2024.08.15

CARS

バッテリー容量拡大でどう変わった? メルセデス・ベンツEQの末っ子、EQAに試乗

メルセデス・ベンツEQAは、Cセグメント・サイズのSUVであるGLAをベースにした電気自動車=バッテリーEV(BEV)。日本では2021年に発売され、2024年4月にはマイナーチェンジ・モデルの導入も始まっている。そんな最新のEQAにモータージャーナリストの高平高輝氏が試乗した。

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駆動用バッテリー容量をアップ

EQA250はメルセデス・ベンツの電気自動車EQシリーズの中で最もコンパクトなBEVである。今回マイナーチェンジしたモデルに「+」が付いたのは駆動用バッテリー容量が66.5kWhから70.5kWhへ大きくなり、航続距離が従来型の555kmから591kmに伸びたためである。



一充電で400km以上は堅い

もっとも2021年の導入当初は422kmに留まっていたから(ほぼ1年後に駆動モーターが交流誘導式から交流同期式に変更され航続距離が555kmに伸びている)、それに比べると大幅な進歩である。あまり距離を走れない都内拠点の試乗会だったゆえに満足できるデータは確認できなかったが、WLTCモードで600km近く走れるということは、実際の電費でも400km以上は堅いはずである。

本国には前後にモーターを搭載した4WDもあるが、日本仕様は前輪駆動の「250+」のモノグレードとなる。モーターの最高出力は導入当初と変わらない190ps(140kW)だが、最大トルクは370Nmから385Nmへ増強されている。わずか3年でこれほど進化するのだからやはりEVはサイクルが早い。基本スペックが短期間でこんなに向上すると、最初に購入したユーザーはどう考えるのかと心配にもなる。とはいえ、値段も3年前の当初モデルに比べ130万円ほど上昇して771万円となっている。



スムーズで不足ない加速

モーター出力は以前と変わらないが、およそ2トンの車重に対してはまったく不足はない。街中から高速道路まで、アクセル・ペダルに対するレスポンスはスムーズで扱いやすく気持ちよく走れる。

さらにメルセデスのEQシリーズはステアリング・コラムのパドルで回生ブレーキのレベルを4段階に切り替えることが可能であり、そのうちの「Dオート」を選べば前走車の有無に応じて自動的に回生ブレーキの強さを制御してくれる。タッチスクリーン上で切り替えるのではなく、ワンアクションで瞬時にパドル操作できるのは(昭和世代だけかもしれないが)安心感がある。



ちょっと落ち着かない乗り心地

気になるのはやはり乗り心地で、路面との当たりは滑らかながら、首都高程度のスピードになるとヒョコヒョコした細かなピッチングというか上下動が顔を出すのがちょっと惜しい。試乗車にはオプションのAMGライン・パッケージに含まれる20インチタイヤ(標準は18インチ)やアダプティプ・ダンピング・システムが備わっていたが、あるいはその影響かもしれない。

ちょっと落ち着かない乗り心地は車重の重いEV(しかも視点が高いSUV)の宿命ともいえるが、それでもEQAはエアサスを持たないEVの中では良いほうだ。近距離なら気にするほどではないと思う。



複雑な補助金制度

それよりも改めて感じたのは補助金制度の複雑さだ。国のCEV補助金(EQA250+は満額の85万円)はまだしも、自治体の中で飛び抜けて手厚いと言われる東京都の補助金は、V2H/V2L機能(家庭などへの給電機能)が装備されるか否か、再エネ電力契約あるいは太陽光発電を導入しているかなどによって上乗せ額が異なり、さらに高額車両(税抜き840万円以上)は補助合計額から2割引きという規定もある。

買う方にとっても分かりにくいが、もし自分が営業マンとしてお客様に正確な説明をしなければならないとしたら、頭を抱えてしまうだろう。原資は税金なので仕方ない面もあるが、クルマそのものと同じ歩調で改善されてほしいと思う。



文=高平高輝

(ENGINE WEBオリジナル)

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