舞茸天ざるそば」を注文。今となっては食べる機会の少ない手打ち麺はコシがあり、滑らかな舌触りだ。

最高の快速ツアラーで行く素晴らしい旅はとても贅沢で、収穫の多い3日間になった。さて、BMWアルピナの魅力はどこにあるのか。何を取っても一流なのだけど、やはり特筆すべきは足のしつけだと思う。今回、旅を通して本当にいろんな道を走ったけれど、一瞬たりとも大径で扁平のタイヤを意識しなかったのだ。とりわけ、高速域で道路の継ぎ目や目地段差を乗り越える時、軽やかにタン、タンとこなす足さばきには終始、感動しっぱなしだった。市街地では、舗装が古く荒れた路面も多かったけれど、やはりD3Sは表情を変える素振りを見せなかったのである。あらゆるシチュエーションでも常にアルピナ・テイストを味わえるのが、何よりも一番の魅力だということが本当によくわかった。気づけば1889kmも走ってしまった。D3Sでこれだから、上位車種はどんなに素晴らしいのだろうか。欲は尽きないものである。

文=村山雄哉(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正

■BMWアルピナ D3S
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 4725×1825×1440mm
ホイールベース 2850mm
車両重量(車検証) 1910kg(前軸990kg、後軸920kg)
エンジン型式 直列6気筒ディーゼル・ツインターボ+48Vスターター・ジェネレーター
排気量 2992cc
ボア×ストローク 84.0×94.0mm
最高出力 355ps/4000-4200rpm
最大トルク 730Nm/1750-2750rpm
トランスミッション ZF製8段AT
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ (前)255/35ZR19、(後)265/35ZR19
車両本体価格(税込み) 1220万円



(ENGINE2023年8月号)

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