2023.11.18

CARS

ついにバッテリーEVになったBMW5シリーズ「i5」に、モータージャーナリストの島下泰久がポルトガルで試乗! i5が見せた新しい“駆けぬける歓び”とは?

EVになった新型5シリーズ、i5にポルトガルで試乗!

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しっとりした上質な乗り心地

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まず乗ったのはBEVのエントリーに位置づけられるi5eDrive40。本国スペックでは最高出力340ps、最大トルク430Nmの電気モーターで後輪を駆動する。バッテリー容量は81.2kWh、最大航続距離は497~582kmとされる。

これだけのスペックを誇るだけに、動力性能は不満がないどころか、積極的に速いと評せるレベルにある。遅れのないレスポンスでクルマを前に進ませる一方で、いきなり蹴飛ばされるような品の無い加速感になっていないのは、さすがBMW。常用域の扱いやすさ、加速の伸び感など内燃エンジン車に対して違和感の無いドライバビリティを実現している。

驚かされたのは乗り心地の良さ。しっとりとした上質感は、21インチ・タイヤ装着が信じられないほどだ。試乗車はインテグレイテッド・アクティブステアリングと可変ダンピング・システムを組み合わせたアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルを装着していたが、要因はそれだけでは無いはず。そう思ってリアフェンダーの内側を覗くとと、実は後輪だけエアサスペンションが装備されていた。車重増加に対応するべく、標準装備とされているのだ。

一方で走りに関して言えば、ステアリングの手応え感が希薄でクルマとの一体感が得られにくいと感じた。後輪駆動らしい蹴り出し感もなく全体に無機質なタッチなのである。

i5 M60 xDriveは外装にブラックパネル化されたキドニーグリル、トランクスポイラー、専用ディフューザーなどを装備。内装にはセンターマーク付きのステアリングホイール、メリノレザー・シートを採用する。


ではMパフォーマンスモデルならどうだろうか?

続いて試したi5M60xDriveは前後2モーターを搭載し、合計最高出力601ps、最大トルク820Nmを獲得している。0-100km/h加速はeDrive40の6.0秒に対して3.8秒。文句なしの俊足ランナーだ。

よって加速の凄まじさは想定内だったが、その質には唸らされた。立ち上がりからホイールスピンなど一切させることなく、スムーズに且つ豪快に速度を高めていくのである。

BMWアイコニックサウンドなる電子音もいいスパイスになっている。電子音と言ってもSF映画の宇宙船のようなヘンに未来的なものではなく、アクセルの踏み込み量や速度の伸びにリンクして奏でられるそれは、思わずもっと踏みたい!

という気分にさせる仕上がり。ストレートシックスの代わりになるかはともかく、快感はしっかり得られる。



狙いはハイスピードクルーザー

ステアリングホイール左側の「BOOST」と書かれたパドルを引くと、10秒間に限りフルトルクを炸裂させることもできる。802Nmはやはり尋常ではなく、ワインディングロードではさすがにこれはアブないと縮み上がるほどだった。

シャシーは8mmローダウンで、先のアクティブステアリングが標準。試乗車には更にアクティブロールスタビリゼーション付きのアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルが装着されていた。

こちらの操舵感は十分に生々しく、クルマとの一体感を得て安心してハイペースを維持できる。姿勢変化の抑え込みが効いているのか、嵩む車重をほとんど意識させないのも見事だが、それはeDrive40の場合と同じく、イキイキとした反応に欠けるという感触に繋がってもいる。



狙いはハンドリングコンシャスというよりも、ハイスピードクルーザーといったところなのだろう。そう捉えるならば、高速道路での安定感、安心感、そして必要とあればいつでも高いパフォーマンスを引き出せる余裕には、紛れもない歓びがあった。

i5で感じたのは、BEVでも内燃エンジン車と同様の走りの歓びを提供するというより、クルマの電動化、知能化が進む中での新しい「駆けぬける歓び」を意欲的に開拓する姿勢である。すべてに納得できたわけではないが、まだその全貌が見えたとも思っていない。日本でも程なく試乗が叶う予定なので、結論は、それらを試した後に下したい。

文=島下泰久 写真=BMW A.G.

■BMWi5eDrive40

駆動方式 後1モーター後輪駆動
全長×全幅×全高 5060×1900×1515mm
ホイールベース 2995mm
トレッド(前/後) 1680/1716mm
車両重量(EU) 2205kg
バッテリー容量 81.2kWh
走行距離(WLTP) 497-582km
最高出力(システム計) 340ps
最大トルク(ブースト時) 400(430)Nm
トランスミッション 1段固定式
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(標準) (前後)245/45R19
車両本体価格(税込み) 998万円

■BMWi5M60xDrive
駆動方式 前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 5060×1900×1505mm
ホイールベース 2995mm
トレッド(前/後) 1692/1716mm
車両重量(EU) 2380kg
バッテリー容量 81.2kWh
走行距離(WLTP) 455-516km
最高出力(システム計) 前261+後340(601)ps
最大トルク(ブースト時) 前365+後430(820)Nm
トランスミッション 1段固定式
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(標準) (前)245/45R19 (後)275/40R19
車両本体価格(税込み) 1548万円

(ENGINE2023年12月号)

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