2024.01.01

CARS

【後篇】Sクラスに勝った初めての7シリーズのi7を筆頭に、iX1、i4、XMに試乗 最近攻めてるBMWの電動モデルにイッキ乗り!

電気と相性がいいi7

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荒井 続いてi7です。

村上 僕は、今日乗ったなかで、いちばんビックリしたのがi7だった。

大谷 なんでビックリしたんですか?

村上 超高級車と電動機は、本当に相性がいいんだっていうことを痛感したから。これまで超高級車は、エンジンを使いながらクルマを静かにするとか乗り心地をよくするってことに取り組んできた。でも、電気にした途端、それらが全部実現できちゃった。「なんだ、最初から電気にしておけばよかったんじゃない」と思ったくらいです。



大谷 原動機としての静粛性や滑らかさだけでなく、低重心がもたらすスタビリティとか乗り心地の改善という意味でも、BEV化が超高級車にもたらした意義は大きいですね。

村上 電気モーターは0rpmで最大トルクを発揮するともいわれているけど、i7もすっと走り出す。あのクルマは何kgあるんだっけ?

荒井 車検証だと前が1320kg、後ろが1410kg。合計2730kgもある。重いねー。

村上 それだけ車重のあるクルマが、何ごともなかったように軽々と走り出せるのは、やっぱり電気モーターの特性があればこそでしょう。

高級感と未来感が融合した印象のある室内である。カシミア・ウールのシートはオプション。掛け心地は最高だった。後席ラウンジ・シートは至福の空間だ。


島下 i7に乗っちゃうと、たとえV8モデルでも振動が気になったりノイズがうるさく感じられたりする。「なんで、クルマってこんなにブルブル揺れているの?」って、エンジン車に乗ると思っちゃいます。その意味で、7シリーズはi7一択という気がします。

大谷 BMW自身にもそういう思いがあるから、i7を7シリーズの最上モデルに位置づけている。

島下 BEVのよさを最大限生かすために、7シリーズは風切り音などのノイズをほぼ無音といえるレベルまで抑え込んだそうです。これを実現するために、ボディの穴という穴を全部塞いだという話を開発者から聞きました。

荒井 なるほど。それだけの努力があるからこそ、ああいう出来のいいクルマになるわけね。



島下 7シリーズの開発責任者は、子供の頃に7シリーズを見て「いつか、こんなクルマを作れるような人になりたい」って思ったそうです。それでBMWに入って、本当に7シリーズを作ることになった。「これほど素晴らしい、幸せな人生はない」って言ってた。やっぱり、フラッグシップって、そういうことなんですよね。担当者も、会社としても、ひょっとするとサプライヤーも含めて「難しいけれど、7だったらやっちゃおうか」という気にさせる。試乗すると、そういう思いに溢れていることを感じますよね。

大谷 といいつつ、ライバルのメルセデスSクラスを意識するあまり、これまでの7シリーズはやや迷走気味なところもありました。

島下 そのメルセデスが、SクラスとBEVのEQSを敢えて分けてきた。いっぽうでBMWはBEV一本で開発したら、自分たちでも驚くくらいのクルマに仕上がった。

大谷 ある意味で、Sクラスに勝った初めての7シリーズがi7だったといってもいいですよね。

新しい顧客にXMを

荒井 最後はXMです。

村上 このクルマを見て最初に感じたのは、NBAっていうんだっけ? アメリカのバスケットボール選手とかが乗ったら似合いそうなデザインだと思った。

荒井 あとはラッパーとかユーチューバーとか、新しい時代のビジネスで成功した人たちね。

島下 やっぱり伝わるものですね。

荒井 え、なにが?

島下 XMを作った人は、まさにスポーツ選手に乗ってもらいたいと言っていました。要は、アンダーステイトメント(控えめ)と逆の人たち。



大谷 なるほどねえ。

島下 そういう人たちって、これまでは決まってメルセデスのG63を買っていた。じゃあ、BMWがたとえば“X8”というモデルを作ったとしても、結局はBMWのヒエラルキーからは抜け出せない。それで思い切ってMモデルだけにしたそうです。

大谷 やたら派手なデザインが印象的なXMですが、ボディも足回りもしっかり作り込まれていて、生半可なモデルではないと感じました。

村上 そう、電動化時代を迎えてもBMWは攻めたクルマ作りを忘れていない。そして、1台1台の味が全部違うし、それぞれ異なるタイプのユーザーをターゲットにしている。いっぽうで、こうやって様々なクルマを作り分けるなかで、次世代の「駆けぬける歓び」を模索しているような気がしなくもありません。



大谷 でも、模索しているわりには1台1台の完成度が高いし、どういうクルマに仕上げるかというコンセプトが明確になっている気がします。さらにいえば、そうしたコンセプトを1台のBEVとしてまとめる力もある。その意味でBMWは、電気を使ったクルマ作りを“モノにした”という印象を持ちます。

荒井 価格帯によってサイズを大きくしたり小さくしたりしただけじゃなく、味付けまで変えるというのは新しいコンセプトだよね。

大谷 かつてのドイツのプレミアムカーは、サイズにかかわらず、ブランドごとに価値や方向性が決まっていたから、数字やアルファベットだけでモデル名を表すことができた。ブランド内でデザイン言語を厳しく統一するファミリー・デザインも、そうした思想を反映したものだったといえます。裏を返せば、BMWのデザインがモデルごとに異なっているのは、モデルごとに異なるキャラクターが設定されているからと受けとめることもできますね。

荒井 うん、そうやって思い返すと、最初はブチャイクに見えた顔つきも悪くないように思えてきた!

語る人=大谷達也(まとめ)+島下泰久+村上 政(ENGINE編集長)+荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正



■i4 eDrive40 M SPORT
駆動方式 1モーター後輪駆動
全長×全幅×全高 4785×1850×1455mm
ホイールベース 2855mm
車両重量 2080kg
エンジン(BEVはバッテリー容量) 83.9kWh
排気量(BEVは航続距離) 604km
最高出力 340ps/8000rpm
最大トルク 430Nm/0~5000rpm
変速機 
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション 後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/45R18(前)255/45R18(後)
車両本体価格 848万円

■XM
駆動方式 フロント縦置き4輪駆動+モーター
全長×全幅×全高 5110×2005×1755mm
ホイールベース 3105mm
車両重量 2710kg(車検証)
エンジン(BEVはバッテリー容量) V型8気筒DOHC
排気量(BEVは航続距離) 4394cc
最高出力 システム合計480kWh/653ps
最大トルク システム合計800Nm
変速機 8段AT
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション 後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 275/35R23(前)315/30R23(後)
車両本体価格 2130万円

■i7 xDrive60
駆動方式 前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 5390×1950×1545mm
ホイールベース 3215mm
車両重量 2730kg(車検証)
エンジン(BEVはバッテリー容量) 105.7kWh
排気量(BEVは航続距離) 650km
最高出力 258ps/8000rpm
最大トルク 365Nm/0~5000rpm
変速機 
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/エア
サスペンション 後 マルチリンク/エア
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 225/40R21(前)285/35R21(後)
車両本体価格 1748万円

(ENGINE2024年1月号)

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