2023.12.25

CARS

急遽つくったセダンの完成度にびっくり! 遅れてやって来た王道、新型クラウン・セダンに自動車評論家の国沢光宏が試乗! ドイツ車に負けていない!!

トヨタ・クラウン・セダンHEV

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セダン劣勢の市場状況を受け、クロスオーバーへの転向を図ったものの、「セダンがいい」という声は大きく、セダンも揃えることになった新型クラウン。それにしても、急遽つくったとは思えぬ高い完成度にトヨタの底力を感じざるを得ない。モータージャーナリストの国沢光宏がリポートする。

1年遅れのデビュー

売れなかった15代目のクラウンを見たトヨタは「もうセダンの時代じゃない」と判断。16代目のクラウンをクロスオーバー・ボディにした。しかし! クラウン=セダンという古くからの顧客が多かったそうな。そこで急遽セダンの開発に着手。1年遅れてのデビューとなった。このクルマの面白さは「パワーユニットを燃料電池と2.5リッターのハイブリッドから選べる」ことにある。両方選べるクルマ、今までなかった。価格を見ると補助を金使うと燃料電池の方が安くなる。果たしてどんな違いがあるのかワクワクしながら乗り比べてみた次第。ちなみに受注はハイブリッド車の方が多いそうな。



結論から書くと、クルマとしての完成度や質感は圧倒的に燃料電池の勝ち! いや、正確に書くとハイブリッドだって決して悪くない。ハイブリッド車の中で評価すれば静かでパワフルで上質です。されど燃料電池ときたら、滑らかさでもドライバビリティ(特に追い越し加速)でも静粛性でもお話にならないほど良い。乗り比べたら迷う余が地無いほど。じゃなんでハイブリッドが売れるかと言えば、理由はひとつ。水素ステーションの少なさにある(稼働時間の短さや故障、点検なども多く使い勝手悪い)。このあたりは後日公開予定のクラウン・セダン燃料電池車の試乗レポートで詳しく。

インパネはほかのクラウンと同じ意匠。


乗り心地が素晴らしい

ということでクラウン・セダンのアウトラインを紹介しておく。トヨタ・ミライのホイールベースを80mm伸ばし居住空間を確保。結果、全長5030mm×全幅1890mmと、15代目のクラウンよりふた回りくらい大きくなった。弱点として指摘しておきたいのはリア・シートへのアクセス。レクサスLSから始まった「TNGA GA-L」プラットフォームに共通するのだけれどルーフ高が低くシート位置が高いため、183cmの私だと乗降にすら苦労するほど。加えてLSもミライもリア・シートのヘッドクリアランスに余裕がない。レッグスペースこそ余裕があるも、常時アタマとルーフが微接触する。クラウン・セダンを考えているならこの点のみ留意して頂きたい。

 シートはナッパレザー表皮で、後席にはリクライニングとマッサージ機能が備わる。


ハイブリッドは後輪駆動用に開発されたマルチステージと呼ばれるシステムだ。FFのクラウン・スポーツに使われているTHS-IIは動力分配の遊星ギアのみだが、FRベースのクラウン・セダンに搭載されるマルチステージにはさらに4段の変速機が加わる。コストアップになるものの、幅広い速度域で高い出力域を使えるというメリットを持つ。普通のアクセル開度だと「ほぼ」解らないが、全開加速ではトルコンATのように明確に変速している。ちなみにクラウン・スポーツと同じ4気筒2.5リッターを使うが、システム出力は245馬力となり11馬力ほど高い。

ハイブリッドの価格は730万円。


車重は2020kgで軽くないものの、けっこう気持ち良く走ってくれる。WLTC燃費は18km/リッター。実用燃費だと15~16km/リッターをイメージすればいいと思う。高く評価できるのが乗り心地。トヨタ車の中でミライの乗り心地の良さは突出しており、共通アーキテクチャーを使うクラウン・セダンだって素晴らしい。ミライにも言えることながら、19インチ仕様だとメルセデスやBMWなどドイツ車と比べたって負けていないと思う。前述したリア・シートの乗り降り&居住性が許容できるのなら、魅力的なセダンである。

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正

(ENGINE2024年2・3月号)

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