2023.11.03

CARS

「こんなに気持ちのいいスパイダー、乗ったことがない!」 最新オープン・フェラーリ、ローマ・スパイダーにイタリア・サルディニア島で試乗!

最新オープン・フェラーリ、ローマ・スパイダー!

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1950年代から60年代のエレガントでシックなライフスタイルを現代に甦らせたフェラーリ・ローマに、待望のオープン・モデルが加わった。地中海に浮かぶサルディニア島のリゾート地で開かれた国際試乗会からの報告。エンジン編集長のムラカミがリポートする。

フェラーリの凄さとは?

いきなり核心の話を少々。12月号の巻頭特集では、「未来のクルマ」の代表選手として、SF90ストラダーレと296GTBの2台を取り上げているが、そういう未来を見据えたプラグイン・ハイブリッド・モデルを積極的に出してくる一方で、このローマ・スパイダーのような古き良き時代に逆戻りする内燃機関のFRモデルを、しかも昔懐かしい幌屋根を被せてサラッと出してくるところが、もっかのフェラーリの凄さ、あるいは懐の深さを象徴していると私は強く思うのだ。なにしろ、フェラーリがFRのオープンカーを幌屋根で出すのは、1969年に登場した365GTS4、あのデイトナ・スパイダー以来実に54年ぶりのことだというのだから、ずいぶんと時間のネジを巻き戻したものである。



未来を向くことと過去を振り返ること、そのどちらがいいか、が問題なのではない。どちらもある、ことこそが、これからの多様性の時代のラグジュアリー・スポーツカーの世界には必要だ、と私は言いたいのだが、その議論は特集にまかせて、ここでは振り返る方、すなわちローマ・スパイダーが甦らせた、1950年代から60年代の飛び切りエレガントでシックなライフスタイルの世界にどっぷりと浸かることにしたい。

ちょっと寂れたリゾート地で

舞台はローマならぬサルディニア島。私はこれまでも様々なメーカーの試乗会でこの島を訪れているが、行くのはいつも北部の、この十数年の間に開発されたリゾート地だった。ところが今回は初めて南部のカリアリ空港に降り立つと、連れて行かれたのは、ちょっと寂れた感じも漂う、古くからある別荘地。フェラーリの広報担当者氏によれば、新しいホテルが建ち並ぶ場所ではなく、こういう隠れ家みたいなところにこそ、本当の金持ちはやってくるのだという。

その地区の一番奥にあるゴルフ場付きホテルの前に並べられていたローマ・スパイダーのボディ・カラーは2色。「チェレステ・トレビ」すなわち“トレビの泉の空色”と名づけられた薄いブルーと、今回、私が試乗することになった「ロッソ・ポルトフィーノ」すなわち、フェラーリ・ポルトフィーノがデビューした時に新たに設定されたイタリア・リビエラ産の高級ワインを連想させる濃く鮮やかな赤だった。



どちらも、このエレガントでシックな雰囲気を漂わせた美しいボディにぴったり合う色合いだったが、それに加えて、今回新たに吟味を重ねたファブリック素材で仕立てたという繊細な色と質感を持つソフト・トップが、ロング・ノーズ、ショートデッキの古典的なFRスポーツカーのプロポーションを持つこのスパイダーの優雅さをさらに引き立てている。ルーフを閉じた時のシルエットはクーペと同じ流れるような美しささを持ちながら、ボディとルーフで異なる素材が使われていることが、さりげなく、けれど決定的なオシャレ感をもたらしているのだ。

最後のリアからの写真でわかるように、ルーフを開けた時に、同じファブリック素材を使ったトノー・カバーが格納されたルーフの上にフタをするようになっているのも、実に心憎い演出だと思った。オープン時にも常にボディとは異なる素材のファブリックをチラッと見せていることが、このスパイダーの優雅さを、やはりさりげなく,けれど決定的に釀しだしている。



こういうオシャレ感は、リトラクタブル・ハードトップのオープンカーでは絶対に出せないものだ。実はフェラーリはポルトフィーノMの生産をすでに終了しているという。ミドシップのオープン・モデルが、いつしか幌屋根からモダンなハード・トップに切り替わったのとは逆に、FRオープンはいま、クラシックな幌屋根スタイルに回帰したわけだ。

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