2023.09.06

CARS

レーシングカー血筋のV8は一糸乱れずレッドゾーンへ シボレー・コルベットのZ06に乗った!

8世代目の最新型でフロント・エンジン後輪駆動のFRからミドシップへと大変貌を遂げた「シボレー・コルベット」に、レーシングカーのテクノロジーを採り入れることでさらなる速さを求めた「Z06」が加わった。DOHCヘッドを持つZ06はOHVの標準モデルとはどう異なるのか? モータージャーナリストでコルベットへの造詣が深い渡辺敏史氏が試乗し、確かめてみた。

ローカル・ヒーローから世界に伍するスポーツカーへ

どちらかといえばローカル・ヒーローの色合いが濃かったコルベットが、世界に伍するスポーツカーとしての認知度を高めたのは21世紀の入りと相前後する頃だったように思う。C5世代の1999年にファクトリー・レーシングチームを結成し、2001年にはル・マン24時間レースで初のクラス優勝を遂げると、以降のC6世代に掛けて、ル・マンを始めとするGTカテゴリーでの有力チームの一角を占めるに至った。それを機に欧州ではC6が年間1万台余も売れるなど、かつてないムーブメントが巻き起こったりもしたわけだ。



FRの限界に直面

しかしC7世代では悩まされ続けてきたFRの宿命ともいえるトラクション不足がいよいよ表面化。フェラーリが常勝に返り咲きポルシェでさえ911をミッドシップ化するなか、勝利が遠のいていた。そんななか、GMはC7が発売されて間もない2015年には次期コルベットのミドシップ化を決断していたというから、その開発過程では当然コルベット・レーシングの意向も色濃く反映されてきたことだろう。

かくしてミドシップ化を果たしたC8世代。とりわけこのZ06は、GTEクラスのファクトリー・レーサーであるC8.Rや、カスタマー・レーシング向けのC8・GT3と並行して開発されてきたロードゴーイング・レーサーとみることもできる。



C4世代以来、2例目のDOHCユニット

その根拠となるのが搭載するエンジンだ。ベース・モデルは伝統のOHV・V8を積むのに対して、Z06が積むのはDOHC・V8のLT6型となる。C4世代に提携関係にあったロータスが開発協力したZR-1以来、非OHVユニットの搭載は2例目だ。それでも、バンク角は90度でボアピッチはスモールブロックと同じと、設計思想で韻を踏んでいる辺りがアメリカン・スポーツらしい。

排気量は5.5リッターながらボアは104.25mm、ストロークは80mmと今時分には珍しいほどのショートストローク設計は、もちろんトップエンド側のパフォーマンスを狙ってのものだ。レッドゾーンは8600rpmとキャパシティを鑑みれば異例の高回転ユニットといえるだろう。911GT3をも上回るボア径にして完全燃焼を管理できている辺りにもレーシング・テクノロジーの片鱗が窺える。ほかにもフラットプレーン・クランクシャフトやチタン鍛造コンロッド、超ミニスカートの鍛造ピストンなど、用いられるパーツはタダならぬものばかり。そのカット写真をみるに、C8.RやC8・GT3との共通項を探したくなるほどその仕立てはレーシィだ。

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