2023.09.22

CARS

犠牲を強いる軽量化は軽量化ではない! ガヤルドの軽量化版、LP570-4スーパーレッジェーラとはどんなクルマだったのか?【『エンジン』アーカイブ蔵出しシリーズ ランボルギーニ篇#1】

市販車にカーボンが使用されることがまだめずらしかった頃、軽量化のためにカーボンを積極的に導入したメーカーとひとつがランボルギーニだった。スーパースポーツカーの中古車市場では今なお人気のあるガヤルド、その超軽量化バージョンたるLP570-4スーパーレッジェーラは、専門の研究施設まで設けて得た先進技術を投入した革新的なモデルとして記憶されている。雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を蔵出しするシリーズのランボルギーニ篇。今回は、2010年6月号に掲載されたガヤルドLP570-4スーパーレッジェーラに試乗した国際試乗会のリポートをお届けする。

国際試乗会はスペインのセビリアで行われた

初代ガヤルド・スーパー・レッジェーラの登場から3年、あの究極のドライビング・マシンがさらに進化を遂げて帰って来た。その走りをスペインで開かれた国際試乗会からリポートする。

国際試乗会の舞台となったモンテブランコ・サーキットはF1のウインター・テストにも使われる本格コースだ。

闘牛の本拠地であるスペイン、セビリア郊外にあるモンテブランコ・サーキットを舞台に開かれたガヤルドLP570‐4スーパーレッジェーラの国際試乗会には、“ザ・ペースメーカー”というキャッチフレーズが付けられていた。「トレンドをつくり出していくランボルギーニのDNAを表している」と広報担当者は解説したが、要は自分たちは時代の最先端を走っている、という自信の表れであるに違いない。そして、スーパー・スポーツカーにとっての時代のトレンドは“軽量化”にある、というのが、2007年デビューの先代に続いて、今回再び「スーパーライト」を意味するモデルを登場させた彼らの考えだ。

コンファレンスの冒頭、ヴィンケルマン社長は、「2007年からランボルギーニのDNAを表す優先順位は変わった」と、こんな話を披露した。すなわち、07年までは、1にデザイン、2に最高速、3に加速性能、4にハンドリングだった。それが07年以降は、1にデザイン、2にハンドリング、3に加速、4に最高速となって、最高速の優先順位が下がり、ハンドリングの重要性が上昇した、というのである。となれば、単なるパワーより、パワー・ウエイト・レシオの向上が重要な課題となる。そして、そのためには軽量化がカギを握っている、とたたみかけた。スーパー・スポーツカーが妍を競い合った60年代、クルマはどれも軽かった。たとえば、66年のミウラP400は980kgしかなかった。しかし、80年代になって安全基準が強まるとともに、クルマは大きく重くなっていった。そして今、時代は転換期にある。ハンドリングのみならず環境問題を考えても、軽量化は燃費の向上とCO2の低減に寄与する。

安全基準を満たしつつ軽量化するためには素材を変えるのが有効で、中でも超軽量性と高剛性をあわせもつカーボン・ファイバーはスーパー・スポーツカーにとって理想的な素材だ。だからこそ、ワシントン大学やボーイング社と組んで、「アウトモビリ・ランボルギーニ先進複合素材構造研究所」を設立し、今回のスーパーレッジェーラにはその研究成果が盛り込まれている、というのだ。

ダッシュボードまわりもすべてアルカンタラに覆われている。

ベース・モデルから70kg減量

そもそもがアルミ・スペースフレームにアルミ・パネルを貼った軽量ボディを持つガヤルドを、さらに減量しようというのだから至難の技だ。しかもベース・モデルのLP560‐4自体が、先代スーパーレッジェーラの後に出て、初期型ガヤルドよりずっと軽量化されているのだ。
 
それでもなお、70kgの減量を成し遂げた要因は、確かにカーボン・ファイバーの多用にある。まずエクステリアでは、エンジン・フードがカーボン・ファイバーに透明のポリカーボネイトを組み合わせたもの(その接合には世界初のフルカーボン民生機となるボーイング787と同じ技術が使われているとか)になっているほか、リア・スポイラー、サイド・シル、ディフューザー、アンダー・ボディ・パネルの一部、ドア・ミラー・ハウジングにもカーボン・ファイバーが使われている。
 
さらにインテリアに至っては、センター・トンネル・カバーやドア・パネル、バケット・シートのシェル、シフト・パドルなどに、これでもかというほど使われている。

カーボン製フルバケット・シートを標準装備する。
 
もうひとつインテリアで特徴的なのはアルカンタラの多用で、これもレザーよりずっと軽量なのだという。また、リアとリア・クォーターのウィンドウはポリカーボネイト製だ。
 
カーボン・ファイバーによる軽量化が全体の半分強にあたる40kg分。あとは軽量鍛造アルミホイールへの換装で13kg減らしているほか、先のアルカンタラやポリカーボネイトを使った細かい減量を積み重ねて計70kgを削ぎ落としているわけだ。
 
一方、エンジンはベース・モデルと同じ5.2リッター直噴V10だが、電子制御システムの最適化によって、プラス10psの570psを絞り出している。その結果、パワー・ウエイト・レシオは2.35kg/psで、先代やLP560‐4の2.5kg/psを一段上回る。0‐100km/h加速は3.4秒(先4は3.8秒、LP560は3.7秒)。最高速は325km/hで、先代よりは10km/h速いもののLP560と同じなのは、優先順位が下がったことによるものか。

LP560と同じ5.2リッター直噴V8からECUの変更で10psアップの570psのパワーを絞り出す。

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