2024.06.30

CARS

電動化なしの自然吸気V12を踏襲 フェラーリの新しいフロントV12モデル、12チリンドリが日本上陸

フェラーリの新しいフロント・エンジン後輪駆動の12気筒モデル「12Cilindri」(ドーディチ・チリンドリ)が日本で初公開された。

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「12気筒」をそのまま車名に

イタリア語で「12気筒」を意味する12チリンドリと名付けられたこのモデルは、1950年代から60年代にかけてのフェラーリ・グランドツアラーからインスピレーションを得て、V12気筒の2シーターの使命を担うモデルだ。



830psの強心臓

最新版のV12気筒エンジンは、最高出力830CV(CVは㎰と同値)/9250rpm、最大トルクは678Nm/7250rpmに達し、最大トルクの80%を2500rpmから発揮する。最高回転数は9500rpmに引き上げられている。組み合わされるトランスミッションは、デュアルクラッチ8段自動MT(DCT)を備える。

このエンジンは、チタン製コンロッドを採用することで、スチール製よりも回転質量を40%低減。ピストンはアルミニウム合金で、3%軽量化されたクランクシャフトも採用されている。F1の知見が盛り込まれたスライディング・フィンガー・フォロワー方式のバルブは、摩擦係数の低減とエンジンの高効率化に寄与するダイヤモンド・ライク・カーボンのコーティングが施されたスチール製で、油圧式タペットを介してカムの動きをバルブに伝える。

さらに、インテーク・マニホールドとプレナム・チャンバーのレイアウトがコンパクトになり、経路短縮とカム・プロフィールの最適化により高回転域でもハイパワーを発生させるという。同時に、トルクカーブも回転域を問わず最適化。さらに、3速と4速使用時にトルクカーブの変動幅を小さくする、革新的なエンジン制御システムの「アスピレーテッド・トルク・シェイピング」(ATS)を搭載している。



各国の排出ガス規制もクリア

スポーツカーの大きな課題である最新の排出ガス規制にも対応している。EU6E、中国6b、Bin50に対応するために開発された新エグゾースト・システムは、セラミック触媒コンバーターとパティキュレート・フィルターが組み合わされている。最先端の排ガス低減技術に加えて、ソフトウェアのキャリブレーションに多大な時間を要したという。

同時に、フェラーリに欠かせないサウンドは、均等な長さのエグゾースト管、各シリンダー・バンクに備わる「6-in-1」マニホールド、セントラルセクションの革新的なデザインがフェラーリV12気筒らしい音質を生み出している。吸気系と排気系からそれぞれ発生する高周波と低周波の完璧な統合とキャリブレーションも、エンジンの音色に影響を与えている。



4輪操舵を搭載

走りでは、ブレーキ・バイ・ワイヤの導入により、296GTBで採用されたABS Evoや、「バーチャル・ショート・ホイールベース(PCV)3.0システム」、「サイド・スリップ・コントロール(SSC)8.0システム」に最適な精度を保証する6Dセンサーなど、最新の革新技術が採用されている。これらに寄り、制動距離の短縮、より正確なブレーキングの再現性を実現。また、新しい制御ロジックである「アスピレーテッド・トルク・シェイピング」が電子制御により、NAエンジンのスムーズでリニアなパワーデリバリーをさらに強調する。

また、812コンペティツィオーネで初採用された4輪操舵が採用され、各ホイールの動きを独立して管理することで、コーナリング時のヨーマネジメントと方向転換時の応答性を向上させている。後輪ステアリングには、機械的特性が採用され、各アクチュエーターの位置制御の精度が大幅に向上。アクスルの応答時間が短縮され、コーナーでの応答性も向上したという。また、フロント47.8%、リア52.2%という理想に近い重量配分により、最適なハンドリングが実現し、812 GTSに比べてホイールベースが20mm短縮されたことで、クルマの応答性も向上している。



