2024.07.30

CARS

生まれた時に家にあったのは初代パンダ、記憶は145から 沼るべくして沼った(笑)フィアット・ムルティプラとフィアット600を2台持ちして溺愛するオーナーはまだ24歳!!

フィアット・ムルティプラとフィアット600の2台持ちを満喫するオーナーの日比さん。

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熱海で心が折れた

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その頃もう1つの転機が起きた。

「コロナ禍になってミトで通学しなくても良くなった。だったらもうちょっと古いのでもいいかなと。またサーキットも走りたいと思っていたんですね。でもどうやって始めたらいいのかわからないという時に、走れる仕様になっているパンダを見つけてしまったんです」

日比さんが手に入れたのは、初代パンダとしては最終となる2002年型の並行輸入車で、前オーナーによってロールケージこそ入っていないものの、バケットシートを装着したり、サスペンションを固めたりとサーキット走行を前提としたモディファイが施されていた。

「X1/9のサーキット仕様に乗っている方が、遊びに使っていたものでした。自分1人なら良かったのですが、2020年12月に買ってすぐ彼女と熱海に旅行に行って、その乗り心地に、こりゃダメだと心が折れた(笑)」

とはいえパンダを手放すという気はなかった日比さんに残された選択肢は増車しかなかった。



「そこで見つけたのがムルティプラでした。バイト先の店に買取りで入ったものの引き取り手がなく、隅に放置されていたディーラー車。小学生の時、父が行きつけの洋服のセレクトショップの店主が乗っていて、面白いクルマだなと思っていましたね」

内装は綺麗だったものの、その時から、外装の塗装は一部クリアが剥げ、樹脂パーツの一部もヒビだらけ。無論、日比さん自身もあくまで“つなぎ”で買ったつもりだった。

「実際に乗るまで、こんなに素晴らしいクルマとは知りませんでした。使い勝手から、見た目から、乗り味からオールマイティに素晴らしい。軽い気持ちで買ったのに魅せられてしまった。納車1週間後に北陸へ旅行に行って長距離が楽でびっくりしたんですよ、これはどこにでも行けるぞ! って」

とはいえ、買った時はすでに17年落ち。しかも暫く放置されていたというだけあって、トラブルが心配になるところだが……。

「不思議と、バッテリーと油脂類を替えたくらいで普通に乗れたんです。その後クラッチを替え、ラジエーターを替え、消耗品を替えるなど予防整備はしてますが、レッカーで運ばれたことはないですね。そもそも当たりの個体だったのだと思います。実はミトもパンダも当たりで1回も大きく壊れていない。今のところの結論として、クルマは“走らせていたら元気”だと思っています(笑)。ムルティプラも旅行でがっつり使うので年間1万1000~2000km乗って、オドメーターは12万kmを超えました」

育てて乗っていきたい

こうしてイタリア車の沼にどっぷりとハマった日比さんが、パンダと入れ替えに手に入れたのが、もう1台の愛車、フィアット600だ。

「大学を卒業して一般企業に就職したのですが、やっぱり性に合わないと思った時にインスタで見つけたクラシックカーや自動車グッズを扱うショップに転職したんです。ゆくゆくは独立したいという気持ちもあり、その一環で。そこでクラシックカーに触れる機会も多く、個人の趣味として日常ベースでちょっと関わっておきたいという気持ちがありました」

日比さんの600は3本髭のフロントマスク、前開きドアのボディに22psへパワーアップした633ccエンジンを積んだ1958年型のシリーズ2。


でもなぜ600なのだろうか?

「最初からランチアでもアルファでもなく、フィアットというのは決めていました。元々大衆車ですし、飾らない感じが好きなんです。そこで過去のモデルを見ていく中で600がカッコいいなと。よくよく考えたら、初代ムルティプラは600ベースですしね。ただ、ちょっと変わったのが良くて、ドアが前開きで、ツートーンで……と探したらイタリアの売買情報で見つけたんです」



オリジナリティの高い素晴らしい1台。

幸いだったのは、イタリアにいるお店のスタッフに見に行ってもらい現車確認ができたことだ。それでお墨付きをもらった600は、フィレンツェの近くのフチェッキオという街から昨年12月にやってきた。

「遅いのに楽しいのはフィアットだなと思いますね。走っている時の雰囲気とか景色とか、そういうクルマとの暮らしを感じて楽しめるのがフィアットらしい。一方でダイナモが壊れてリビルトしたり、レギュレーターがダメで止まったりと、しっかり洗礼も受けています(笑)。古いクルマはもういいかなとも思う反面、育てて乗っていきたいという気持ちもある。心が折れるまでは持ち続けたいと思っています」

文=藤原よしお 写真=望月浩彦



(ENGINE2024年8月号)

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