2024.01.26

CARS

内容の濃さはフルモデルチェンジ級 8段ATの追加や出力アップなど、GRヤリスが大幅にバージョン・アップ

TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ・ガズー・レーシング)は1月12日の東京オートサロン2024にて、進化した「GRヤリス」を世界初披露した。2024年春頃の発売を予定しているという。進化のポイントは多岐にわたり、ひとつひとつを詳しく紹介したらかなり長文になってしまう。そこで、絶対に外せないポイントをできるだけ詳しく解説し、そのほかは概要を紹介する。

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4WDに2ペダル仕様を設定

まずは絶対に外せない改良点から。そのひとつは新開発8段ATの「GAZOO Racing Direct Automatic Transmission」(ガズー・レーシング・ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)(以下、GR-DAT)の追加設定だ。



速く走るためのAT

「ATの搭載」と訊いて、GRヤリスもイージードライブのクルマになったかと早合点したが、そうではない。「より多くの方に走る楽しさを提供し、モータースポーツの裾野を広げたい」というトヨタ自動車の会長でもあるモリゾウ(豊田章男)氏の想いの下、「幅広いドライバーがスポーツ走行を楽しめ、レースでMTと同等に戦えるAT」を目指し開発したのが「GR-DAT」なのだという。

GR-DATはAT制御ソフトウエアをスポーツ走行用に最適化。従来は減速Gや速度などの車両挙動を感知し変速させていたところを、ブレーキの踏み込み方・抜き方・アクセル操作まで細かく感知し、車両挙動の変化が起こる前に変速が必要な場面を先読みすることで、「ドライバーの意思を汲み取るギヤ選択」を実現。プロドライバーによるシフト操作と同じようなギヤ選択を可能にした。

AT内部の変速用クラッチに高耐熱摩擦材を採用したほか、AT制御ソフトウエアの改良により、世界トップレベルの変速スピードを実現。6段MTから8段ATへ多段化した上で、クロスレシオ化することによりパワーバンドをより活かした走りを可能にした。「RZ“High performance”」には、アクセル・ペダル操作による駆動力コントロール性能を向上させるトルセンLSDを設定した。



専用デザインのコクピットを採用

次に取り上げたいのは、プロドライバーとともに視認性と操作性を磨き上げた専用コックピットだ。スーパー耐久シリーズ参戦車および全日本ラリー参戦車をモチーフに、操作パネルとディスプレイをドライバー側へ15度傾けて設置することで視認性と操作性を改善。スポーツ走行時だけなく、日常運転でも使いやすいスイッチ類の配置にもこだわった。

さらに、ドライビング・ポジションを25mm下げ、合わせてステアリング位置も調整することにより、ドライビング姿勢を改善。また、ルーム・ミラーの取り付け位置をフロントガラス上部に移動させるとともに、センター・クラスターの上端を50mm下げることで前方視界を拡大した。

またシフト・セレクターの位置を、現行の1.5リッターの前輪駆動でCVTを用いた自動変速仕様の「GRヤリスRS」と比べて75mm高い、GRヤリスのMTモデルと同等の高さに配置し、操作性を向上。また、サイド・ブレーキを活用するラリーやジムカーナを鑑み、GR-DATを搭載した車両にも手引き式パーキングブレーキを採用した。



300ps超に出力アップ

次のトピックはエンジン。モータースポーツでの戦闘力向上を目指し、出力を272ps/6500rpmからGRカローラと同じ304ps/6500rpmへ、トルクを370N・m/3000-4600rpmからGRカローラ・モリゾウエディションと同値の400N・m/3250-4600rpmへ向させた。

冷却性能を高める「クーリングパッケージ」の新設定にも触れておこう。高出力化、GR-DAT追加設定に伴い冷却性能向上が必要なため、GR-DATを搭載した車両にはATFクーラーを標準搭載。さらに、モータースポーツへの参戦を考慮しサブ・ラジエーター、クールエア・インテーク、インタークーラー・スプレーをセットにしてメーカーオプション設定した。



ドライブモード・セレクトを新設定

その他の変更点は走行モードの切り替えを、従来の駆動力を変更する「4WDモード・セレクト」に加え、スポーツ走行と日常生活での使い勝手を両立するための「ドライブモード・セレクト」を新設定。運転状況などに応じて、電動パワーステアリング、エアコン、パワートレーンの設定が可能になった。

また新設された「サーキット・モード」では、GPSによる位置判定より、サーキットなどの利用可能エリアに入るとアンチラグ制御、スピードリミッター上限速度の引き上げなど、GRヤリスのポテンシャルを引き出す機能でサーキット走行を今まで以上に楽しめるようになった。各機能はスマートフォンアプリ上で好みに合わせてカスタマイズが可能だ。



本物のラリー・カーと同じ

さらに、全日本ラリー参戦からの学びを活かして、パーキング・ブレーキ・レバーの配置変更をRCにメーカーオプション設定した。標準の位置に対して車両前方へレバーを移動することで、ステアリングとの距離を近づけ素早い操作を可能にし、またレバーの角度を立てることで引きやすさを向上し、操作時の負担を軽減した。

最後に、エクステリアは冷却性能の向上などを図るためにフロント・バンパ―形状を刷新。リアまわりもテールライトやハイマウント・ストップランプをリア・スポイラーと別体にするなどの変更が行われた。さらにボディ自体もスポット溶接の打点を増やすなど、剛性の向上が図られている。

これはもはやフルモデルチェンジといっても良いのではないか。いや、ある意味ではそれを超える価値ある進化といえよう。発売が待ち遠しい。



文=木原寛明 写真=宮門秀行、トヨタ

(ENGINE WEBオリジナル)

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