クルマ好きが愛してやまないブランドのクルマの2台持ちに憧れるように、時計も好きなブランドのペア持ちを楽しみたい。2024年冬の時計特集は、「アイディアル・ペア~理想の2本を探せ!~」と題して、同じブランドを贅沢に2本持ちして、着け替える楽しみを提案する。編集部が信頼するエンジン時計委員会のメンバーには、組み合わせの妙を楽しむ時計の選び方を指南してもらった。人気の18ブランドから最高の組み合わせを見つけて欲しい。
時刻を音で告げる機構と芸術的な仕上げ。ブレゲの伝統と圧倒的な技術力が光る「MINUTE REPEATER」×「MUSIC BOX」のスペシャルペアは、眺めるだけで満たされる、もはや美術品である。
◆MINUTE REPEATER◆
クラシックミニッツリピーター 7637
ゴングスプリングの開発やリピーター機構の改善などでも大きな功績を残した創業者アブラアン-ルイ・ブレゲへのオマージュ。搭載するミニッツリピーターは、時刻を時・クォーター(15分)・1分単位に変換し、音で告げるスタンダードな機構だが、ゴングの素材にゴールドを用い、さらにそれをローズゴールドのミドルケースに取り付け、ゴングとケースが一体になって豊かなソノリティを実現するブレゲ特許の方式を採用。かつての懐中時計に通じるブレゲ数字を配したブラックダイアルはグランフー・エナメルによる芸術的な仕上がり。手巻きムーブメントにも手彫りの装飾。ケース直径42mm。3589万3000円。
◆MUSIC BOX◆
クラシック 7800 “ミュージカル”
ダイアル中央にブルースティールによる時針と分針、ト音記号を配したアラーム針、3時位置にパワーリザーブ表示、9時と10時の間の窓に演奏のアラームのオン/オフ表示を配置。アラームとして機能するブレゲ特許のミュージカル機構は、15本の櫛歯を配したダイアル中央部のギヨシェ彫りディスクが20秒から25秒間で1回転してJ.S.バッハの管弦楽組曲第2番から最終曲「バディヌリー」を奏でる。任意でメロディのみを作動させることも可能だ。リキッドメタルの反響膜による音響の増幅とケースの防水性の両立にも最新技術を駆使する。自動巻き。ローズゴールド、ケース直径48mm。3気圧防水。1360万7000円。
◆エンジン時計委員が指南! これが「ブレゲ」のペア選び◆
目と耳で愉しむ革新性
リング状のリピーター用ゴングは、1783年にアブラアン-ルイ・ブレゲによって発明された。その227年後、ブレゲの後継者はオルゴールウォッチの調速装置(ガバナー)に機械式時計の大敵である磁力を応用してみせた。この2本には、初代と現代のブレゲによる革新性が潜む。チャイミング機構において最も長い経験を持つブレゲは、音響効果を深く考察し、時打ちの鐘の音も、80秒間のクラシックも、心が震えるほど美しい音色を実現した。さらにそれぞれのダイアルは、グランフー・エナメルとギヨシェという伝統的な工芸技巧を注ぎ込み、音色に負けない美を織り成している。音と見た目の美しさ、そして革新性。ブレゲの神髄が腕と耳に誇れる。(時計ジャーナリスト・高木教雄)
目覚めはバッハで
はまったら最後、キリのない趣味にオーディオがある。最良の音を果てしなく追い求め、音響器機に金額を費やしても、理想にたどりつくことは難しいらしい。高度な複雑時計の分野でも良い音の研究開発は今なお続いていて、伝統的なリピーターやソヌリなどの「鳴り物」では科学的な音響分析によるベストソリューションの探求が盛んだ。ブレゲのミニッツリピーターとミュージカルウォッチはその成果の一端。とくに後者はディスク式オルゴールの原理を応用し、音楽と視覚の両方で楽しませる超小型オーディオなんだよね。しかも目覚めの音はオルゴールが奏でるバッハという至福。こんな時計の沼にはまって悦に入りたいと思うと、怖い、怖い! (時計ジャーナリスト・菅原 茂)
時計で気分をコントール
ミニッツリピーターはキンキンと響く打音によって時を知らせる。否応なく現在時刻がわかってしまう。翻って『ミュージカル』は音楽を奏でる。ダイアル裏の突起が回転し、オルゴールのようにメロディを紡ぐのだ。演奏されるのはバロックの巨匠バッハである。ちなみに研究によると、バロック音楽を聞くと脳波が変化し、ストレスや不安が軽減するという。バロックは自然界のリズム「1/fゆらぎ」を含んでいるかららしい。そこで2本を使い分けるならば、臨戦態勢に入りたいときに前者、リラックスしたいときに後者ということになる。時計で自らの気分をコントロールするのだ。しかし私の場合は、どちらも値札を見ただけで心臓がドキドキしてしまうけれど。(「THE RAKE JAPAN」編集長・松尾健太郎)
美術コレクターの域
同一ブランドでチャイミング機構を持つ2本の時計をペアで持つなんて、もはや美術コレクターの域でしょう。しかも片やミニッツリピーター、こなたミュージカルウォッチ。風流韻事を好む通人としてはもう完璧なペアだ。気になるのはどうやって着けて楽しむかだが、ミュージカルウォッチの方はやはりその機構の複雑さゆえに、そこそこサイズが大きい。ケース直径は48mm、厚みは16.3mmあるので、意外とオフタイムのリラックスした着こなしがしっくりと馴染むのではないか。ミニッツリピーターの方は伝統的なデザインコードを踏襲したエレガントな顔立ちであるから、スーツやタキシードなどかっちりとした装いに合わせれば、これはもう鉄板だ。(ジュエリー&時計ジャーナリスト・本間恵子)
写真=岡村昌宏
問い合わせ=ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
(ENGINE2024年1月号)
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