2024.06.06

CARS

「走っても掛け値なしに世界最速級SUVの1台」 モータージャーナリストの佐野弘宗がBMW XMほか5台の注目輸入車に試乗!

モータージャーナリストの佐野弘宗さんが5台の注目輸入車に試乗

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BMW XM「令和の最新トレンド」

XMを目の前にすると、絶対に素通りできない。賛であれ、否であれ、だれもがひとこと言わずには立ち去れない。ひと目見た瞬間から、議論が伯仲する。この時点で、BMWがXMのデザインで目指したところは、あらかた達成されたといえるのではないか。

目の前にしたXMで最初に目につくのは、もちろん垂直にそびえる巨大八角形キドニー・グリルだが、もう1つ目が離せなくなるのは、各部の艶消しマット・ゴールド加飾だ。ちなみに、ここをすべてグロス・ブラックにすることもできるという。クルマにゴールド・メッキと聞くと「昭和の成金趣味」を想起する(私を含む)中高年もおられようが、じつはマット・ゴールドとグロス・ブラックのアクセサリーは昭和どころか、令和の最新トレンドらしい。

インテリアはエクステリアほど胸騒ぎはしないけれど、試乗車にあしらわれる使い古された風のコーヒー色ビンテージ・レザーには、中高年オヤジも思わずニヤリとさせられる。XMはもちろん走っても掛け値なしに世界最速級SUVの1台だが、走り出す前から、こうしてしたり顔で語りまくる元気をくれる。




シボレー・コルベット「フレンドリーなオーラ」

今の日本市場では生粋のスポーツ・ブランドで押しているシボレーだが、米本国での本来の姿は、民衆的なポピュラー・ブランドである。だから、1420~1800万円という価格も絶対的に安くはないけれど、きょうびのスーパーカーとしては爆安というほかない。シボレーならではのフレンドリーさは価格だけなく、デザインや使い勝手、乗り心地にも一貫する。内外デザインは一見ギミックっぽいところも多いが、実際には車両感覚はバツグンだし、コクピットまわりの人間工学も考えぬかれている。センターコンソールに縦一列のスイッチは確かに使いやすくはないが、ここにあるのは頻繁に触る必要がない空調関係のみ。ドライビング関連の機能はすべて、運転席からピタリと手の届くところに集中しているのだ。乗り心地もしかり。運動性能は完全に超一流スポーツカーなのに、乗り心地はすこぶる優しい。コルベットで走っているときに浴びせられる周囲の視線も、欧州スーパーカーでありがちな畏怖系より、もっと屈託がない気がする。この素直に元気をくれる明るいオーラは、コルベットならではだ。




フェラーリ296GTS「V6でもフェラーリ」

最新のフェラーリ・ミドシップはV6エンジン……と聞いて、条件反射的に「かつてフェラーリを名乗れるのは12気筒だけだった。しかもV6といえば、ディーノだろ?」とツッコミを入れてしまうのは、スーパーカー・ブームの洗礼を受けた50代オヤジの性(さが)である。とはいえ、この296GTB/GTSがフェラーリ製市販車としては1974年までつくれらたディーノ246GT以来のV6であることは事実だ。もっとも、その3リッター V6ターボにはモーターが組み合わせられている。830psというプラグイン・ハイブリッドのシステム出力は、前身となったF8トリブートの3.9L V8ツインターボの720psを大きくしのぐ。それゆえ、アクセルひと踏みで背中を蹴っ飛ばされたかのようにアドレナリン出まくり……なのはもちろん、乗っている人間を元気にさせるのは、その音だ。どこをどういう演出をしているのかは分からないが、中速域までは適度なツブツブ感を残しつつ、そこからはすべてが溶け合うように8500rpmまで高まっていく。ハイブリッドで8500rpmて。V6でもフェラーリはフェラーリですね。

文=佐野 弘宗

(ENGINE2024年4月号)

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