後輪のサイズは315/35ZR21

走りを支えるタイヤは、フェラーリ12シリンドリ・スパイダーには、ミシュラン製の「パイロットスポーツS5」または「グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ」が装着できる。フロントは275/35ZR21、リアは315/35ZR21となっている。トータルでの性能はもちろん、ドライでのグリップレベル、バランス、限界域での安定性、ウェット路面での安定性、快適性、騒音特性が改善され、従来のフェラーリのフロント・エンジンV12ベルリネッタと比較して転がり抵抗も10%低減されている。

ボディはオールアルミ製で、812GTSよりもホイールベースが20mm短縮されるなど、完全に新しくなっている。ショックタワーやAピラー、Cピラーなどの鋳造ジオメトリーに、ねじり剛性を向上させるとともに軽量化が盛り込まれている。ねじり剛性は従来比で15%向上し、予測しやすい動的挙動を実現し、サスペンションの精度も向上している。



スタイルを根本的に変革

エクステリアは、フラビオ・マンゾーニとフェラーリ・スタイリング・センターのデザインチームがこれまでのフロント・エンジンV12のスタイルを根本的に変革した。たとえば、812コンペティツィオーネAを特徴づけていた彫刻的な表現から一線を画し、より洗練された表現が採用されている。

デザインはクリーンなラインからなり、クリーンなサイドは、ディヘドラル形状からテールエンドまでつながっている。ウイングは幾何学的な精度で造形され。筋肉質なリア・ウイングは堂々としていながらも幾何学的にコントロールされている。フロント・ウイングは、筋肉質な張りがわずかに伸びてサイドまで沿っていて、ボディの一体感を高めている。

彫刻のようなボンネットは、フロント・ウイングと一体化したなめらかなデザインが目を惹く。フェンダーとのカットラインが取り除かれ、筋肉質なデザインに、滑らかな表面を与え、ボンネット全体に流動感を付与している。ヘッドライトの細長いフォルムや伝統的なグリル形状など、クルマならではの特徴的な要素を省き、幾何学的な形状や交差が活かされている。ヘッドライトは巻き付いた1本の帯の中に組み込まれている。



アクティブフラップを採用

リアまわりでは、スポイラーの代わりに、リア・ウインドウと一体化した2つのアクティブフラップを採用し、特徴的な三角形のテーマを作り出している。全体としてシームレスな印象を与え、先進的なフォルムを生み出した。このコンセプトによりキャビンに新しい方法を採り入れることが可能になったという。ボディ・カラーで表面のフレームをトレースしてリア・スクリーンのテーマと呼応させ、黒いスクリーンを特徴とするキャビンの残りの部分と有機的に統合されている。

テールまわりは、一体感のあるクリーンな仕立てで、テール下部はブラックまたはカーボンファイバー製で、ディフューザーのフィンが特徴的となっている。4本出しのテールパイプも新しい形状になり、メタルで囲むことで大きさを感じさせず、よりコンパクトな後ろ姿に寄与。

スパイダーにはリトラクタブル・ハードトップを採用。開閉に要する時間はわずか14秒で、最高時速45km/hまで対応する。



ロングドライブでも快適

V12気筒の2シーターの使命は、走りのみならず快適なキャビンにも反映されている。ロングドライブでもドライバーとパッセンジャーに快適性をもたらし、厳選された素材による質感の高さとガラスルーフによる高い開放感が得られる。コクピットには、センターとドライバー用ディスプレイが備わるほか、助手席用にもディスプレイが配置されている。

インパネは、ドライバー用とパッセンジャー用の2つのモジュールで構成されるほぼ左右対称の設計で、快適性の向上に貢献している。水平基調のダッシュボードは、アッパー部のトリムされたボリュームと、ロア部の技術的な機能を明確に分けている。エレガントなカラーと素材の変化がダッシュボディによって区切られた2つのボリュームに視線を誘導し、浮いているように見えるため、内装の軽快感がさらに強調されている。また、中央のトンネルのパネルは、ダッシュボードの延長のように、ダッシュボードのジオメトリーから外側に伸びている。

価格は、12チリンドリが5674万円、12チリンドリ・スパイダーが6241万円となっている。



文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)

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