2024.02.06

CARS

STI創立20周年記念インプレッサはどんなスバルだったのか?  エンケイのホイールとカヤバのダンパーでチューニングしたレアモデル!【『エンジン』蔵出しシリーズ/スバル篇】

STI創立20周年記念インプレッサの乗り味は?

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中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回の日本車のスバルは中古車で見つけたとしたらかなりレアなモデル。2008年にスバルのモータースポーツを統括するスバルテクニカインターナショナル(STI)が登場させたスペシャル・モデル、STI創立20周年記念インプレッサを、群馬サイクルスポーツセンターのワインディングで森慶太氏がテストした2009年1月号のリポートを取り上げる。


「人車一体の曲がりっぷり STI創立20周年記念インプレッサはどんなクルマか?」ENGINE 2009年1月号

現行型のインプレッサSTIをベースにした限定モデルをSTIが出すときいて、てっきりS205かと思った。しかし違った。S205ならカルく500万円超になるところだけれど、今回のクルマの車両価格は基準車比「約30万円アップ」の412万6500円(税込み)にとどまる。

プッシュ式エンジン・スイッチ、シフト・ノブもSTI製。


エンジンは変更なし。装着タイヤもサイズ銘柄ともに変更なし(RE050AだからBSポテンザのシリーズのなかでは比較的おとなしめ?)。一見して明らかにそれとわかる大きな違いはホイール。STIモノの18インチ。同社サイトを調べたところ、それと同じと思われる製品は1本あたり4万4100円(税込み)。BBSではなくENKEI製で、鍛造ではなく鋳造。鍛造だったら倍かもっとする。オフセット53mmはベース車用のと較べて2mm小さく、そのぶんトレッドは前後ともやや拡大。カタログ記載値でいうと、それぞれ5mmずつ。同じく全高は10mmダウン。これはサスペンションのバネが専用品であることによる。やはり専用チューンのダンパーはビルシュタイン、ではなくカヤバ製のまま。そこはそれ、プラス30万円。「舶来ブランドの高価なパーツを組み込めば即クルマがよくなる、というものではないですよ」とは開発者談。



そして車体関係。まず、フロント側上下にフレキシブル・タワーバーを装着。タイヤ経由で横から入ってくる力に対してはガッチリ踏ん張ってボディのたわみ≒力の逃げを抑制する。一方前からの力(路面のゴツゴツ等は主にこの方向)に対しては突っ張らないというそのシカケのキモは、バーの中央(上側)または両端(下側)にあるピロボール(球形金属ジョイント)。上側でエンジンを支えつつ下側左右はロワ・アームの前側ピボットにもなっているクロスメンバー(ステアリングのラックもここに取り付けられる)の剛性アップにも貢献している。具体的にはアングル材、L字断面の鋼板を2点でボルト留め。リアまわりに関しては、サスペンションの横方向アームの車体側付け根部分の関節をラバー・ブッシュからボール・ジョイントに換えてある。アシをより抵抗なくキレイに、かつブレずに動かしてやるための変更だ。


運転しやすくて、独特

速さ、というかラップタイム短縮の最大の決めテである動力スペックとタイヤのグリップがベース車のままということは、すなわち大筋ファイン・チューニング仕様と考えていい。プラス30万円。STI独自の〈曲がる愉しさ〉の解釈、ないし表現はさてどれだけ入っているか。

今回は、エンジンのチューニングはなし。ボディカラーはホワイト、WRブルー、ブラックの3色が選択可能。価格は412.65万円。


ゆっくり動きだしてすぐに気がつく違いとして、第1に舵の手応えが一変。きりはじめのところのあてどない感じ(そこがコワくてカーブ手前ではついエイヤと性急に操舵してしまう)がなくなった。いい予感。ギアを2速に入れてクラッチを繋いだ際にリアのデフのマウント部あたりからカルくくるドン(気をつかって運転しても出てしまう)、もなくなった。ベース車比ハーダーかソフターかでいえばバネのテンションは体感上ハッキリ前者で、ただし路面からの雑音ならぬ雑振動の処理は明らかにこちらの仕様の車体のほうが上手い。ザワつきがなくなってスッキリと。ピシッと。それやこれやでイイモノ感大幅アップ。公道を走ったら、その乗り心地のよさ(接地性のよさの反映でもある)にあらためて驚くことになる、はず。ガツン系の強烈な入力にも強かったし。

今回は狭い低速ワインディング路のクローズド・コースで試乗。なのでいきなり曲がりまくり。とにかくよくハナが入る。グイグイと。操舵入力への応答の遅れや遅れのあとの急激な反応がなく、また後ろの踏ん張りは常にドンとばかり明瞭で、要するにコワくない。コワくないままどんどんいける。典型的なクネクネ道なのにステアリング・ホイールを右へ左へバタバタ忙しく回している実感が不思議と希薄で、なんというかオートバイでイイ感じでトバしているときのような気分にちょっとなった。そういう、人車一体感あふれる曲がりっぷり。ものすごく運転しやすくて、同時に独特。うーん、ナルホド。

文=森慶太 写真=神村聖



(ENGINE2009年1月号)

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