2024.09.05

CARS

ランボルギーニ・ウラカンLP580-2とLP610-4 4WDオープンかそれとも2WDか? 毎日乗れる猛牛はどっちだ?【エンジンアーカイブ蔵出しシリーズ】

ランボルギーニのエブリデイ・スポーツカー、ウラカンの2輪駆動モデルのLP580-2と屋根開きモデルのLP610-4スパイダーを比較試乗。

全ての画像を見る
毎日スーパーカー

advertisement


塩澤 そんなウラカンの2輪駆動モデルのLP580-2と4駆の屋根開きモデルのLP610-4スパイダーに今回乗ってみたわけだけど、これまでは毎日スポーツカーの代名詞、絶対王者と言えばポルシェ911だったのが、もはや独壇場ではなくなった、と思ったね。

村上 この2台のウラカンの場合は毎日スポーツカーではなくて、毎日スーパーカーなんだけど、その領域は益々広がっている。そしてもうひとつ、今回の特集では別のページでアウディのR8にも乗ったんだけど、R8とウラカンが、プラットフォームもV10エンジンも共有していながら、こんなにも味付けの違うクルマに仕上がっていたことにも驚いた。

塩澤 その話、面白いじゃん。どんなふうに違うの?

村上 ひと言でいえば、ウラカンはスーパーカーの毎日版で、一方のR8はスーパー・スポーツカーの毎日版なんだと思う。R8と較べてよくわかったのは、ウラカンがスーパーカーの味をすごく色濃く残していること。そういうクルマに毎日乗れるというのは、やっぱり特別な喜びだと思うし、しかも屋根開きでオープンエアが楽しめるとか、後輪駆動ならではの走りが楽しめるわけでしょ。これはもう、たまらないよ。

塩澤 毎日スーパーカーのすそ野の広がりがわかるデーターがここにある。ガヤルドは発売後の19カ月間で世界で2100台を売り上げたんだけど、ウラカンは3550台だったっていうからね。ガヤルドの成功の上に成り立っている数字とはいえ、これはもう苦痛を我慢して乗るスーパーカーではない、というのが定着したことを証明している。

アルミとカーボンのハイブリッド・シャシーはもちろんクーペと同じ。屋根が開いていることを忘れるほど剛性は高い。


村上 それにしても、今回乗ってみてスパイダーはすごくお得なクルマだと思ったな。クーペで楽しめることは全部できて、その上、屋根が開くという特典が加わった。普通、屋根が開くと剛性が落ちたり、対候性が問題になるとか、マイナス要素を考えるんだけど、このスパイダーに関しては、プラスはあってもマイナスがあるとは思えないからね。

塩澤 剛性に関していえば、厳密にいったらきっと落ちてると思うけど、まったくわからなかったね。

村上 サーキットを頻繁に走る人はクーペを選んだほうがいい。だけど普通の人が一般道を走る限りは、どんな山道を飛ばしても、剛性の違いはまったくわからないだろうね。

塩澤 スパイダーで一番驚いたのは、乗り心地がいいことだね。スパイダーのほうは610馬力もあるから、相当ハードなんだろうな、と覚悟してたけど、2駆と較べて全然しっとりしていてうっとりしたよ。

内装のデザインも変更はないが、クーペにはないドリンクホルダーが付くのはスパイダーならではの装備だ。




村上 正直いって、今回の2駆と4駆を較べてみると、4駆のほうがウラカンの本筋であることがよくわかったね。2駆はあくまでも派生モデルで、本筋とは違う味付けを提供しようという意図がはっきりあると思う。味付けの違いをもう少し具体的にいうと、2駆のほうがやんちゃな感じがする。でも、実は2駆のほうがバネが柔らかくなっていて、ロールもするっていうのは驚いたね。

塩澤 アシを柔らかくすることで、荷重移動を感じやすく、運転のリズムをつくりやすくしようという狙いがあってのことで、ランボルギーニはサーキットでも楽しめるようにしたって言ってる。4駆はもちろんサーキットでも速いんだけど、終始アンダーステア気味で安定してる。一方、2駆はフロントの舵の効きを良くして、後輪を積極的に滑らせるようなオーバーステア気味の味付けになってるはずなんだけどね。

580-2では空力を考慮してフロント・バンパーとリア・ディフューザーのデザインが変更された。やっぱり最新デザインはカッコいい。610-4もアップデートされることを望む。


村上 でも、このモデルはサーキットを走り込んでタイムを刻むようなクルマではないよね。おそらくこうした味付けを好むある種のドライバーに向けてつくられていると思う。今回の個体で乗り較べた感じでいうと、2駆のほうのアシのセッティングはいま一歩詰め切れてないような気がしたな。実は今回の試乗は2駆のほうから乗り始めて、いやぁ、軽やかでいい感じだなぁ、乗り心地もいいなぁ、って思ってたんだけど、その後で4駆に乗り換えると完成度の高さが全然違って驚いた。2駆は意外に雑だったんだ、って思った。でも僕が雑といってるところのニュアンスが、4駆の重厚さとは違う、軽さとかカジュアルさを味付けとして出そうとしたものかもしれない。

