2024.05.15

CARS

あなたは「極上の特上の乗り心地」を知っていますか? モータージャーナリストの今尾直樹がメルセデスAMG S63 Eパフォーマンスなど5台の輸入車に試乗! 知られざるガイシャの凄い世界

モータージャーナリストの今尾直樹さんがエンジン大試乗会で乗ったガイシャ5台とは?

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ケータハム・セブン340R「英国のスポーツカーをニッポンが元気にしている」

もうすぐ帰国してケータハム本社で仕事をするというジャスティン・ガーディナーさんから試乗前にレクチャーを受ける。長らく同社の日本の代理店でマーケティングその他を担当し、軽規格のセブンを発案したひとだ。セブン340Rは2022年発表の中堅モデルで、最高出力172psの2リッターフォード・デュラテック・エンジンを搭載する。デュラテックは生産終了前に1800基を購入、マツダ・ロードスターのNA&NB用5段MTと組み合わせる。車重540kgで1トンあたり340ps、というのが車名の由来だ。2021年に日本の企業の傘下に入ったケータハム社は工場の移転によって年産能力を500台から750台に引き上げ、現在2年の納期を短縮するという。数年前から「ワン・マン、ワン・カー」制を導入したことで生産品質も向上。新しい340Rもよさげに見える。運転してみれば、まさしくセブン! 場内のみの試乗ゆえ、3速に一瞬入っただけだけれど、加速の軽やかさと野太いサウンドに、呵呵痛快! エンスーの聖地、英国のスポーツカーをニッポンが元気にしている。これまた呵呵也!!




フィアット・ドブロ「中身は同じでも、流れているのはイタリアの血」

リアのスライド・ドアを開けて後席にバッグを置き、いざそのドアを閉めようと思ったら寸毫も動かず。押してもダメなら引いてみな……と、いろいろやってみる。閉まらん。同乗する会員の方が試してみると、あっさり閉まる。ありがたや。私には閉められないけれど、会員さんには閉められた。ガイシャにはクセがある。それが日常にささやかな喜怒哀楽をもたらす。兄弟車のシトロエン・ベルランゴとどこが違うのか? と思いながら発進。会員さんとおしゃべりしながら西湘バイパスを走る。ベルランゴと機構的には同じはずだけれど、足まわりはどことなくイタリア車っぽい。バネは記憶のなかのベルランゴ同様ソフトだけれど、ベルランゴよりストロークが抑えられていて、ダンピングが効いている。よりフラット感がある。130ps、300Nmの1.5リッター直4ディーゼル、8ATのギア比も含めてフランス勢と同じなのに、より活発に回るような気がする。走行距離が9000kmに達しているから? いやいや。中身は同じでも、流れているのはイタリアの血。それがガイシャってもんだぜ。




メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス「極上の特上、の乗り味!」

直前にケータハム・セブン340Rに乗っていた。車重560kgの超軽量小型スポーツカーから、セブンが収まるほど長い3215mmのホイールベースの、車重が車検証で2690kgもある、重量級超高級サルーンに。こういう場合、鈍重感はハンパない……と思うでしょ。ところが、違和感がまるでない。最高出力612ps、最大トルク900Nmの4リッターV8ツイン・ターボに、PHEVのモーターを組み合わせて、システム最高出力802ps、アッと驚く1430Nmのシステム最大トルクが、重くて巨大なSクラスをセブンのように軽やかに走らせる。そのスムーズさと静かさはモーターのアシストと4WDのおかげもあるだろう。回せば、V8が雄叫びをあげ、オールド・ボーイを得心させる。エア・サスによる乗り心地はふかふか。だけど、ふわふわではない。極上の特上。ドライビング・フィールは濃厚なのに、あっさりしていて胃にもたれない。セブン340Rに通じる、淡白さをあわせ持つ。さわやかなんである。これぞF1テクノロジー!? 最新鋭のAMGスリー・ポインテッド・スターはとんでもなくスゴい。




ポルシェ・カイエンSクーペ「SUVなのにポルシェ!」

SUVなのにポルシェ! そのことにあらためて感心した。ポルシェなんだから当たり前。と思うのは間違いである。かの長嶋茂雄だって、長嶋茂雄であり続けるのはたいへんだ、という意味のことを語っている。昨年上陸したカイエンSの後期型はものすごい剛性感。というのが第一印象で、ステアリングもペダルも重めで、男っぽい。22インチの前285/40、後ろ315/35のピレリPゼロがこの剛性感に寄与しているにちがいない。エンジンが2894cc V6から3996cc V8のツイン・ターボになり、最高出力が440psから474psにアップ。その一方、2チャンバーのエア・サスペンションを得て、バネ自体は意外とフワフワに感じる。山道に至り、ドライブ・モードをスポーツ、さらにスポーツ・プラスに切り替えると、脚が俄然引き締まり、V8がうなりをあげる。減速時には自動でブリッピングしながらダウンシフト。シートバックの背骨の当たる部分が硬くて痛い。自分の猫背のせいだ、と気づく。背筋をスッと伸ばし、丹田に気を込めることを意識してみる。リッパなポルシェ乗りになった気がしてニヤリ。

文=今尾直樹

(ENGINE2024年4月号)

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