2023.11.11

CARS

いまEVは買いか? それとも待か? ボルボC40リチャージのデキやいかに?! 売れ筋の欧州とアジアのコンパクトBEV4台に国沢光宏が試乗!!

ボルボの世界戦略車、C40リチャージに国沢光宏が試乗!

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いま新車購入を考えたとき、電気自動車が候補になる人も多いだろう。でも、EVはいま本当に買いなのか? あるいは買っていいのか? それとも待ちなのか? その疑問に答えを出すべく、現実的に購入対象になりそうな価格帯の輸入車EVを集めてあらためて乗ってみた。エンジンから電気へと舵を切るヨーロッパ・ブランドのボルボからはC40リチャージとフィアット500e、新興アジア・ブランドからはヒョンデのアイオニック5とBYDのATTO3の実用小型電気自動車4台をモータージャーナリストの国沢光宏がテストした。今回はその一本目として、ボルボC40リチャージを取り上げる。

電池の違いで将来性がまったく違う!

世の中、電気自動車を考えなくちゃならない状況になってきた。エンジン誌を読んでいるような読者諸兄は当然ながら周囲からクルマ通だと思われていることだろう。「電気自動車ってどうですか?」という質問を受ける機会だって増えてくるんじゃなかろうか。クルマ通として「全然知らないです」だと少しばかり面白くないかと。ということで、比較的手頃な御予算で購入出来る電気自動車を紹介しつつ、最新の状況を紹介してみたい。最後まで読んで頂ければ、電気自動車についての理解が少し深まると思います。



まず現在電気自動車に搭載されている電池だけれど、決定的な違いを持つ2つのタイプがある。最も普及しているのが「三元系」(NMC)と呼ばれるリチウムイオン電池となり、ニッケルやマンガン、コバルトを正極に使う。一般的に言われる「リチウムイオン電池」で、高性能ながら燃える可能性を持ち、充放電回数にして700回ほどで性能劣化が顕著になる。もう一つは「リン酸鉄」(LFP)と呼ばれる鉄系の素材を正極に使っているタイプ。燃えず、充放電回数3000回以上の寿命を持つ。今後増えて行くと思う。

リン酸鉄はこれまで三元系と比べ性能的に低いと言われてきたものの、中国企業が新しい技術を続々と投入し、今や三元系に負けない性能を持ちながら、燃えず寿命長く安価という理想的な電気自動車用の電池になってきた。BYDのATTO3はリン酸鉄で、メルセデス・ベンツやトヨタなども続々とリン酸鉄の電池を採用し始めている。三元系の電池を使うモデルは電気自動車のステレオ・タイプの弱点を持つのに対し、リン酸鉄電池は寿命が無制限に近く、燃えず、稀少な素材も使っておらず。今後の主流はリン酸鉄ですね。

ここまで読んで「圧倒的に高い性能を持つと言われる全固体電池はどうなる?」と思う人もいることだろう。数年で実用化される可能性も出てきたけれど、おそらく高価。1000万円以上する高価格帯の電気自動車用だと考えていい。今回試乗した500万円~700万円級以下の電気自動車が採用する時代は2040年以降になると考えていい。ウンチクの最後にもう一つ。電池容量は1kWhをガソリン1リッターに置き換えると解りやすい。大雑把に言ってDセグで1kWhあたり5km/kWh台。Cセグ級だと6km/kWh台走ると考えれば間違いないです。

ボルボの世界戦略車、C40リチャージ

2030年に全ての市販車を電気自動車にすると発表したのがボルボ。Cセグに属すC40リチャージはボルボにとって最初の世界戦略車である。電池容量73kWh(三元系)で、カタログ航続距離590km(C40に限らず実用航続距離は7掛けくらいで考えたら間違いなし。C40だと約400km)。238psのモーターで後輪を駆動。電気自動車の性能的な指針になることが多い0~100km/h加速が7.3秒。いろんな意味で欧州の平均的なスペックを持った電気自動車だと思っていい。今回の試乗車は739万円。



加速感は過不足無し。自然に走ってくれる、と言い換えてもよかろう。電気自動車の制御ノウハウや駆動系の工作精度の高さが出る「アクセルのベタ踏み→完全オフ→ベタ踏みの繰り返し」を試してみたら、滑らかでいながらタイムラグはなし。完成度が高い。興味深いのは「停止からのアクセル全開」と「40km/hくらいで流しているときのアクセル全開」では加速感が違うこと。後者の方が力強いです。実際、停止からのアクセル全開でフルパワー出したってホイールスピンするばかり。

無駄な装飾が一切なくシンプルでクリーンな印象を与えるボルボC40リチャージ。これぞ北欧デザインといった感じで、どんな人でも嫌悪感を抱かない外観だ。コクピットも外観同様スッキリとした印象を与える。スターター・スイッチはなく、ブレーキを踏みDレンジに入れ、ペダルを踏み変えれば発進する。


乗り心地は良好。実用航続距離も400kmあれば、よほど遠くまで行くんじゃない限り十分だと思う。ただ「個性的か?」とか「クルマの魅力を感じるか?」と聞かれたら困る。「凄く速いね感!」は0~100km/hで5秒を切ったあたりじゃないと出てこないし、強力なインパクトもない。価格は699万円からとリーズナブルとは言えないが、ボルボにとって最初の電気自動車ということからお客さんには好評なようだ。日本での手応えも十分だという。ボルボの本格的な電気自動車攻勢はEX30から始まるのだろう。

◆続いてフィアット500eはどうなのか? 人気のコンパクトEVの評価やいかに!

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正


■ボルボC40リチャージ・アルティメイト・シングルモーター
駆動方式 リアモーター後輪駆動
全長×全幅×全高 4440×1875×1595mm
ホイールベース 2700mm
車両重量 2010kg
最高出力 238ps/4000~5000rpm
最大トルク 418Nm/1000rpm
バッテリー形式 リチウムイオン
バッテリー容量 73kWh
航続距離 590km
サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル
サスペンション 後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前&後 235/45R20 255/45R20
車両本体価格 739万円

(ENGINE2023年12月号)

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