2024.06.16

CARS

究極FFホットハッチ「最後の対決」 生産終了のルノー・メガーヌR.S.ウルティムと次は?のホンダ・シビック・タイプRの2台にモータージャーナリストの佐野弘宗が試乗!

これが最後のメガーヌRSと次はどうなるかわからないシビック・タイプRを比較試乗!

全ての画像を見る
特集:クルマでスポーツしようぜ! 第1部 試乗篇FFホットハッチの両雄、ホンダ・シビック・タイプRとルノー・メガーヌR.S.ウルティムの2台に乗って考える。磨き抜かれた逸品。ホットハッチはフロント・エンジン、フロント・ドライブに限ると信じてやまず、過去に何台もホットハッチを乗り継いだ佐野弘宗が世界最速級のシビックとメガーヌを乗り比べた。

真のホットハッチの双璧

前輪駆動の実用ハッチバックに高出力エンジンを与えた“ホットハッチ”の歴史は長い。元祖は1974年にVWゴルフIに設定されたGTI。最近は4WDの高性能ハッチも増えたが、私にいわせれば「暴れたがるフロント・タイヤをみずからの才覚で手なずける」行為こそホットハッチの醍醐味であり、ホットハッチはFFにかぎると信じてやまない。

現在は国内受注停止中のタイプRだが、2022年に発売されたばかりなので、いつかは受注再開が期待される。

そんな真のホットハッチの双璧といえば、ホンダ・シビック・タイプRとメガーヌ・ルノー・スポール(RS)の2台である。この2台は数世代にわたって、聖地である独ニュルブルクリンク北コース(ニュル)の「FF車最速タイム」を、ほぼ交互に更新しあってきた間柄でもある。

メガーヌRSが最後にニュルのタイムを更新したのは19年5月。2シーター化やガラスの薄肉化に加えて、自慢の後輪操舵まで省いて130kgも軽量化した「トロフィーR」で、先代タイプRによる当時の記録を塗り替える7分40秒100(新規定では7分45秒389)を叩き出した。それに対抗して、最新のタイプRがニュルに挑んだのは昨23年4月。同じ新規定によるメガーヌRSのタイムを約0.5秒縮めて、「ニュル最速FF車」の称号を奪還してみせた。

メガーヌR.S.の限定ファイナルモデルとなる“ウルティム”は、ボディ・ステッカーや専用ホイール以外、クルマの中身は従来の“トロフィー”と同じ。

ただ、両車のスペック差を冷静に考えると、20km以上のコースで0.5秒とは「意外に僅差!?」と思わなくもない。関係者によると、恒常的に予約パツパツのニュルで、タイムを出しやすい季節にコースを占有してタイムアタックをおこなうのは、簡単ではないという。まして、当日が悪天候ならすべて台無しである。

タイプRの車載アタック動画では、リスク覚悟でギリギリまで攻めてタイムを削り取っているのが、リアルに伝わってくる。当日の路面コンディションの影響もあったかもしれないが、メガーヌRSのタイムが、新型シビック・タイプRをもってしても、簡単には更新できない素晴らしいものだったということだろう。

そんな世界最速級のFFをこうして2台並べて楽しめる時間も、そう長くはない。というのも、メガーヌRSは今回取材した限定車「ウルティム」をもって生産終了するからだ。ベースのメガーヌもすでにEV専用車に切り替えられて、RS事業を受けついだアルピーヌも「歴代RSのようなエンジン搭載のホットハッチは今後出さない」と明言している。

現行タイプRは22年に発売されたばかりだが、エンジンや変速機、サスペンションといった主要コンポーネンツはすでに3世代にわたって使われており、ホンダは電動化の波も急。そんななかで、次期シビック・タイプRがこれまでの延長線上でつくられるかは疑問だ。つまり、今回の2台は、約50年前にゴルフGTIが確立したホットハッチの、究極にして最終進化形態……かもしれない。

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement