2024.01.05

CARS

未来のGT-Rは本当にこうなるのか? 【ジャパン・モビリティショー回顧録:日産篇】

2023年に起こった自動車関連の話題で最も注目を集めたジャパン・モビリティショー(JMS)2023。これまでの東京モーターショーから名称とコンセプトを変えて4年ぶりに行われた自動車博覧会は大きな成功を収めた。

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デジタル展示

あの興奮をもう一度ということで、メーカー別に振り返える今回の企画。第3弾はデジタル展示という新しい手法を採り入れた日産ブースを振り返る。

ハイパーアーバン

5台目のサブライズを用意

日産はジャパン・モビリティショー2023に4台のコンセプト・モデルを出展することを予告していた。しかし、そのうち2台はデジタル展示、すなわち大きな画面に表示されるだけで実車がないと聞き、気分は萎え気味だった。しかも、いまだ実用化の目処が立っていない電池技術の使用を前提にしたものもあるとなっては、絵に描いた餅ばかりだと思ってしまう。正直、出展車として数えられない対象外のモデルという気にさえなっていた。

ところが、そんな日産にはサプライズはしっかり用意されていた。未来のGT-Rを予感させるコンセプトEV、「ハイパーフォース」だ。

ハイパーフォース

未来のGT-Rを予感

エンブレムは遠目にGT-Rのエンブレムに見えるようにデザイン化されたもので、その形状や配色から明らかにGT-Rを意識しているのは明白だった。フロントまわりはR34型以降の「スカイラインGT-R」を思わせ、リアにはスカイライン以来の伝統的要素である丸型4灯のテールライトを配置していた。

全体的なスタイリングのモチーフは、1980年代のグループ5レース・マシンである「スカイライン・スーパーシルエット」だろう。後輪の直前にはスカイライン・シルエットと同世代のR30型「スカイラインRS」を思わせる金色のレタリングが入る。

ハイパーフォース

モーターの出力は1360ps

そこに記された「ASSB」は全固体電池、「アドバンストE-4ORCE」は駆動系に用いる4輪制御技術を意味する。そして、もうひとつの記述は1000kW、すなわちモーターが発生する1360psの高出力を示している。そのハイパワーを活用するため、空力設定はニスモのレーシングチームと共同開発を行なった。

インテリアはポリフォニー・デジタルと共同開発。ARやVR体験ができる専用ヘルメットで、サーキット走行ではターゲットとなるゴーストを表示して、また停車中は運転シミュレーターとして運転スキルを磨くこともできるという。そのほか、自動運転技術も採用し、スポーツドライビングだけでなく快適な移動も可能にする。

ハイパーフォース

エルグランドのデザインスタディか⁉

ハイパーフォース以外での注目株はプレミアムEVミニバンを提案する「ハイパーツアラー」だ。「エルグランド」の未来像を予感させる大胆なエクステリアは魅力的。いち早く商品化してほしいが、広々としたキャビンの構築は全固体電池の使用と小型化したコンポーネントの統合を前提としているため、この技術が実現しないとこのパッケージは成立しないことになる。

もう1台の実車展示は小型クロスオーバーEVの「ハイパーパンク」。クリエイターやアーティストなどスタイルやイノベーションを重視するユーザーがターゲットで、視角や光の当たり方で見え方が変わる塗装、あえて空力やミニマリズムの風潮に逆行した外観、現実とメタバースの融合した世界観を体験できる内装など、車名に劣らずトガったクルマに仕上げた。

ハイパーツアラー

現実味は薄いが興味深い

残る2台は、ミディアムクロスオーバーの「ハイパーアーバン」と、本格SUVの「ハイパーアドベンチャー」。どちらもEV市場の売れ線となりそうなジャンルだが、今回はデジタル展示に止まった。

今回、日産がモックアップとデジタル映像で提案した5台のショーモデルは、現実味は薄いが、スタイリングやインターフェースには興味深い点も少なくない。ただ、絢爛だがどことなく曖昧印象は拭えない。次回はより具体的に仕上がったこれらとお目にかかりたいと強く思った。

ハイパーアドベンチャー

文=関 耕一郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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