2024.08.18

CARS

貴重な3列7人乗りのコンパクトEV、メルセデス・ベンツEQBのマイナーチェンジ・モデルに試乗

メルセデス・ベンツのCセグメントSUVである「GLB」をベースにした電気自動車=バッテリーEV(BEV)の「EQB」がマイナーチェンジを実施。内外装の変更だけでなく、駆動用バッテリーの容量アップなど機能面での向上も図られた新型に、モータージャーナリストの高平高輝氏が試乗した。

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貴重な7人乗り

EQBはEQAよりも長いホイールベースを生かした3列シート7人乗りのSUVだ。ベース車となったGLBももちろん7人乗りでメルセデスのコンパクト・カー・ファミリーの中で人気を集めているというが、ピュアEVでも7人乗りというモデルは貴重、というかこのクラスでほかに例はない。全長×全幅×全高は4685×1835×1705mmというもので全長はEQAよりも200mmあまり長く、2830mmのホイールベースは100mm長い。



航続距離が557kmへ伸びた

「EQA250+」と同じモーターを積むFWD(前輪駆動)の「EQB250」はEQA250+と同じくバッテリー容量が増大して(66.5kWhから70.5kWhに)「EQB250+」となり、WLTCモードの航続距離も520kmから557kmに伸びた。

一方、今回試乗した前後にモーターを搭載する高性能版「EQB350 4マチック」は66.5kWhのまま。一充電走行距離も467kmと事実上変わりなしである。2基のモーターを合わせたシステム最高出力も従来通り、215kW(292ps)、同最大トルクは520Nmと強力で、ミニバン的な7人乗りSUVとは思えないパワー志向のEVである。



ビックリするほどの瞬発力

マイナーチェンジで他のEQシリーズ同様、スターマークが散りばめられた一枚モノのブラックパネル・グリルに変更された上に、AMGライン・パッケージ(スポーツ・シートや20インチ・ホイール、アダプティブ・ダンピング付きサスペンションなど)を装着する試乗車のEQB350 4マチックは、バンパーも左右に大きなエア・インテークを持つ専用デザインで迫力満点だ。

ツインモーターの4WDゆえに車重は2180kgとFWDのEQB250+より60kg重いが、まったく意に介さないほどパワフルで、「コンフォート」モードでも不用意に深く踏み込むとびっくりするほどの瞬発力を発揮するので油断禁物だ。それに応じて脚まわりはさらに締め上げられているようで、不整路面でははっきり硬いし、ヒョコヒョコ感も無視できない。FWDに比べるとちょっとやんちゃな雰囲気である。



3列目は非常用

特徴であるサード・シートだが、これはあくまで非常用と考えておいたほうがいい。そもそもこのサイズのクルマで3列シートを確保するのはガソリン・エンジンのFWDモデルでも難しい。それをベースに床下に駆動用バッテリーを敷き詰めながら、3列シートのSUVを成り立たせるのは大変に難しい、というより無理筋なのである。そこを承知でチャレンジしているのは、やはりいざという時に+2名分のシートが役に立つというニーズがあるからだろう。

EQA250+と同様、2列目リア・シートのレッグルームは余裕があるが、やはりフロアが高く相対的にシート座面の位置が低いために、太腿が持ち上がる“体育座り”的な姿勢を強いられるせいで、ムズムズとおしりの位置を頻繁に変えなければ長時間座るのはちょっと辛い。



使い方は多彩

また左右独立格納式の3列目シートは見た目にも薄く小さく、ヘッドルームも足りず、足元はさらに窮屈で膝を抱えるような姿勢にならざるを得ない。ちなみに安全確保のために乗員は身長165cm以下と制限が付いている(GLBは168cm以下だった)。

それでも荷室容量110~1620リッター(エンジン車のGLBよりほんの少し小さい)というラゲッジスペースとシートアレンジを必要に応じて組み合わせれば使い方は多彩だ。実用的サイズのEVではほかにない長所なのである。



文=高平高輝

(ENGINE WEBオリジナル)

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