2024.07.06

CARS

【国内初試乗】ついに上陸、フェラーリ・プロサングエに乗った! 2.2トンもある巨大なクルマが、常にフラットな姿勢で走る驚異の足回り! やっぱりこれは、4ドアのスポーツカーだ!! 

フェラーリ・プロサングエがついに上陸した!

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秘密は特殊な足回りにアリ

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どうやったら、こんな唯一無二の感触を持つクルマがつくれるのだろう。やはり、その秘密は特殊な足回りにあるのだろうな、と思わざるを得なかった。背が高く、4ドア・4シーターであるにもかかわらず、依然としてスポーツカーであり続けるために、フェラーリが選んだのは、レーシングカーのシャシー開発も手がけるカナダのマルティマティック社と共同開発したフェラーリ・アクティブ・サスペンション・テクノロジー(FAST)と呼ばれるシステムだ。路面から入ってくる情報を元にして、瞬時にふたつの48V高出力電気モーターがギアを介してダンパーのピストンロッドに直接結合されたネジを回転させて、その高さを上下させるものなのだという。それが4本の脚に装着されているので、状況に応じてそれぞれを上下させることにより、ロールを消したり、ノーズダイブやスクワットを減らしたりすることができるというのだ。このシステムのおかげでスタビライザーも不要になり、スプリングのレートも低めの設定になっているから、基本的な乗り心地がいいのは当然だ。その上で、FASTの反応速度や高さの変化量を変えることによって、さまざまな運転状況や5つのドライブ・モードごとに合わせた味を作っているということだった。



実際に、一般道や高速道路、それから短時間ながら山道も走って感じたのは、どんなシーンでもボディの動きがとにかくスムーズだということだ。ステアリングやアクセル、ブレーキの操作に対して、決して急な動きを見せることなく、どこまでも自然に反応する。だから特別に意識しない限りは、これに特殊なシステムを持った足回りが装着されていることなど、誰もまるで気づかないに違いない。しかし、よくよく考えてみると、2.2トンもの重さを持つ巨大なクルマが、常にフラットな姿勢を保って走り、高速道路では路面に吸いつくように安定し、山道でもまるでロールを感じさせることなくスルスルとコーナーを駆け抜けて行くなんて、それ自体が物理学の法則に反した、よほど特別なことだと言わなければならないだろう。そう考えて初めて、なるほど、このプロサングエというクルマのキモは、この足回りにこそあるのだと気づくのだ。

むろん、犠牲にしたものもある。48Vの電源や電気モーター、それらを入れるスペース、さらには特殊な冷却システムも必要で、それらすべてがもたらす重量増もスポーツカーにとっては大敵だ。後から登場した12チリンドリには付いていないのを見ても、このシステムがあくまでプロサングエにとって、どうしても必要なものだったことが分かる

リア・シートの乗り味は?

さて、そうはいっても、プロサングエが特別なのは、この足回りのおかげだけではない。本来ならば何よりもまず、フロント・ミドシップに低く搭載された珠玉とも言うべき自然吸気12気筒エンジンの魅力を上げるべきだろう。低回転域から太いトルクを発生する一方で、回転数を上げるに連れて音色が変化し、6000回転を超えてレブ・リミットの8250回転に至るあたりでは、まさにフェラーリの12気筒ここにあり、という素晴しいサウンドを響かせながら気持ち良く吹け上がっていく。



そして、その12気筒エンジンの後ろに延びたプロペラシャフトからリア・アクスル上のデュアルクラッチ式8段自動MTを介して後輪を駆動する一方で、エンジンの前方からも動力を取り出してパワー・トランスファー・ユニットを介して前輪を駆動する、フェラーリー・フォー以来の、これまた唯一無二の4WDシステムの進化ぶりにも脱帽せざるを得なかった。そうしたすべてが合わさってこそ、フェラーリならではの4ドア・4シーターのスポーツカーとなっているのは間違いない。

最後に、今回はリア・シートの乗り味も試すことができたので、それにもひとこと触れておこう。前席とほとんど同じ形状のスポーツ・シートが装着されているのを見て分かるように、あくまでスポーツカーの一部であって、安逸をむさぼる後席の住人の居場所ではない。決して乗り心地が悪いわけではないけれど、常にドライバーと一緒になって走り、曲がり、止まる覚悟が必要になる。

果たして、プロサングエが今回のイタリア車特集のテーマである“恋”の対象になるのかどうか、私には分からないけれど、4ドア・4シーターのスポーツカーとして唯一無二、孤高の存在であるとは断言できる

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=望月浩彦



■フェラーリ・プロサングエ
駆動方式 フロント縦置きエンジン4WD
全長×全幅×全高 4973×2028×1589mm
ホイールベース 3018mm
車両重量(車検証) 2210kg(前軸1080kg、後軸1130kg)
エンジン形式 65度V12DOHC48 バルブ、ドライサンプ
排気量 6496cc
ボア×ストローク 94×78mm
最高出力 725ps/7750rpm
最大トルク 716Nm/6250rpm
トランスミッション ツインクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 255/35R22/315/30R23
車両本体価格(税込み) 4760万円

(ENGINE2024年8月号)

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