2024.10.12

CARS

乗り比べてみたら驚きの結果に!? 内燃エンジンと電気モーター、2台のミニ・クーパーに試乗 よりミニらしいのはどっちだ? 

ミニ・クーパーSEに試乗

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ほぼ10年ぶりのフルモデルチェンジによって、第4世代へと生まれ変わったミニ。名称が“ミニ”から“ミニ・クーパー”へと変わったのも大きなトピックだがそれ以上のニュースは、まるで双子のような電気モーター駆動版も現れたことだ。エンジン編集部のウエダがリポートする。

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そっくりだが、どこか違う

愛らしい双子を見ているみたいな気分だった。そっくりだが、どこか違う。父親に似てる、と感じることもあれば、母親に似てる、とも思う。目の前にある新しい2台のミニは、そんな不思議な感じが宿っている。



BMW傘下となって四世代目となるミニ。ブランドの根幹をなす3ドアは、パワーユニットが電気モーターとエンジンの両方を選択できるようになった。先行したカントリーマン同様に徹底してデジタライズ化された室内を筆頭に、外装サイズから動力性能値に至るまで、まるで双子のように見事にそっくりだ。

でも、実はこの2台のプラットフォームはまったく違う。BMWはパワーユニットが違っても車台を統一する戦略だが、ミニのご本尊たる3ドアのみ特別扱いだ。エンジン版はBMWミニの3/5ドアを長らく造ってきたイギリス・カウリー工場によるF66型。モーター版はBMWと長城汽車の合弁会社の中国・光束汽車で製造されるJ01型。双子は双子でも、いわば二卵性なのである。



四代目はテールの意匠がずいぶん変わったが、それを除けばエンジン版は、三代目とさほど変わっていない。パワートレインも1.5/2リッターの3/4気筒エンジンと7段自動MTと共通だ。いうなれば、三代目のビッグマイナーチェンジ仕様。いっぽうモーター版は完全新型だ。愛らしいけれど、ちょっと見慣れない。樹脂のオーバー・フェンダーもクラムシェル型のボンネットもなく、両の眼の間に、色によってはけっこう目立つラインも入る。モーターは前に1つで前輪を駆動し、出力違いでグレードを構築する。

名称はなんと全車ミニ・クーパーになった。この後に続く英字がSとCはガソリン版、SEとEがモーター版だ。世の多くのイメージはミニ=ミニ・クーパーだから仕方がないのだけれど、一緒くたにするにはアレック・イシゴニスにもジョン・クーパーにも、失礼な話だと思う。



試乗車はエンジンのSとモーターのSE。僕は熟成を重ねたSのほうに、より強く惹かれるだろうな、という先入観があった。なにせ英国車もミニというブランドも、歴史があり時間をかけて育てることにかけては、横に並ぶものは、そういない。

実際Sに乗ってみると、その静けさと、とびきりスムーズになったパワートレインの感触に驚かされた。内装が一新されたことも影響しているのだろう。遮音性がかなり向上しているし、元々デュアル・クラッチ式ながらトルクコンバーター付きATのようだった変速特性も、さらに滑らかだ。まるで車格が一段階引き上げられたかのように感じる。

内装の設えはICE車もBEVもほぼ共通だが、前の左右シート間と中央コンソール部の造形が異なる。

いっぽうダイレクトすぎるくらいのステアリングの感触や、先代なら最上級車種のJCW用だったオプションの18インチのピレリP7を履く足まわりの仕立ては、見た目重視のややオーバースペックなもの。高速道路の目地段差を明確に拾うところなど、三代目よりは抑えられてはいるが、動力性能と俊敏さを求めた、かつてのジョン・クーパーによるミニ・クーパーの延長線上にいる。

シートはパイピングなどが異なるが、ほぼ共通。

ところがSEは名前が同じミニ・クーパーといえど違う。さらに静かで加減速が圧倒的にスムーズなところや、前輪駆動ゆえ急なアクセレレーターの操作でステアリングが取られるところなど、モーター版ならではの得手不得手はある。けれど、操作に対する反応や、特に外から伝わる動きが、エンジン版ミニよりも全般的に穏やかで、ずっと大人びている。それはクラシック・ミニ本来の仕立てに近く、BMW傘下となってからも受け継がれてきたベーシック・グレードのミニたちに相通ずるものがあって、とても好ましい。事前の予想とは逆になったけれど、僕は嬉しくなってしまったのだった。



イシゴニス博士によるオリジナルの革命的パッケージングはもはやないけれど、四代目ミニ3ドアも小ささを感じさせない乗り味と愛しい姿を備えた優れた小型実用車だ。ミニのオリジナルの精神は、また少し形を変えながら、モーター版の双子のほうに色濃く受け継がれたのだと、僕は思う。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人

■ミニ・クーパーS
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 3876×1744×1452mm
ホイールベース 2495mm
最小回転半径 5.2m
車両重量(前軸重量:後軸重量) 1320(830:490)kg
エンジン(モーター)形式 水冷直列4気筒DOHCターボ
排気量(総電力量) 1998cc
最高出力 150kW/5000-6500rpm
最大トルク 300Nm/1450-4500rpm
トランスミッション 7段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション(前) マクファーソンストラット
       (後) セントラルアーム式マルチリンク
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 215/40R18
車両本体価格 465万円

■クーパーSE
駆動方式 フロント1モーター前輪駆動
全長×全幅×全高 3858×1756×1460mm
ホイールベース 2526mm
最小回転半径 5.1m
車両重量(前軸重量:後軸重量) 1640(930:710)kg
エンジン(モーター)形式 交流同期電動機
排気量(総電力量) 54.2kWh
最高出力 160kW/7000rpm
最大トルク 330Nm/1000-4500rpm
トランスミッション 1段AT
サスペンション(前) マクファーソンストラット
       (後) セントラルアーム式マルチリンク
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 225/40R18
車両本体価格 531万円

(ENGINE2024年11月号)

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