2024.09.25

CARS

この夏の惨事のラスボス! ヤフオク7万円のシトロエン・オーナー、エンジン編集部ウエダ、まさかのオーバーヒートか?【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#51】

大事を取ってキャリアカーで搬送することになったリポート車。走り出して1年4カ月で通算2回目。

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ぼたぼた、がっしゃんがっしゃん

ところが、やれやれこれでひと安心、と思った次の瞬間だった。「ぼたぼたぼた……」という水が落ちる音と「がっしゃんがっしゃんがしゃん……」いうと明らかに嫌な音が鳴り響き出したのである。



床下には水たまりができていた。一瞬「ホースにでも穴が空いた!?」と焦ったのだが、これは入れすぎた冷却水が溢れ出ていただけだったので、周囲を拭き取って様子を見る。

それよりも問題は嫌な音のほうだ。エアコンが標準装備の日本仕様のエグザンティアは低速用と高速用の、2つのラジエーター・ファンがあり、水温やエアコン始動に応じて順番に「ウォーン」と回り出すのだが、高速側ファンの回転と、この嫌な音が連動している。まるで回っている洗濯機の中の衣類が偏って、音を立てているような感じだ。

直列4気筒エンジンを搭載するエグザンティア、中でも特に前期のSOHCユニット搭載モデルはエンジン・ルーム内にかなり隙間があり、ラジエーターと一体のコンデンサーの後ろは、けっこうスカスカだ。しかしファンそのものは、このコンデンサーとバンパーの間にあるため、直接見ることはできない。上から下からいろんなところから異音を頼りに探っていくと、フロント・グリルの隙間から、ようやく高速側ファンの中心部が見えた。



異音は、やはりこのファンから出ていた。そしてファンの回り方も、明らかにおかしかった。軸にがたつきがあるようで、少し上下に偏芯しながら回りつつ、嫌な音を立てている。

幸い隣の低速側ファンは綺麗な円を描いて回っており、異音も出ていない。しかしこのままでは高速側ファンは、いつ止まってもおかしくなさそうな雰囲気だ。もしファンが止まり、40度を越える灼熱の日本を走り続ければ、今度こそオーバーヒートする可能性が高い。むしろこんな状況で山梨から無事に東京まで戻ってこられた幸運に、感謝すべきともいえる。

水温計やファンに気を遣いながら自走することも考えたが、結局その場から保険会社に連絡してキャリアカーでの搬送を手配。その日の午後、前回の納車からわずか1週間で、エグザンティアはふたたび工場に戻っていったのだった……。作業項目と工賃、部品代(※かっこ内に記載)は以下の通り。詳細は例によって膨大にあるギャラリー内の写真キャプションを参照のこと。
※部品価格などは2023年7月時点のもの

・冷却水タンクのキャップ・シール作成 500円
・フロント・インナー・フェンダー、フロント・フォグ・ランプ、フロント・グリル、ヘッドライト、フロント・バンパー、コアサポート、ラジエーター、コンデンサー脱着、および部品取り車のアクティバも同じくすべて脱着後、クーリング・ファンを移植し、ターミナルをクリーニング 40,000円
(※クーリング・ファン(左・高速側) 10,000円)

冷却水タンクのキャップは新品を発注しつつ、取り急ぎゴム・シールを作成して対応。高速側のファンは海外から取り寄せたのだが、残念ながらサイズが適合せず、アクティバから移植している。



また、この冷却系の点検中、またしてもLHM漏れとステアリングのパワー・アシストが効かないことが発覚……。いやはや、本当にキャリアカーで運んで良かった。漏れはリアの配管途中にある三つ叉ジョイントからで、原因は劣化してヒビが入ったためだ。傷んでいたのは片側の赤い方だけだったが、念のため反対側の青い方も交換をしている。



いっぽうパワステに関しては、タンク内のフィルターを再点検したところ、わずか1週間の間にヘドロがしっかり溜まっていたので、フィルターおよびタンク内部を再洗浄し、LHMも入れ替えている。



またこの時、タンク成形時の不良と思われる穴を塞ぐなど、LHMラインにもエアが噛まないよう対策も行った。

・LHM三つ叉ジョイント・リア側左右交換、スペア・タイヤおよびスペア・タイヤ・ケースの脱着、洗浄 18,000円
・LHM交換、LHMタンク脱着、洗浄およびフィルター洗浄とLHMタンク成形時の不良穴の補修 14,400円
(※LHM三つ叉ジョイント・リア側左右2個 2200円、LHM 5リットル 10,000円)

合計 97,300円

部品の手配などもあり、作業に要した期間は2週間だった。

本リポートの第25回で、大規模修復を終えてすぐにトラブルに見舞われたときにも書いたのだが、僕はこのエグザンティアのコンディションを保つためなら、どこまでも徹底した整備に付き合うつもりである。その思いに変わりはない。財力の続く限り、ではあるけれど。

積算の支払額は300万円に近づいてきたが、それでも僕は「新車当時のエグザンティアの価格よりもまだ安いぞ。徹底的にありとあらゆるところに手を入れていけば、いわば新車に限りなく近くなるわけだ。そんなエグザンティアに、いまの時代に乗れるなんていう幸せは、なかなかないぞ!」と考え、自分を納得させることにした。

……しかし、そんな思いもむなしく、この20日後、ちょうどお盆の真っ最中にまたしても事件は起こった。これがこの夏の惨事の、いわばラスボスである。残念ながら手が入っていないところは無数にあり、これから約1年後に到達することになる、新車に限りなく近い状態となるまでの道は、まだまだ遠い……。

■CITROEN XANTIA V-SX
シトロエン・エグザンティアV-SX
購入価格 7万円(板金を含む2023年7月時点までの支払い総額は275万5712円)
導入時期 2021年6月
走行距離 17万7727km(購入時15万8970km)

文と写真=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=カークラフト

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ヤフオク7万円25年オチのシトロエンの長期リポート連載!

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ちょっと古いクルマが面白い!

(ENGINEWEBオリジナル)

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