2024.09.24

CARS

「ロード・カーのセットアップは、公道で時間をかけて決めるんだよ」997型911タルガの国際試乗会でエンジニアが発した一言にポルシェの凄さを見た!

997型911タルガに北イタリアで試乗。

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【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2008年12月号に掲載されたポルシェ911タルガの国際試乗会のリポートを取り上げる。カレラ2とカレラ4が相次いで投入されたばかりの997型911に追加モデルの報せが届いた。タルガだ。北イタリアで試乗した。

4駆だけのタルガ

クーペがそうだったように、カブリオレがそうだったように、新しいタルガもまた、ボディの構造はこれまでの911とほとんど変わらない。大きく開くスライド式のガラス・ルーフも、ハッチとして開く便利なリアウィンドウも継承されている。

  試乗車は電子制御ダンパー付きスポーツ(ローダウン)サスペンションを組み込んだ仕様だったが、走り、乗り心地ともに◎。

大きく変わったのはパワートレインだけといってもいい。先に出たクーペやカブリオレの心臓部がそっくりそのまま、新しいタルガに移植されている。エンジンは直噴の3.6リッターと3.8リッター。ギアボックスは3ペダル6段マニュアルと2ペダルPDK。

タルガは全天候型とでもいうべきオープン・ボディゆえに冬の厳しい北欧市場やカナダなどで強く支持されていることもあって、997以降は4WDモデルのみとなったが、この新しいフェイズ2モデルでも、それは変わらない。3.6はタルガ4、3.8はタルガ4Sと呼ばれる。

で、もちろん、新型997に初めて接する僕の最大の興味は、ツインクラッチ・ギアボックスにあった。

かつてないスロウ・コースで

ミュンヘンを経由してヴェローナへ飛び、そこからバスに揺られて小1時間。着いたのはガルダ湖の西岸。小さなリゾート・ホテルを基地に、日をずらしながら数週間にわたって国際試乗会をおこなうのは、ポルシェのいつもの流儀どおり。でも、翌朝、いよいよ試乗が始まってみると、いつもとは違っていた。コースが遅い。道は狭く、高速道路を走る区間もなく、ただひたすら、行楽地をクルマの流れにのって走る。僕はまだ5回ほどしかポルシェの国際試乗会を経験していないけれど、こんなに平均速度の遅い試乗会は初めてだ。ポルシェの関係者に訊くと、近年では最も遅いコース設定だという。

 PDKのDレインジはほとんど万能といっていい。下手にマニュアル・シフトするより遥かに優れた仕事をしてみせる。脱帽だ。

「これじゃなぁ、せっかくのPDKもお楽しみ半分だよなぁ」と、ひとり胸のうちで愚痴りながら、それでもステアリングホイールについたスライドスイッチやシフトセレクターをカチャカチャやりながら、ツインクラッチ・ギアボックスを試してみる。

そこはさすがにオリジネーターの作、素晴らしく洗練された変速を電光石火でやってのける。日産GT‐Rのそれにもぜんぜん引けを取らない速さ。しかも、受容トルク容量がはるかに小さい、つまり仕事のラクなゴルフの乾式ツインクラッチ7段型のそれにも勝るスムーズな変速マナー。何度やってみても、あまりに呆気なく変速してしまうので、やってる感がない。なものだから、早々に観察を止めて、Dレインジに入れっぱなしでいくことにした。どうせ、のんびりコースなんだし。

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