2023.12.27

CARS

「これは是非、全開にして欲しいクルマ!」 クラウン・スポーツに自動車評論家の国沢光宏が試乗! 注文殺到で商談中止!?

オーダー殺到で商談中止のクラウン・スポーツ。

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16代目で大改革を行った新生クラウン、その第2弾として登場したスポーツ。いい意味でこれまでのクラウンとは一線を画すスタイリングが功を奏したのか、発売直後から注文が殺到、商談中止になるほどの人気を博しているようだ。モータージャーナリストの国沢光宏がリポートする。

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発売と同時にオーダー殺到

クラウン・スポーツがトヨタの予想をはるかに超える受注状況になっている。あまり知られていないことながら新型車を開発する際、一番重要なのは販売目標。台数次第で生産コストも決まってくるし(当然ながら多い方が安価になる)、工場の生産キャパシティだって決まる。クラウン・スポーツも販売目標を立てていたことだろう。なのに発売と同時にオーダー殺到になり、あっと言う間に商談を中止しなければならなくなったそうな。ちなみにグレードは4WDのフル装備車だけ。「前輪駆動車やベーシック・グレードを用意しても生産が追いつかないだろう」と思った? 発表直前になってヒットを予見したのかも。

インパネは2つの大型液晶パネルを用いたクラウン共通のデザイン。

パワーユニットはハリアーなどと同じ2.5リッターのハイブリッドしか設定されていない(遠からずハリアーPHEVのように電池をたくさん搭載するプラグイン・ハイブリッドも追加されるとアナウンスされている)。試乗すると文句なし! 興味深いことにハイブリッドにもかかわらず、2.5リッターの4気筒は良い意味でエンジンの存在をハッキリと感じさせる。プリウスなどに搭載される1.8リッターのハイブリッドであれば、走り出すと「気持ち良い」と言えない「くぐもったエンジン音」に支配されてしまう。「エンジン掛はからなければいいのに」とさえ思う。

本革表皮のシートは黒のほかに、ベージュの設定もある。


クラウン・スポーツの2.5リッターエンジン、全開で加速したら「カーン!」という澄んだ音を出しながら気持ちよ~く回る。普通のエンジン車の最高出力に相当する「エンジンとモーターの合計となるシステム出力」は234ps。低回転域で太いトルクを出すモーターの特性が強く出るため、3リッターのターボなしと同じくらいの動力性能をイメージして頂ければ間違いない。クラウン・スポーツに試乗したら、ぜひ全開加速を試して頂きたく。けっこう楽しいです。もちろん普通に街中を走る程度のアクセル開度であれば静粛性も高く、実用燃費は限りなく20km/リッターに近い。



乗り心地はドイツ車に勝る

ハンドリングを含めたシャシー性能も優れている。後輪はモーターだけで駆動させているのだけれど、コーナリング時の特性を「安定」でなく「スポーティ」に振っている。コーナーの立ち上がりでアクセルを踏むと、後輪の駆動力を強めにして後輪駆動車のようなステアリング・フィールにしているのだった。はたまた21インチという大きくて重いタイヤ(標準装備。ミシュラン製)を履きながら、ドタバタしない乗り心地を実現している。同じサイズのメルセデスやBMWのSUVと比べても質感で勝るほど。乗り心地の安っぽさで国産車に乗ると失望する諸兄だって納得できると思う。



強いて言えばインテリアをもう少し上質にしてくれたら(硬い樹脂の面積が大きい)一段と満足度が高まる。そこまでやったらレクサスの領域に入ってしまうということなのかもしれません。価格は590万円で決して安くないレンジながら、同じカテゴリーの輸入車と比べたらお買い得感は高い。今の日本を見ていると2極化の方向に向かっているように思う。勝ち組はコストパフォーマンスの高い魅力的なクルマです。最近のトヨタ車に多く、新型車は軒並み人気爆発状態。ディーラーに行っても試乗車はあるが、商談できない状況です。

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正

(ENGINE2024年2・3月号)

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