2023.06.22

CARS

乗ってびっくり! ちょっと古いスポーツカーの掘り出し物!! 最後のライトウェイト・スポーツ・フェラーリ F355ベルリネッタに試乗!

BMW Z8とZ1、フェラーリF355ベルリネッタに試乗!

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今回紹介するちょっと古いクルマは、1990~2000年代の3台の2座スポーツカー。ちょっと変わったBMWの2台の新旧ロードスターと、いわば王道のフェラーリのクーペだ。現役当時を思い出しながら、モータージャーナリストの島下泰久とエンジン編集部のムラカミ編集長とウエダの3人が試乗した。前回の「BMW Z8篇」に続いて、今回はフェラーリF355のビカモンをお送りする。◆【BMW Z8篇】から読む場合はこちらから!

新旧いいとこ取り

島下 次はF355。これは皆の大好きなフェラーリのド真ん中ですよね。

村上 2000年以前のフェラーリに初めて乗りました。360モデナ以降はV8モデルは全部乗ったことはあるけど、それ以前のはV8もV12も何にも乗ったことがない。

F355はV8ミドシップ・フェラーリとしてはリトラクタブル・ヘッドライトを採用した最後のモデルとなる。先代の348よりもスタイリングはやや丸みを帯びた。

上田 それはまた、今日は濃い経験をした日でしたね。

村上 あまりにも濃いクルマでビックリしましたよ。フェラーリのエンジンってこんなに濃いんだって。今のヒュンヒュン回るのとはまるで違う、ウォーって腹の底から湧き上がってくるみたいなエンジンだね。

上田 こんなに機械機械して、味が濃いものだったの? って思いましたね。もっと洗練されたクルマ、という記憶でした。

村上 正直言って、生産年は1997年だけど、それよりも、もっと古いクルマっていう印象を受けた。

上田 そうかもしれません。分けるとすれば、F355まではクラシックで、360モデナ以降はモダンですよね。間違いなくあそこで何か大きく変わった。



島下 昔乗ったのはもっとエンジンがプワオーンって響くようなイメージだったんだけど、もしかしたらそれは当時、人気だったキダスペシャルのマフラーだったのかも?

村上 僕も耳学問で聞いていたのは、F355といえば音、サウンドだっていう感じだったよ。

島下 でも今日の試乗車は正直、こんなにジェントルなの? って思いました。排気音よりメカノイズの方が先に来る感じで、こんなに繊細なエンジンだったんだって。でも回していくと、それが野太く変化していくんですよ。

パワーステアリング(ZF製)や電子制御式の可変ダンパーなど、ロード・ユース向けの各種装備が投入されるようになったのもF355からだ。

村上 あとはやっぱり軽かったよね。ちっちゃくて。

島下 最新フェラーリに比べたらライトウェイト・スポーツカーですね。

村上 ステアリングを切った時の動きが、もう軽い。ビックリした。このくらいのがちょうどいいのかな、って思うくらいだよね。大きさ的にも運転しやすい。

島下 F355を開発しているときには、おそらく次の360モデナの匂いは社内にはしていたはず。それに先行して、モンテゼーモロ主導のデイリー・フェラーリみたいな考えが入ってきている。パワー・ステアリングやABSだったり。

上田 2ペダルのF1マチックとか。

島下 それらも運転しやすさに繋がっているんだけれど、一方で308からの進化系でもあるから、時代の狭間で味が濃いのかもしれない。

上田 ちょうど両方のいいところを持っている、みたいな。日々乗ることを考えたらF355が現代の路上ではギリギリでしょう。

試乗車のベルリネッタのほか、デタッチャブル式トップを備えるGTS、ソフト・トップのスパイダーの3モデルが投入された。

島下 348以前のパワー・ステアリングもないようなヤツは、今の感覚で普通にとはいかないからね。911で言ったら993や964。やっぱり89年以前の911になると、それなりに覚悟が要るみたいな。

村上 でも僕の本音でいっちゃうと、ポルシェでも993よりも996のほうが実は好きなんだよ。993には皆がいうほどシンパシーはなくて。それと同じで、正直今日乗っていい経験ができたけれど、好き嫌いでいうと360モデナ以降の、とりわけ430スクーデリアくらいがいちばんイイけどね。やっぱりF355までは特殊なクルマだよね。

島下 一般人が買うことが考えられない時代の最後じゃないですか。赤帽で稼いでフェラーリを買いました、みたいなことが雑誌で記事になるような時代。今は言ってみれば誰でも買えるじゃないですか。

上田 中古でもそうだと思いますよ。誰もがお金を出せば買えるものじゃなかった。ドグマとでもいうのかな。そういうものを持っていて、何かを超えないと買えないものだった。そこが良かったんだけど。

村上 だからF355に乗って、360モデナにもう1回乗りたくなった。



島下 また見え方が変わりそうですよね。F355は言ってみればライトウェイト・スポーツ・フェラーリの最後みたいな感じで。360モデナからはミドルクラスGTになる。うん、あの軽やかさが、改めて今乗る趣味車にはいいなと思いました。

村上 剛性なんかはぜんぜん足らないんだけど。もうぜんぜん。あれで屋根の開くGTSやスパイダーはそうとう厳しいでしょうね。

上田 F355までは鋼管フレーム、360モデナ以降はアルミのモノコックですからね。

島下 昔はフェラーリに乗るなら絶対、屋根の閉じたものを、と思いましたが、どうせもう緩いから、むしろGTSとかスパイダーでゆったり夜の首都高でもドライブしたい。F355も年月を経てそういう存在になったな、と思いました。今のフェラーリの素晴らしさも知っていながら、こういう時代もあったよね、と慈しむ存在というか。

村上 僕も同じ感想に近いかもしれないな。360モデナ以降しか知らなかったから、あぁ、フェラーリにもこんなにクラシックな感じがあったんだって思って。

島下 正直、テスタロッサとかデイトナとかって色々な意味で簡単に乗れないじゃないですか。

村上 だから、やっぱり“ちょっと”古いクルマ、なんだよ。

◆この続き、【BMW Z1篇】で!

話す人=島下泰久(まとめも)+村上 政(ENGINE編集長)+上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=郡 大二郎 協力=スクーデリア46



■フェラーリF355ベルリネッタ
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4250mm×1900mm×1170mm
ホイールベース 2450mm
車両重量 1440kg
エンジン 水冷V型8気筒DOHC
排気量 3495cc
最高出力 380ps /8200rpm
最大トルク 36.7kgm/5800rpm
トランスミッション 6段MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン
       (後) ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前) 通気冷却式ディスク
    (後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 225/45ZR18/265/40ZR18
発表時車両本体価格 1490万円

▶「ちょっと古いクルマが面白い!」の記事をもっと見る
(ENGINE2023年7月号)

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