塩澤 ポルシェは911の2駆と4駆の味の違いをなくそうと努力して、やっと克服しつつあるわけだけど、ウラカンはあえてその違いを明確にして、お好きなほうをどうぞ、っていってるような気がするね。

村上 まあ、コーナーの立ち上がりなんか全然違ったよね。4駆のほうは前輪がグイグイ引っ張る感じでむちゃくちゃ速かったけど、2駆は後から蹴り上げるような走り方。たぶんサーキットを走っても4駆のほうが断然速いと思うよ。そもそもパワーも30馬力も違うしね。



塩澤 あと、エブリデイ・スーパーカーになったなぁ、と思ったポイントはブレーキだね。ホントに驚くほど扱いやすくなったもの。ガヤルドにはじめてカーボンセラミック・ブレーキが付いたときなんて、街乗り程度の速度だとかっくんブレーキでまともに走れなかったからね。610-4はカーボンセラミックで、580-2はスチールだけど、どっちも素晴らしかった。

村上 リニアでスムーズ。ホントに細かいところまで踏み分けられる。それとエンジンもガヤルドとくらべるとどんどん良くなってる。よく考えてみるとね、いまV10の、しかも自然吸気エンジンを味わえるのって、R8とウラカンしかないわけだからね。これはすごいことだよ。

スパイダーではフードの下に隠れて見えないV10も、580-2ではご覧のようにガラス越しに素敵な眺めが堪能できる。


塩澤 エンジンだけは、毎日F1カーみたいなもんだからね、ひと昔前の。たまらないよ、ホント。でも、2駆も4駆もそうだけど、街中を低速で普通に走っているときは、まるで子牛ちゃんみたいに扱いやすい。それがひとたびアクセレレーターを踏み込むと猛牛に変身する。

村上 日本で乗るとちょっと幅が広くて、ちょっと車高が低いから気を使うけど、それを抜きにすれば素晴らしく乗りやすいことは間違いない。
毎日乗れるか?

塩澤 ひと昔前はランボルギーニといえば、ちょっとやそっとでは近寄れない恐れおおいクルマだったけど、ウラカンになって、ものすごくフレンドリーになった。

村上 値段が高いこと以外はね。

塩澤 ん~、確かにそこはまだフレンドリーではないな。

村上 もうちょっと安いと僕も買いたいんだけどなぁ。僕はやっぱり屋根開きがいいな。

塩澤 2駆の値段も魅力だけどね。

村上 2駆はいくらなの?

塩澤 2462万4000円。

村上 スパイダーは3267万円だから、その差約800万円! もう1台、毎日スポーツカーが買える。4駆で屋根開きっていうのは、相当贅沢というわけだね。



塩澤 あと2駆と4駆の違いはフロントとリアのデザインが少し変わったことだね。

村上 最初にウラカンを見たときは、ものすごくカッコよくて、もうやることがないと思えるくらい完成されたデザインだったけど、まだ手があったとは驚きだよ。

塩澤 フロントのエアインテークの形状が変わったんだけど、これはデザイン性もあるけど、ちゃんと空力とブレーキ冷却に関係してる。

村上 4駆のほうしか知らなければこれでいいけど、2駆を見ちゃうとやっぱりカッコいい。

塩澤 コレ、毎日乗れるかな?

村上 あのね、いかに乗りやすくなったからって、スーパーカーに乗るのは大変なことなんだよ。

塩澤 でも、ハードルが下がったことは間違いないよね。

村上 そうだけど、人にジロジロ見られるでしょ。それだけでも大変なことだし、迂闊な格好では乗れないわけだよ。まあ、ポルシェほど気楽ではない。実際、オオオって見られる。それが魅力でもある。

塩澤 スーパーカーのスーパーカーたる所以のひとつは間違いなくそこにある。それこそランボルギーニというブランドの魅力だよね。

村上 それはそうでしょ、だってスーパーカーっていうのは、ホントはランボルギーニのことをいったわけだからね。もっと言えばカウンタックのことだったんだよ。その末裔のウラカンが、こんなに乗りやすいクルマになったのは、革命だよ。スーパーカー革命!

話す人=村上 政(ENGINE編集長)+塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬


■ウラカンLP580-2
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4459×1924×1165mm
ホイールベース 2620mm
トレッド(前/後) 1670/1620mm
車両重量 1389kg
エンジン形式 水冷V型10気筒DOHC40バルブ
排気量 5204cc
最高出力 580ps/8000rpm
最大トルク 55.1kgm/6500rpm
変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション 後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ (前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/35R19/305/35R19
車両本体価格(税込) 2462万4000円

■ウラカンLP610-4スパイダー
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4459×1924×1180mm
ホイールベース 2620mm
トレッド(前/後) 1668/1620mm
車両重量 1542kg
エンジン形式 水冷V型10気筒DOHC40バルブ
排気量 5204cc
最高出力 610ps/8250rpm
最大トルク 57.1kgm/6500rpm
変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション 後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ (前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/30R20/305/30R20
車両本体価格(税込) 3267万円

(ENGINE2016年10月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement