2024.06.23

CARS

どっちが狼で、どっちが羊か? ホットハッチ4WD対決! 国沢光宏がトヨタGRカローラとVWゴルフRを比較試乗!

VWゴルフR 20Years対

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武闘派のGRカローラ

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続いてGRカローラ。見る限り武闘派である! ボディは前後共に専用プレスを使ったブリスター・フェンダーだ。後付けのオーバー・フェンダーと違い、新たに金型をおこさなければならない。この点だけをとってもトヨタのホンキ度が解る。さらに標準のグリルだと冷却性能に問題が出るため、左右に広げたバンパー部分まで吸気ダクトを増設している。こいつに大きなリア・スポイラーなんか付けたら競技車両のようになるだろう。

トヨタGRカローラ・モリゾウエディションは2023年に限定70台で販売された。

近寄るとルーフが汚れているように見える。さらに近くで見たらカーボン模様ですね。ルーフの重量は普通のクルマなら気にならないレベルだけれど、サーキットやラリーで横方向のGを掛けるとイナーシャになってしまう。アルミを使うという手もあるが、剛性と重量のバランスを考えればドライ・カーボンでしょう。そいつを躊躇わず使う。言うまでもなく驚くほど高いパーツです。これまたトヨタのホンキ度の表れだ。

それだけじゃない。ボディは標準のカローラに対し349点もスポット溶接の打ち増しをした上、2.7mの接着部分を採用。今回試乗したモリゾウエディションだと接着部分を3.3mに増やし、さらにブレース(補強材)まで入れている。全日本ラリーに出場している競技車両レベルです。カーボンのルーフとボディ補強だけで200万円以上の価値を持つ。一昔前のトヨタなら考えられなかったクルマ作りである。

ステアリング・ホイール、ダッシュボード、そして専用スポーツ・シートなど黒で統一された室内はストイックな印象だ。

乗り心地が硬いGR

乗ってみよう。シートは専用のセミバケットだ。座り心地ではゴルフに一日の長がある。クラッチを踏みプッシュボタンで始動する。ゴルフより少し元気な音を出す。日本専用ということで騒音規制ギリギリまで頑張ったのだろう。こちらは6段MTだ。節度のあるギアを1速に送り込んでクラッチミートすると、おお! 武闘派です! 飛び跳ねるような硬さでこそないものの、奥さんなら「乗り心地悪いわね」というレベルかと。

このクルマ、サーキットでも試乗したが、ダンパーは標準のままでフルアタック出来るほど減衰力を持つ。競技レベルでこそないけれど、タイムアタックくらいなら全く問題なし! ちなみにモリゾウエディションはスポーツ・タイヤと、レースで使うSタイヤの中間くらいの性能を持つミシュランのパイロットスポーツCUP2を履く。少し上手な人だと筑波サーキット走って1分5秒くらい出せると思う。まさにクルマでスポーツできる。存分に楽しい!



ただここまで気合いを入れたならダンパーにもう少しお金を掛けたい。残念ながらこのレベルのクルマだと日本製のダンパーでは厳しい。ザックスあたりを使えばポルシェ911GT3や、アルピーヌA110Rのような脳天を直撃する官能的なクルマになるだろう。GRも頑張ってダンパー・メーカーを育てようとしているようだけれど、WRCやF1で使えるようにならないと上質で高い性能を持つパーツは作れないだろう。

価格は標準のGRカローラ525万円に対しモリゾウエディションだと715万円。ボディ補強やカーボン・ルーフなど装備差を考えたらリーズナブルと思えるほどだ。オプション35万2000円のマットカラーは私なら選ばない。磨きたくなる派です。そしてココまで読んで頂いた方には申し訳ないが、GRカローラはモリゾウエディションも標準車も現在受注休止中。再開されるかどうかを含め、未定とのこと。

以上、駆け足で紹介した。ゴルフRは伝統通り「羊の皮を被った狼」、GRカローラが狼丸出しの武闘派だということが理解していただけたら嬉しい。クルマでスポーツする度が高いのは、GRカローラだ。ただどうしてもデザイン的に興味が湧かない。カローラのハッチバック、トヨタのチーフ・デザイナーが代わる前の作なのだった。プリウスくらいカッコ良ければ思わず飛びつきます。プリウスにGRカローラのパワーユニット載せたら爆売れか?

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正



■VWゴルフR 20Years
駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4295×1790×1460mm
ホイールベース 2620mm
車両重量 1540kg
エンジン形式 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1984cc
最高出力 333ps/5600~6500rpm
最大トルク 420Nm/2100~5500rpm
変速機 7段自動MT
サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル
        後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前&後 235/35R19
車両本体価格 792万8000円

■トヨタGRカローラ モリゾウエディション
駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4410×1850×1475mm
ホイールベース 2640mm
車両重量 1440kg
エンジン形式 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 1618cc
最高出力 304ps/6500rpm
最大トルク 400Nm/3250~4600rpm
変速機 6段MT
サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル
        後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前&後 245/40R18
車両本体価格 715万円(販売終了)

(ENGINE2024年7月号)

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