2023.03.08

CARS

ついに乗った! フェラーリ・プロサングエ!! イタリア北部、雪の山岳地帯のリゾートで対峙したプロサングエは、SUVだったのか、それともスポーツカーだったのか!?【プロローグ】

冬のイタリア、北部山岳地帯のドロミテのワインディングでフェラーリ・プロサングエはどんな振る舞いを見せたのか?

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フェラーリ初の4ドア4シーター・モデル、その名もプロサングエ(イタリア語で“純血”の意)の国際試乗会はイタリア北部ドロミティ地方のピンツォーロを起点にドロミティ・ディ・ブレンダなどスキーリゾート地を周遊するコースで行なわれた。エンジン編集長のムラカミがリポートする。

フェラーリの流儀

いったいなぜフェラーリは、雪道を含む冬の山岳地帯を、このまったく新しいモデルのお披露目の舞台に選んだのか? この場所で試乗会が開かれると聞いた時に、真っ先に私のアタマに浮かんだ疑問はそれだった。というのも、9月にフェラーリの本拠地、マラネロで開かれた発表会で、これはいわゆるクロスオーバーやSUVのようなグランドツーリングから多少のオフロードまでこなす多目的ヴィークルとは根本的に異なるもので、フェラーリが要求するダイナミック性能と快適性を両立させたまったく新しいカテゴリーの4ドア4シーターのスポーツカーである、ということを、なによりも強調していたからだ。それならば、サーキットとまでは言わないにしても、ドライ路面の高速道路やワインディング・ロードで試してこそ、その真価を満喫することができるのではないのか?



その疑問に正直に答えてくれたのは、フェラーリのマーケティング担当者氏だった。

「その通り。本当はもっと南の地方で気持ちのいいワインディング・ロードを走ってもらいたいと我々も考えていた。しかし、イタリア国内の法規では、今の時期は冬タイヤの装着が義務づけられているから、たとえ雪の少ないところへ行っても冬タイヤで走らなければならない。それならスペインなど他の国でやったらいいじゃないかと言うかもしれないけれど、今回の試乗車は実はまだ生産直前のプロトタイプで、なにかトラブルが発生した場合には、すぐに本社と行き来して対処する必要がある。そうした問題をすべて考慮した結果、マラネロからもそう遠くはないこの地が選ばれたというわけさ」

なるほど、では市販車の生産はまだ始まっていないのか、と尋ねると、

「いや、もう始まったけれど、そっちはすべてオーダーを入れている顧客の元に届けられる。それを試乗会に使うわけにはいかないよ」

さすがフェラーリ。確かにプロサングエにはすでにオーダーの長い列ができているのだから、生産車は真っ先にその人たちに届けられるべきだ。なによりも顧客優先という姿勢に、残念ながらこの先も顧客にはなれそうにない私ではあったが、なんだかとても深い感動を覚えたのだ。そしてプロトタイプとはいえ、いち早く試乗させてもらえる幸運を、じっくりと噛みしめて走ろうと思った。





見えているものと見えないもの

ピンツォーロの高級リゾート・ホテルの前には赤と青のプロサングエのテスト車が駐車されていた。背の高いSUVのようなカタチをしていながら、どの角度から眺めても見紛うことなく、ひと目でフェラーリだとわかるデザインを持っている。

なによりも特徴的なのは、この手のSUVとはまったく異なる長く低いフロント・ノーズを持っていることだ。真横からの写真を見れば明らかなように、前輪とフロント・ドアの間に長い距離がある。むろん、ほかのフェラーリV12気筒モデルと同様、ドライサンプ方式のオイル循環システムを持つ6.5リッターV12気筒エンジンをフロント・ミドシップに低く収めるために必要とされるスペースで、エンジン後端からリアに伸びたプロペラシャフトがリア・アクスル上に置かれたツインクラッチ式8段自動マニュアル・トランスミッションを介して後輪を駆動。一方、エンジン前端からも駆動力を取り出しており、フロント・アクスル上に置かれたパワー・トランスファー・ユニットを介して前輪を駆動する。そうした機械的レイアウトから必然的にもたらされた長く低いノーズと長いホイールベース、短い前後オーバーハングを持つこのプロポーションこそが、いささか背は高くなったものの、これが紛れもないフェラーリのスポーツカーの血を受け継ぐものであることを物語っているのだ。





シャシーはアルミ製のスペースフレーム構造を持ち、その上にアルミに加えて、ルーフにはカーボンファイバー、観音開きの4枚ドアの中央に位置するBピラーやサイド・インパクト・バーなどの要所には高強度スチールを使ったボディを架装する。

エアロダイナミクスの点でも、Aピラーに近いボンネット両側に設けられたエアロブリッジをはじめ、ほかのすべてのフェラーリのスポーツカーと同じく、徹底的に風洞を使ってテストした結果、必然的にもたらされたのであろう穴やくぼみが随所に見て取れる。リア・ガラスにワイパーが装着されていないのは、ルーフ後端のつり下げ式スポイラーの下面を通った気流がガラス表面を通過する際に、雨粒をきれいに除去するように設計されているからだという。

しかし、この新時代フェラーリの本当の凄さは、そうした見えている部分ではなく、見えないところにこそあるらしい。すなわち、プロサングエ登場の背景には、4ドア4シーターの快適性とフェラーリが求めるパフォーマンスをなんの妥協もなく両立させることを可能にした技術のブレークスルーがあったというのだ。それこそが、新開発のフェラーリ・アクティブ・サスペンション・テクノロジー(FAST)である。果たして、その新兵器はプロサングエにどんな走りをもたらしているのか。興味津々、初試乗に臨むことにした。

◆試乗篇に続く!

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文=村上政(ENGINE編集部) 写真=フェラーリS.p.A



フェラーリ・プロサングエ
駆動方式   フロント縦置きエンジン4WD
全長×全幅×全高   4973×2028×1589mm
ホイールベース    3018mm
車両乾燥重量    2033kg
重量配分(前:後)   49:51
エンジン形式    65度V12DOHC48バルブ、ドライサンプ
排気量       6496cc
ボア×ストローク  94×78mm
最高出力     725ps/7750rpm
最大トルク     716Nm/6250rpm
最高許容回転数   8250rpm
トランスミッション  ツインクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前)ダブルウィシュボーン/コイル
サスペンション(後)マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後)  通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後)  255/35R22 /315/30R23
燃料タンク容量  100リッター
トランク容量  473リッター
最高速度  310km/h
0-100km/h加速  3.3秒
車両本体価格(税込み)  4760万円

(ENGINEWEBオリジナル)

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